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2022年06月26日09:18

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『鎌倉殿の13人』第24回「変わらぬ人」

 富士の巻狩りにおける頼朝暗殺未遂の余波が続いている。京から下ってきた頼朝の側近といえば、三善康信と大江広元がまず挙げられるところで、劇中でも先に登場したのは三善康信だったけど、鎌倉幕府が成立してからなにかと名前が出てくるのは大江広元の方だったりする。そのあたりの事情については疎かったけど、康信は範頼との関係が近くて政権から遠ざけられたらしい。

 範頼は焚きつけてきた比企にも梯子を外され、責をすべて負わされることになる。混乱を収めるためだったという釈明は妥当だと思うけれど、提出した文書の署名にも難癖をつけられ、さらに追いこまれる。義時もさすがにそれは言いがかりだと取りなそうとするも、「もうけっこうにございます」とはすでに自分の排斥が既定路線であって、そのためにはどうとでも理由が捻くりだされることを悟った言葉のように見えた。

「立場は人間を変えますね」
「観音さまは捨てました。こうやって私は命をつないできたのです」
 非情さばかりが際立つ頼朝ながら、ひさびさに登場した比企の尼とのやりとりでは、彼なりのそうせざるをえない事情も語られる。とはいえ、それが周囲にとって納得のいくものかどうかはまた別で、義時と語らいながら酒を酌み交わす三浦義村は、「御家人を信じられない鎌倉殿が、身内すら信じられなくなったのだ」と手厳しい。
 ちなみに、ここに同席していた金剛は明るいうちに貞観政要を読んでおきたいのでと退出している。さすが後に御成敗式目を制定するだけのことはあるのだった。

 木曾義高のことが忘れられない大姫は名門・一条家への嫁入りの話を蹴ってしまう。
「なんとかしろ」
 頼朝が政子を詰めて、阿野全成によるイタココントの開幕となる。この俳優さんは無茶ぶりみたいな演技ばかり要求されて本当に大変だなと思う。大姫はけっこうオカルト女子なのだけど、それでも騙すことはできず簡単な釣り質問に引っかかって見破られてしまう。というか、これがうまくいくと思った彼らの感性の方がむしろ心配である。よせばいいのに紫式部に切り換えて、さらに傷口を広げるところまで含め揺るぎない貫禄すら感じさせる。

 巴御前のその後については気になるところであるけれど、そこまで触れられることは少ない。しかし、本作では和田義盛と幸福に暮らし、大姫を過去の束縛から解き前に進ませる人物として再登場している。ここでの大姫の笑顔と軽やかな足取りで新たに踏み出したことを表現させるシーンは印象深い。

 とはいえ、絶望の前にほのかな希望を置くのは作劇におけるセオリーでもある。京に上った大姫は丹後局の手厳しい洗礼を受ける。正直、西田敏行との掛け合いに鈴木京香をあてる必要にはやや疑問符がついていたけど(『義経』における平幹次郎と夏木マリが強烈すぎたのもある)、この場面のための起用だったのかと思わせる迫力だった。

 征夷大将軍に就いたとはいえ、京の公家社会の壁は厚く、頼朝の扱いにもイケズなところが見てとれる。ひとつには、九条兼実(田中直樹)という頼朝の京へのツテが筋としてさほど強くないのもありそうだし、新参者へのやっかみや嫉視や反発もあると思われる。とにかくやりにくいところではある。

 せっかく取り戻しかけた大姫の生気は、今度こそ完全に奪われ彼女は病床に伏してしまう。もはや、救済は死のみであった。
 偶然にもこの週は朝ドラにも似た展開があって、あちらはそこまで深刻なことには至らず立ち直っていたけど、こちらではそのまま逝ってしまった。
 政子は「もうこんな思いはしたくありません」と嘆いたが、史実が伝えるところによれば、これは最初の一歩にすぎない。政争に巻きこまれて命を落とす彼女の親族のリストはここからさらに延々と続く。

 修善寺に追われた範頼は、ここで農家の夫婦ともども殺される。善次は夫婦の娘の前に歩を進めるが、そこでシーンは途切れて結局どうなったかはわからない。さすがにそうそう子どもを殺すシーンは入れられないことも踏まえた演出と思われるけれど、とにかく禍々しい雰囲気が充溢しているし、いずれにせよひどいことでしかないのは瞭然である。
 ちなみに、修善寺は後に頼家が幽閉されるところでもある。

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