T・H・グリーンの宗教思想の時代的背景 その1 グリーンの宗教思想を見る時、二つの大きな要因を見ることができます。即ち、その第一は自由思想であり、第二には観念論哲学です。
イギリスの宗教界における自由思想の流れは既に十八世紀にその端初を見ますが、十九世紀に入って一層積極的に、時には戦闘的に主張されるようになって来ました。しかしそれは、特定の主義主張というよりも、むしろ従来の権威からの自由、例えば、教会もしくは聖職者の権威、またそれを裏づけるものとされて来たキリスト教信仰の諸定義の権威、すべてこうしたこれまで自明のものとされ、またそれを裏づけるまのとされて来た「神のことば」としての聖書の権威、そしてまた教会によって伝統的に信奉すべきものとされて来た権威から解放されることを主張する態度、これがイギリスにおけるいわゆる「自由思想家」と呼ばれた人々の共通の姿勢でした。彼らの主張に従えば、以上のような権威は言わば「外的権威」と呼ばれた人々の共通の姿勢でした。彼らの主張に従えば、以上のような権威は言わば「外的権威」と呼ばれるべきものですが、今や成熟期に到達した人間にとってはむしろ不必要なものであり、今や各個人は自らの心と魂、あるいは良心に直接語りかけて来る神の声、即ち「内的権威」に従って行動すべきであるとしたのです。
この続きは別項で。
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