こうした加地子収取権は、しばしば「名主職一反」などという表示をとっており、荘園管理機能の末端の担い手としての「名主」という人間=身分とはちがい、一反というような田地片ごとに成立してくる経済的得分をさすのであります。研究の上では、その点をはっきりさせる目的でこれを「加地子名主職」とよぶのが普通なのです。
加地子名主職は経済的な収取権でしたから、その売却は、荘園領主側の制止ににもかかわらず、荘外の寺院や土倉・借上(かりあげ)のような金融業者に対しても行われました。富裕者はその権利を買い集めて、一種の地主化するのでした。しかしもちろん、それらをまず買い集めたのは、荘内の有力な農民でありました。一人の名主が自分の名田のほかに、他の名田の加地子名主職を買い集めることは、広く行われました。これによってかれらは、いわばみずから勤労する営農者から、非勤労的な地代取得者に比重を移してゆくのでした。
もちろん自分の経営を完全にやめてしまい、もっぱら加地子収入にだけ依存する寄生地主型の加地子名主になりきってしまうということはありませんでした。けれども荘内でかれらはいわば自作兼地主的な性格をもつ有力者となってきたのでありました。(この項おわり)
…かなり長くなってきたこの投稿ですが、おそらく予定の5分の1くらいまで来たのかと思われます。
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