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2022年05月01日14:19

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「戦争は女の顔をしていない」その7

「電話機は弾丸を発しない」の章

軍曹(高射砲指揮官
「私は高射砲部隊の通信兵になって、通信所で当直にあたった。
父戦死の知らせが来なかったら、戦争が終わるまで通信兵だったかもしれない。
母が早くに死んだので、いちばん身近な人。私のただひとりのお父さん。
私は前線に出してくれと懇願したの。「仇をうちたい、父の死に報いたい」って。
砲兵隊に電話はどうしても必要だと説得されたけど、電話機は弾を打ち出さない。」
「憎しみもなしに銃を撃つことなんてできないさ。
政治教育のときに「奴を殺せ」という記事を聞かされたのを覚えている。
有名な記事で当時誰もが読んでいた。暗記したものさ。
この記事と父の戦死公報をいつも持ち歩いていた。
撃て!撃て!私は仇をとるんだ…」
「超特急で3か月の短期講習を終え、高射砲の指揮官になった。
初めは耳や鼻から血が流れ、完全に胃をやられた。
自分めがけて飛行機が落下してくるようで。今、お前をまさに目指しているんだ、って。」
「春で、ヴォルガ川の氷が溶けて流れ出した。何を見たと思う?
氷が流れてきて、2,3人のドイツ兵と1人のロシア兵がつかみ合ったままの恰好で
凍り付いていた。氷は血に染まって真っ赤。母なるヴォルガ川が赤い色だった。」
「背中に砲弾の破片が入った身障者になって戦争から戻ってきた。
雪に埋もれたまま長いことみつけられなかったから、両足がひどい凍傷になった。
軍用犬たちが私を見つけて帽子をくわえて衛生係にもっていった。
雪の中から掘り出されたときは毛皮の軍外套は血まみれだった。」
「六か月入院して片足切断ということになった。
父も母もいないのに、社会のお荷物になるのはいやだった。
首を吊ろうと思って衛生係のおばさんに小さいのでなく大きいタオルをもらった。
みんなが寝静まったら鉄のベッドに結んで首を吊ろうと。
でも、看護係のおばさんが「なんだか目つきが気になる」と一晩中ついていた。
このおばかさんを守ってくれたのさ。」
「担当医の若い中尉が院長のところに行って「私にやらせてください」と頼んだ。
切断手術には反対で、特殊な針で皮ふの下に何か入れる治療を提案した。
私の足は切らないことになった。二か月後にはもう歩き始めていた。」
「そうそう、恋のことをまだ話してなかったね。恋愛はもちろんあった。
恋がなくて人が生きられる?戦地で大隊長が私に惚れこんじまって、
戦争中ずっと私を大事にしてくれて、復員してから私を病院で見つけ出してくれた。
神様が人間を作ったのは銃を撃つためじゃない、愛するためよ。」
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