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2022年05月15日15:40

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戦争は女の顔をしていない その12

中尉(準医師
「ラトヴィアの解放が始まっていました。私たちはダウガウピルス近くに駐屯していたんです。ある夜、就寝の支度をしているところで、歩哨が「止まれ、誰だ?」と呼びかけるのが聞こえました。文字通り10分後に隊長に呼びつけられました。本部の土豪に入ると隊の男たちがいて、私服の男の人がいます。この人の様子をとてもよく覚えているわ。ずっとカーキ色の軍服や軍外套を来た男たちばかり見ていたから。その人はフラシ天の襟のついた黒いオーバーだったんです。「助けてほしいんだ」とその人が言う。「ここから2キロのところで妻が産気づいている。一人で残っている」と。指揮官は訊ねる。「そこは中立地帯だ。ご存じだろうが、かなり危険だ」「お産が始まっているんでしょ、助けてあげなければいけません」
「私に5人の自動銃兵を付けてくれた。鞄に包帯などを入れて支度をして、ちょうどもらったばかりの新しいフランネルの足巻き布も持って出発。進む間中銃撃された。銃弾は届かなかったり、飛びすぎたり。月も見えない暗い森。とうとう何か建物のシルエットが浮かんで見えた。これが小屋だった。小屋の床には女の人がぼろを着て横たわっている。夫は直ちに窓かけを降ろしました。ふたりの自動銃兵は庭に、二人は戸口に、もうひとりが私に灯りを照らしてくれます。女の人はやっとのことで呻き声を抑えている。とても痛がっています。」
「「我慢してね、声を立ててはだめですよ、我慢して」と私は声をかけ続けた。中立地帯なので敵が何かに気づけば砲弾の雨を降らすでしょう。赤ちゃんが生まれた声を聞いて一緒に行った兵士たちはささやき声で「万歳、万歳」と喜びました。前線で赤ちゃんが生まれたんです!水が運ばれてきましたが湯を沸かすところもなく、冷たい水で赤ん坊をふいてやり、持って行った足巻き布に包んでやりました。他には母親が横たわっていたボロ布しかなかったんです。」
「その小屋には幾晩か出かけて行きました。進軍するのでその地点を離れる前にお別れに「私たちは移動するのでもう来られません」と言うと女の人は夫に何かラトヴィア語で訊きました。「妻があなたの名前を訊いています」と夫が通訳しました。「アンナです」「とても美しい名前ね。あなたの名をとって生まれた娘をアンナと名付ける」と夫が通訳しました。そして、まだ起き上がることもできないのに、少し身を起こして美しい螺鈿のおしろい入れを私に差し出しました。一番大事にしていたもののようです。私はおしろい入れの蓋を開けました。夜の闇、あたりは銃声が鳴り響き、砲弾が炸裂している中で、おしろいの匂い…今でも思い出すと泣きたくなります。おしろいの匂い、螺鈿の蓋、ちいちゃな女の赤ちゃん、何かとても家庭的な、本当に女らしい生活…」
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