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2022年05月30日00:31

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中世史私論 その60 くずれゆく荘園〜全員参加型の農村 下

 こうなると村のしくみも変わってきます。先進的な地域の荘園では、村の生活上のさまざまの問題を以前のように名主クラスの人びとだけで専断してゆくことができなくなりました。小百姓も独立の営農者として発言権をもちだしたのでした。「村」は名主・小百姓をふくめた農民の「家」連合としての性質をはっきりともつようになりました。山野の利用、用水の維持や開設、盗みなど村のなかの秩序の乱れをどう防ぐかといったこと、村の社の祭りやその経費をまかなう神田(しんでん)のこと、宮座(村落の社の祭りを行う集団)の頭人(とうにん.長・世話役)のこと、村共同体の世話役のこと、そして荘園領主・国人(こくじん)などがかけてくる年貢・夫役(ぶやく)にどう対応するかといったことなどについても、これまでのように名主ばかりでなく小百姓もふくめて百姓たちが神社などで集会をもって協議せざるをえなくなりました。
 東寺領の若狭国太良荘(たらしょう)や播磨国矢野荘(兵庫県赤穂郡・相生市など資料が豊富にのこされている荘園では、年貢・夫役の減免や、不法な荘官などの交替要求が、「惣(そう)百姓申状(もうしじょう)」という名主・小百姓の広い連署で提出されていることが知られています。
 この時代の農民社会を特徴的に示すことばは、「寄合(よりあい)」「惣百姓」「談合」「一味神水(しんすい)」など、みな全員参加型の社会状況を示すものであります。「惣百姓申状」というこれまでにはみられなかった農民文書の形式は、たしかに支配層に対しても大きな重圧となったにちがいありません。(この項おわり)
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