評価 その1 グリーンの倫理理論には、前節で見てきたように、その基本的な概念に不分明性が存在するにもかかわらず、やはり思想史的に高く評価しなければならない点があると思われます。
それは、まず何といっても、倫理の存立根拠をなす行為における人間の自由を、自然の制約から脱却した自己意識的主体の自我満足の念という概念によって確立したことにあるでしょう。ベンサムやJ・S・ミルの功利主義および彼らが依拠していたJ・ロックやJ・S・ミルの功利主義および彼らが依拠していたJ・ロックやD・ヒュームの経験主義哲学では、その存在の基礎づけができなかったからです。
さらに高く評価しなければならない点として、グリーンの諸能力の実現という概念があります。これには、前節で批判する干渉を正当化しようとした企ては、イギリスの思想史において、「好むがままになす自由」に対する干渉を正当化しようとした企ては、イギリスの思想史において特筆大書すべき偉業といわなければなりません。すなわち、1881年レスター市の自由党連名でグリーンが行った「自由主義的立法と契約の自由」に関する講演のなかに、次のような有名な一節があります。
「我々が自由を大いに重んずべきものとして語るとき、我々は、行ったり教授したりするのに値するものを行ったり享受したりする積極的な力または能力を自由によって意味しているのである」。
この続きは別項で。
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