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2022年04月30日19:29

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『鎌倉殿の13人』第16回「伝説の幕開け」

 なにげに義時がひげを生やしていた。それなりに修羅場をくぐり抜けて、レベルアップといったところだろうか。なんだかんだで、このドラマももう1/3ほど経過したので、純真だった小四郎くんもそれなりに老獪さを身につけつつあるのだろう。頼もしくもあり、一抹の寂しさも感じる。

 上総広常討伐は我の強い坂東武者を引き締めるのに効果があったとはいえ、薬が効きすぎて殺伐としすぎてしまってもいる。政子はそういう状況を見て、鎌倉における御家人のクレーム処理やとりなしの仕事を自分に課そうとするが、りくはむしろ、外に目を向け、さらに子どもを産み育てるべきだと言う。
 実はどちらも武家において女性が担う役割であって、このいずれに重きをおくかの違いは、この後の彼女たちの立ち位置の変化を暗示しているのだろう。

 いよいよ鎌倉から範頼率いる本軍が進発し、墨俣で義経率いる先遣隊と合流している。派遣軍の総大将はあくまで範頼ながら、彼が調整型の人物でなにかと独断専行しがちな義経や配下の御家人たちの反目を押さえ、まずまず無難に義仲追討をこなしていく様子が描かれる。

 京をめぐる合戦の駆け引きでは、義経は使者を斬って義仲を挑発しようとし、義仲はそれを挑発と見抜いてさらに裏をかこうとするが、結局は兵を過少に見せかけた策にのせられて宇治へ引き寄せられ、その間に範頼が瀬田をついて北陸への退路を絶たれてしまった。
 合戦シーンそのものは俱利伽羅峠からずっと、ばっさりカットされている(なぜか都落ちした平家を追撃して大敗を喫した水島の戦いはワンカット入っていた)。宇治川の合戦といえば、有名な先陣争いのエピソードがあって、映像にすれば映える題材だけれども、さすがにそこまでは手が回らないらしい。ちなみに先陣争いの一方の梶原景季は景時の息子で、2005年の大河『義経』では小栗旬が演じていた(もっとも、『義経』でも先陣争いは映像化されなかったはず)。
 義仲の連戦の激しさと疲弊ぶりは血まみれになった手だけで表現されている。それだけでそういう雰囲気までもっていける青木崇高は、やっぱりたいしたものだと思った。
 最後の「やるだけのことはやった。なに一つ悔いはない」という台詞は、壇ノ浦の平知盛の「見るべきほどのことは見つ」を先取りしたような気がするのだけど、あっちではカットされるのだろうか。これと「波の下にも都はございます」の日本文学史上でも屈指の名台詞が畳みこむところがなくなるのは、ちと寂しいけど。

 ネットで和田義盛が自分の妻はウサギのようにおとなしくてつまらないという台詞と、巴御前を保護したくだりが対応しているという書きこみを見て感心したけど、二人のその後が描かれることはあるのだろうか。

 上洛した武将たちからの報告を読みくらべて、それぞれの人となりが浮かび上がってところは楽しい。和田の書状を見て、比企が「絵はかわいらしゅうございますな」とつぶやき、頼朝が「かわいさは求めておらぬ」と応じたところは、三谷幸喜が絵もいっしょに指定して脚本に書いたというよりは、佐藤二朗のアドリブに大泉洋がとっさに返したという方が自然な気はする。
 ちなみに絵は妙に表情のしょぼくれているのがおかしいけど、かわいいかといえば微妙ではなかろうか。

 一の谷の戦いについては、諸説あるところを、通説も踏まえつつ三谷幸喜独自の考察も折りこんで、まとめたような展開だった。実は後白河法皇の呼びかけで和議を準備中に攻めかかった騙し討ちだったというのは、けっこう前から唱えられていたと思う。なので、鵯越でなくて鉢伏山というのも、そういう説があるのだろう。
 ここも、斜面を馬で駆け下るシーンはなかったけど、畠山義忠が馬を背負って下ったくだりは台詞で触れられていた。
 この時点では、梶原景時が義経を多いに評価しているのが興味深い。この後、両者が反目して破滅していくのは周知の事実だけれど、最初から険悪だったわけではない。評価していたがゆえに失望が激しい憎悪に転じることもあるわけで、そのあたりの経緯も気になる。後白河法皇が義経の手段を選ばないところを大いに買ってもいて、そのあたりもからんでけっこう複雑なことになりそうでもある。
 一方、壇ノ浦で三種の神器が失われたことにくらべれば、平氏か源氏かなど皇室にとっては些事にすぎなくもあり、この大失態を取り返す術など存在しない以上、これだけで義経はもう詰んでいてもいる。とにかく時代の焦点は義経にぴったりあっていささかも揺らがないようである。

 後は、頼朝側近の座をめぐる北条と比企の確執が深まり始めているのも注意を引くが、それはよりも回を追うごとに中川大志の台詞回しが堺雅人っぽくなりつつことの方が気になっている。別に悪いわけではないけど、三谷幸喜作品に出演するということで、本人もちょっと引っぱられている部分があるのではないだろうか。
 この人は広瀬すす主演の朝ドラ『なつぞら』でヒロインの相手役だったけど、今はauのCMにも出演していて、そこでのかなり重度のオタク学生の演じぶりがすごく変なのだった。



 それから、そろそろ平家も滅びそうだけど、甲斐源氏はこのまま歴史の波の間に消え去ってしまうのだろうか。もう出番はなさそうである。


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