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2022年07月17日14:16

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「戦争は女の顔をしていない」感想文

ああやっとたどりついたか。
本も長かったし中身てんこ盛りなので、感想文もてんこ盛りだ。
仕方ないので箇条書きにする。

1)女の敵は「女」。
そもそも、第二次世界大戦前までは「女は戦争に行かない」ものと思われてたようだ。
初の女性機関車運転手、をたくさんの軍人が見に来るという記述があった。
戦艦に乗った女性は、はじめは女性であることを隠していた。
もちろん兵士の数が足りないので仕方なく女性を使ったのだが、女性たちのほとんどは
自分で志願して、しかも一番戦闘の激しい前線で「戦う」ことを希望した。
…たとえ「通信兵」「料理洗濯係」「医療班」でも厳しい仕事ではあったけど、
自分も死ぬかもしれない現場に進んで出たのは「母国を守るため」。
送り出したほうもそれはわかっていたはずなのに、帰国した女性たちは
国に残った女性たちからひどい扱いを受ける。
「男しかいない戦場でわたしたちの夫を誘惑した娼婦」。
それはないだろう、と思う。もしそうだったとしても夫たちも同罪なんだが。
上の娘が戦争からやっと帰ったあと、母親が言う。
「妹たちが結婚できないから村から出ていっておくれ」。
戦争に出て生きて帰らない子供を持つ家も多かったはず。
その中で生きて帰った娘にこう言わなくてはならないとは、どんなにつらかったか。

2)女の敵は「男」
男たちに囲まれても、女性たちは丁寧に扱われていた。大事にされていた。
何年も女性を見ていなくても、仲間に襲い掛かるようなことはしなかった。
…中には同僚や上司と恋愛関係になった女性もいたけれど、それは本人の自由で。
それでも戦争が終わると、男たちは言う。
「戦争に行ったような女は女じゃない」。
もちろん戦場での約束を忘れずに会いに来た男もいるだろうが、
こんな発言をする男がひとりいれば、もっといただろう、と思う。
結婚できた女性たちは、夫に絶対に戦争の話をしない。
「戦争」というものに対する認識が違いすぎて、夫が怒るから。
それもまた、一種の女性差別、虐待と思う。
生理のある体なのに、男の兵士と同じ数の下着(男物)しか支給されず、
生理のときはズボンが血まみれ、血が乾いてごわごわになった、という話も、
ため息が出る。女を戦争に行かせたのだから、そこまで考えろ、と言いたい。
たぶん「だから女は使えないんだ」と答えるだろうけどね。

3)女の敵は「スターリン」
ソ連のスターリンはヒトラーを信用して、戦争になると全く考えていなかった。
だから初期に、たくさんの兵士たちが犠牲になった。
ついでに、ソ連を自分の思い通りにしたくて、たくさんの人間の粛清を行った。
軍部の優秀な将軍たちも多い。将軍が反乱を起こせばクーデターだからね。
きちんと自分でものを考え自分の意見を言える人間を多く殺した直後に戦争。
女性たちが戦場に行かなくてはならなくなった理由の一端と考える。
ソ連を偉大な国にするために、戦争中もスターリンは外貨を稼ぎたかった。
コルホーズは戦争中もフル稼働、しかも作った作物は前線の兵士のためでなく、
外国に売るためだった。コルホーズの労働者すら作物は食べられなかった。
ウクライナの大飢饉は「スターリン飢饉」とも呼ばれている。
「ただの棒を突き刺しても葉が出て何かできる」とまで呼ばれた肥沃な大地は、
スターリンの指示する通りの作物を作らないなら農民は見せしめのために殺された。
殺されて人数が減った農民はとてつもない広さの土地を耕さねばならず、
しかも収穫はすべてスターリンに送られ、死んでいった。
さらにスターリンは「ドイツの捕虜」になった兵士を「スパイ」と呼び、
終戦後は尋問、拷問してシベリアの収容所に送った。
「スパイ」の家族はまともな仕事につけず、子は学校で差別された。
ソ連は戦争に勝ったが、勝利のためにがんばった人たちが報われたわけではない。
命がけだったのにこの扱い。ひどすぎる。
でも、おそらく多くの一般民衆はスターリンがこういう男だと知らなかった。
偉大なロシアの偉大な指導者としか教わっていなかった。
ソ連共産主義政権崩壊は、このあたりからすでに始まっていたのではないだろうか。
民衆が「スターリンの嘘」に気づいたあたりで。

4)女の敵は「同じ村の住民」
パルチザン活動も盛んにおこなわれた。
ドイツに占領された場所で、ドイツ軍の情報を盗んで伝え、反ドイツのビラをまく。
実際にドイツ兵を殺したり、宿舎を爆破したりもしていた。
この活動を密告する同じ村の住民もいた。
なんらかの褒美がもらえる。おそらくは食料が。
密告は日常茶飯事で、ジョークとしても語られた。

「牢屋で、前から入っている男が新入りに聞いた。何をやって捕まったんだ?
新入りは答えた。俺がずぼらだったから捕まったのさ。夜に男三人で話をしていて、
家に帰ったら女房が、これから密告に行くか?と聞くから眠いから朝に行く、と答えた。
朝に俺の家にドイツ兵が来た。前の晩に密告されてたのさ」

密告は、戦争中のドイツでも盛んにおこなわれた。ユダヤ人狩りのため。
映画「よき人のためのソナタ」では反ヒトラー的な芸術家の家が盗聴されている。
独裁者のいる国ではどこでも当たり前のこととして行われていることだろう。

一方で、捕まって拷問されても知り合いが目の前で引き回されて
「この者の名前を教えた人間には褒美が出る」と言われても、だまっていた人もいる。
国を守るため。でも、国って何?あなたを裏切る指導者と隣人は何?

5)略奪について
引用しなかった文章だが、女性たちの部隊を率いていた指導者の女性が、
占領したドイツの村の縫製工場にたくさんのミシンがあったのを、
「部下の女性たちにひとつずつ与えた」という記述があった。
あんなにがんばった部下を手ぶらで帰さなくて済んで、指導者は喜んでいた。
…それって略奪だよね?
ドイツは今も昔も優秀な工業製品を作る。ドイツミシンは今も最高級品だ。
欲しいのはわかる。でも、戦争って泥棒じゃないでしょ?
放置すれば腐ってしまう食料とは違う。
それとも、勝ったら何をしてもいいのか?占領地では王様なのか?

6)ロシアとウクライナの戦争
もちろん時代は違うが、ロシアは戦争を「ソ連時代と同じもの」と考えているようだ。
すなわち、勝ったら何してもいい。
相手国の領土も人民も勝った国が自由にしていい。
それが当たり前。

捕虜を拷問するな?一般人民を避難させろ?略奪はするな?
いったい何を言っているんだ、お笑い草だ。
「勝つ」ってのはそういうことだろ。

第二次世界大戦は1945年に終わっている。
その反省から、国連だの国際法だのができたはずだ。
捕虜の扱い方や権利はもっと前から決まっていたはずだ。
日本映画「バルトの楽園(がくえん)」を見ればわかる。
でも、ソ連の軍部上層部や兵士たちの頭の中は、75年前と同じに見える。
プーチン大統領の支持率が80%をこえている現実は、
軍部だけでなく一般人の考え方も変わっていない、という意味に見える。

それでいいのか?
そういうものなのか?
この問いにはおそらく答えがない。
これからの歴史が結論を出すまでは。
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