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2022年05月03日16:37

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「戦争は女の顔をしていない」その9

「馬や小鳥たちの思い出」の章

汽車に乗って延々と行きました…
駅に輸送列車が二両停まっていて、一両は負傷兵、一両は馬が乗っていました。
爆撃が始まった、車両に火がついた…負傷兵が逃げ出せるようにそちらの扉を開けました。
ところがその人たちは馬が乗っている燃えさかる貨車に突進したんです。
馬はまったく罪がないのに、人間のやることに責任を負わされることはありません。
誰も森に逃げ込まず、みんな馬を救おうと飛び出しました。
そうできる人は、だれも彼も。

覚えているわ。ある村に着いた時、森の近くにパルチザンの死体がころがっている。
いたぶりつくされて殺された姿を口では言えません。心臓がもたないわ。
ずたずたに切り刻まれて、豚の臓物みたいに腸を割かれて。
すぐ近くで馬が草を食んでいる。
生き物が見ている前で何という恐ろしいことをしたんだろう。
馬はすべて見ていたのよ。

私の病室には負傷者が二人いた。ドイツ兵と味方のやけどした戦車兵が。
そばに寄って「気分はどうですか」と聞くと
「俺はいいがこいつがだめだ」と戦車兵が答えます。
「でもファシストよ」「いや、自分は大丈夫だ。こいつを…」
あの人たちは敵同士じゃないんです。
ただ怪我をした二人の人が横たわっていただけ。
二人の間には何か人間的なものが芽生えていきました。
こういうことがたちまち起きるのを何度か目にしました。

どういうことかって、そうね、晩秋に渡り鳥が飛んでくるでしょ。
その列がとても長く伸びているの。味方の大砲もドイツ軍も撃っている。
でも小鳥たちは飛んでくる、どうやって知らせたらいいの?
「こちらにきたら危ないよ、ここは撃ち合っているんだから」って。
どうすれば?!
小鳥たちは落ちてくる、地面に落ちてくる…

ナチ親衛隊の将校が介護所に連れてこられました。
看護婦が近寄ってきて聞くんです。
「どういうふうに手当しますか?包帯を引っ剥がしますか?それとも普通に?」
「当たり前に。負傷者なのよ。」
その人達を当たり前に扱って手当したのに、そのうち二人が脱走しました。
また捕まえたときはズボンのボタンを切り取って逃げられないようにしました。

村を奪還した。どこかで水を汲みたくて探し回った。
ある家の庭にはいるとつるべ井戸があった。
庭に射殺されたその家の主人が倒れていた。そばに飼い犬が座っている。
私たちを見つけて歯をむき出した。
襲い掛かるのでなく、私たちを呼んでいるようだった。
犬について小屋の中に入ると、奥さんと三人のこどもたちが倒れていた。
犬はそのそばに座って泣いているの。本当に、人間が泣いているみたいに。
(以上引用)

ウクライナの避難の映像でも、いっしょに逃げているわんこが映ってた。
家に取り残されて玄関でずっと待っているわんこもいたけど、
あれはきっと、ご主人一家は亡くなってしまったのだろうね。
おいていくわけがないものね。
ペット救出の団体も動いていると聞いて、少し安心したけど。
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