1982年は、既に重厚長大の楽曲が嫌われ、軽薄短小をよしとする時代となって、ディスコ・ミュージックなどが巷を席巻していた。5大バンドはキングクリムゾンの「ビート」以外は発売されておらず、ポンプ・ロックもマリリオンがまだ発売していない状態だった。まさにプログレにとって、暗黒時代であった。
曲 バンド アルバム
� �En voltam ( It was me )/ East [ Huseg / Hungary ]
辺境ハンガリーに突如として出現した究極のシンフォニック・バンド、イーストは、5人組。何重にも折り重なる深遠なキーボード、憂いを含んだヴォーカル、 ロシア正教を思わせる荘重な男女合唱。空間の穴にぴたりと張り付くかのよう 重厚なドラムス。何もかも素晴らしくて、プログレ暗黒期における奇跡のような作品である。西洋プログレに対する東欧からの回答であり、ハンガリー・プログレの最高峰。
�◆�State room / The Work [ Slow crimes / UK ]
いまだにこの曲の衝撃力はすごい。この曲を初めて聴いたとき、それまで聴いてきた自分の音楽経歴が崩れ去るような衝撃を覚えた。ロックも電子音楽も現代音楽も超越している。ザ・ワークは、ヘンリー・カウにいたティム・ホジキンソンが結成したバンド。一見プリミティブな音塊の乱舞と、叫びのような肉体的なヴォーカルだけのように見えるが、ギターの1音1音も、ヴォーカルの１声１声もかつて聴いたことのないものだ。そして主張は、「国家がゆっくりとした犯罪を行っている」と、かなり過激なものだった。
�� Les bal des Laze / Ange [ A propes de../ France ]
アンジュは、80年代になってもポップ化しないで、メジャー・バンドとしては珍しい本格シンフォの道を突き進んだ。この曲「ラズ城の舞踏会」は、アンジュの曲中最もドラマチックなものの一つだ。空間を包み込むキーボードも劇的だが、何よりもクリスチャン・デカンのしわがれ声ヴォーカルが演劇的に盛り上げる。重厚長大なのにフランス国民から支持され続けたアンジュは、まさに王者であった。
�ぁ�Right or wrong / Step Ahead [ Step Ahead / France ]
フランスに登場したツイン・ギターの6人組ステップ・アヘッドは、爽やかさでフランス歴代ナンバー・ワンの英語シンフォ・バンド。何しろヴォーカルの声質が少年声であるのに加えて、澄み渡って透明感が最高。叙情的にメロディアス。間奏でギターはかなりハードに弾きまくる。イエス的なサウンドを目指したのかもしれないが、メロディーはもっとポップだ。しかし8分におよぶ楽曲には変転する起伏があって、ユニークなシンフォとなった。
�ァ�Nach diesem Tag / Anyone’s Daughter [ In Blau / Germany ]
エニワンズ・ドーターはこの年第4作。前作のライブ・インストルメンタル作品で自信をつけて、本作からはドイツ語で歌う。時代に合わせて、ポップな小曲をずらりと並べたアルバムとなった。ハラルド・バレスのヴォーカルは低音だが悲哀感たっぷりの叙情的なもの。本作からドラマーが替わったので、 前作までの完璧で超絶的なドラムスは聴けないものの、演奏陣の整合感は依然として高い。
�Α�Five miles out / Mike Oldfield [ Five miles out / UK ]
マイク・オールドフィールドは、インストルメンタル曲で音楽的な冒険を企てる傍らで、ポップなヴォーカル曲を入れるようになった。この曲は女性ヴォーカルのバックにバグパイプが鳴り響く独創的なものだ。この頃のオールドフィールドには、ケルト音楽の影響が顕著で、深い森の中に誘い込まれていくような趣きがある。この曲では男女ヴォーカルの掛け合いが、まるで森の中で妖精たちが声を交し合っているかのようだ。
�А〃拗陝身�狂乱 [美狂乱／Japan]
キング・キリムゾンのロバート・フリップのギター・ワークを完璧にこなして 登場した静岡の3人組は、美狂乱。伝説のドラマーが脱退した直後だったにもかかわらず、日本のプログレ史に残る名盤を発表。この曲はフォーク調の爽やかなヴォーカルから、やがて暗黒の暴虐ギターへと変転していく美狂乱の代表曲だ。
�─�Only time will tell / Asia [ Asia / UK ]
エイジアは、軽薄短小の時代に合わせ、満を持して登場したジョン・ウェットンが歌う４分間劇場。アルバムは全米1位。当時はプログレ・ファンの間で悪評ふんぷんたる有様であり、「スーパー・バンドのうなずきトリオ」などと酷評された。改めて聴いてみるとジョン・ウェットンの英国風な翳りのあるメロディー・センスとヴォーカルが素晴らしいし、全10曲ともポップな傑作だ。演奏もさすがの安定感である。
�� Dragonfly / Dragonfly [ Dragonfly / Swiss ]
スイスに登場した5人組、ドラゴンフライ。バンド名を冠したこの曲は、18分以上あり、長く続く繊細なピアノ・ソロが印象的。ヴォーカルは冷涼感のある中音域の男性ヴォーカルで、複雑な曲を歌いこなす力量はなかなかのものだ。決して踊ることのできないクラシックに近い大曲を、この時代に創出したのは特筆に値する。強いて言えばジェネシス・タイプであり、曲の変転が激しい。
�� Surrender / Jon Anderson [ Animation / UK ]
イエスは脱退しており、ジョン&ヴァンゲリスもお休みというこの年、ジョン・アンダーソンはソロ・アルバムを発表。ポップな作風で、リズムが強化されてダンサブルになっているのは、時流を意識したものだろう。リズムはドラムスのほか、各種パーカッションが打ち鳴らされて、バックの女性コーラス隊もリズム感抜群だ。
[次点] Flyng / Quasar [ Fire in the sky / UK ]
マリリオンのファースト・アルバムもまだ発表されていないこの年、ポンプ・ロックの先駆けとして、クェーサーが登場していた。ジェネシスから哀愁のあるハイトーン・ヴォーカルに転じようなサウンド。長い曲もあるものの、演奏力は今ひとつ。特にドラムスがとても軽い音しか出していないのは、時代に敢えて逆行したのだろうか。
〇その他候補にしたバンド
Allan Holdsworth, Anders Helmerson, Barclay James Harvest, Elysium, Hopo, Gordi, In Spe, Katra Turana, King Crimson, MacArther, Matia Bazar, Ruja, Sad Café, Spys, Stern Meissen,
参考：2021/6/13 1981年プログレ転換期の曲 10選
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1979513306&owner_id=9666295
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