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2022年01月29日11:34

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『鎌倉殿の13人』第3回「挙兵は慎重に」

 ご利用は計画的に、みたいなタイトルの回だった。
 冒頭、いきなり源頼政が挙兵して失敗していた。2005年の大河ドラマ『義経』では丹波哲郎が演じていたけど、当時もうかなり体も衰えていて挙兵どころではないように見えた。本作では品川徹だった。
 劇中、平清盛がじきじきに以仁王の討伐を命じたとナレーションにもあったように、この人は保元・平治の乱ではずっと清盛についていた人で信頼されていた。源平合戦というけれど、過程で源氏の主流派が没落して平清盛が頂点に至っただけのことで、実はそれぞれの陣営に源氏と平家が両方とも混在している。というか、そもそもは近親同士の争いが権威筋の裏付けを求めて上へとつながった結果、最終的には天皇方と上皇方に別れたというのが実態に近いのではなかろうか。

 以仁王の令旨を広めて回っていた源行家は杉本哲太が演じていたけど、『義経』では大杉漣だった(合掌)。アジテーターとしてのいかがわしさは、大杉漣の方がよく出ていたと思う。海音寺潮五郎が書いていたのをつい最近に読んだけど、この人は平家が倒れてからも頼朝からずっと恩賞をもらえなくて、生計を立てるために追剝とか強盗をしていたらしい。当時の武士のわりと一般的な生業だったということで、まあ、やっぱり、ほぼヤクザなのだった。

 主人公の義時はずっと裏方にいた人で、平家との戦いではたしかまったく見せ場がない。頼朝の血筋が絶えて集団指導体制に移行してから頭角を表して実権を掌握した。それだけなら、内部抗争の巧みな陰謀家というだけになりかねなかったけど、承久の変で朝廷の干渉をはねつけて武家政権を安定させている。
 つまり、現段階ではそんなに強い個性を発揮する存在ではなくて、小栗旬の演技もけっこう現代劇っぽい。それは意図的な演出でもあるだろうけど、もちろん、それだけでは大河ファンは納得しないわけで、現状、そういう意味で固有層を引っ張っているのは北条時政だと思う。
 大河ドラマの父親というと、だいたい強く厳格でいずれ主人公が超えていかねばならない、それこそ父性的な存在として造形されることが多いけれど、時政はそうではない。史実でもけっこう微妙な感じだし、神輿として担がれるわけでなし、格上という感じすらないまま、ちょっとネタバレになってしまうけど、後には子どもたちと争ってやりこめられてしまったりしている。
 実はなかなか描くのが難しい人物で、うまくいかないとまるで散漫なイメージのどっちつかずなキャラクターになりかねないところだけど、あえて型にはめたタイプの演技でかっちり作りこむことにより、なんか頼りないけどある一線では頑固に踏みとどまる感じがわかりやすいし、あわせてドラマ全体を時代劇っぽさで引っ張ることにも成功していると思う。
 実は新垣結衣演じる八重もそっちの役割を期待されているのかもしれないけれど(クレジットは二番目だし)、そちらはあまり機能していない気がする。

 時政については、政治的な振る舞いについて、後妻の宮沢りえがすでに主導権を握りつつある様子もあって、不穏な感じがまたいい。あと、新任の国司へあいさつに行くのに、呑気に農作物を持っていくあたりも、悪い人じゃないと視聴者に思わせる演出としてうまい。食べ物を大切にする、そこに価値の重きを置くという姿勢は常に好感をもって迎えられるし、その逆は反感を煽るのに効果的である。その場合のアイテムのチョイスはややずれている方が、むしろ、意味を強調させやすい。『魔女の宅急便』のニシンのパイなども、その好例といえる。

 他に第3回の見どころといえば、頼朝の枕元に後白河法皇の生霊が現れるところだろうか。「おまえはまだこんなに小さかったが」と指で示したサイズが小さすぎて、「それじゃ、胎児だろ!」としか言いようがないところから始まって、その後の頼朝の台詞、「揺らさないで! 揺らさないで!」は西田敏行の手つきを見た大泉洋のアドリブだったんじゃないかという疑惑が消えない(脚本に書くような内容とも思えない)。あの二人なら、それぐらいやりかねないと思う。

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