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2022年05月22日09:39

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「戦争は女の顔をしていない」その13

「人間の孤独と弾丸」の章

狙撃兵
「私の話は全然違います…いつも黙っています…何を説明できるでしょう?
自分でも自分の運命を読み終わっていないのに…神を信じるようになりました。
お祈りは心を静めてくれる。娘のことを祈っています」
「母が言ってた格言を覚えています。
「弾丸はおばかさんだし運命はいじわるなんだよ」
この格言はとっさのときに出てくるんです。」
「浮き浮きして戦地に行く支度をしたわ。「人間40馬8」と書いてある貨車に揺られて。
でも100人は詰め込まれました。」
「戦時でも平和な時でも役立つ職業だから通信兵でもかまわなかったけど、
狙撃兵になりました。銃を撃たなければいけない、と言われて撃ちました。
上手でした。栄誉勲章が2つにメダルが4個、戦地にいた3年間で。」
「勝利だ、の叫びが聞こえました。「勝利」の発表です。
あの気持ちを覚えています。喜びでした。でもただちに恐怖がよぎった。
パニックよ、パニック!これからどうやって生きていったらいいんだろう?
父はスターリングラードの近くで亡くなっていた。
二人の兄は戦争が始まったころ行方不明。」
「祖国でどんな迎え方をされたか?涙なしでは語れません。40年もたったけど。
まだほほが熱くなるわ。男たちは黙っていたけれど、女たちは?
女たちはこう言ったんです。
「あんたたちが戦地で何をしていたか知ってるわ。若さで誘惑して、
あたしたちの亭主とねんごろになってたんだろ。戦地のあばずれ。戦争の雌犬。」
ありとあらゆる侮辱を受けました。ロシア語の汚い言葉は表現が豊富だから。」
「結婚は早かったんです。戦後1年です。私が働いていた工場のエンジニアと。
私は恋愛にあこがれていました。大恋愛に。何よりやさしさがほしかった。」
「家では洗ったおむつを干しているにおい。くんくんいくら嗅いでも足りなかった。
幸せのにおい…女の幸せの…戦地では女性の香りはないんです。
なにもかも男のにおい、戦争は男のにおい。」
「子供はふたりいます。男の子と女の子。長男はいい子で賢くて大学出です。
専門は建築」
「娘が歩くようになったのは5歳のとき。「おかあさん」と最初に言ったのは7歳。
今でも「おかあさん」ではなくて「おだあさん」だし、「おとうさん」ではなくて
「おとさん」なの。今でも、これは嘘だ、という気がするわ。
間違いだって…あの子は精神病院にいます。40年間。
年金生活になってから、私は毎日通っている。
私の罪なの…私の娘…」
「私は罰を受けている、でもどうして?もしかして人を殺したから?
時々そんなふうに思います。」
「夫を恨んではいないわ。許しました。彼のために祈ります。責めません。
私が女の子を産んだとき、彼はしげしげと眺めて、少し一緒にいたんだけど、
非難の言葉を残して出ていったんです。
「まともな女なら戦争なんか行かないさ。銃撃を覚えるだって?
だからまともな赤ん坊を産めないんだ」私は彼のために祈るの」
「私はこの世で何よりも祖国を愛していた。
自分の娘にだけ戦争の思い出話をします。あの子はおとぎ話だと思っているんです。」
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