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2022年01月09日12:21
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憲さん随筆アーカイブス 今こそ歴史真正修正主義者たれ！ 本能寺の変は何月何日に起こったのか！？
※画像は歌川豊宣作「新撰太閤記本能寺」
※この随筆は2020年7月5日に執筆したものに加筆訂正しました。
皆さんは２月７日を何の日かご存知だろうか。
おそらく知らない方のほうが多かろう。
憲さんも知らなかった。
それは「北方領土の日」である。
参考
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【北方領土の日】
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1981年に決まったらしい。
北方領土が日本の領土かロシアの領土かは議論のあるところであるが、今回はそれは問題にしない。
では、なぜ日本では２月７日が「北方領土の日」になったか？
いろいろと紆余曲折があったようだが、1855年２月７日（安政元年12月21日）に江戸幕府と帝政ロシアとの間で最初に国境の取り決めが行われた日露和親条約が結ばれた日に因むそうだ。
参考
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【日露和親条約】
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(ちなみに、この時の江戸幕府側全権は大目付格筒井政憲と憲さんの好きな勘定奉行川路聖謨(としあきら)、ロシア側全権は提督プチャーチン。プーチンじゃなく、プチャーチンね！)
しかし、「安政元年」はそのほとんどが西暦1854年に重なるので、いわゆる「旧暦12月問題」に絡み、現行の教科書の「何ちゃって西暦」で表記すると「1854(安政元)年12月21日」となる。
しかし、それはインチキ西暦である上、現在の記念日の「２月７日」が表れてこない。
参考
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憲さん随筆
歴史教科書に騙されるな！「歴史教育での偽西暦使用について」
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歴史を学ぶ立場からすれば、ますます混乱するばかりである。
しかし、さらにいうと条約締結のもう一方の当事国であるロシア側からみると、「何で、露日和親条約は２月７日なので〜すか？ハラショー！」(？)と言われてしまいそうな、トリックがそこには隠されているのである！
(￣ー￣)ムフフ
それは何か？
それを今から解明していこうと思うのだが、その前に憲さんの前述の随筆に対する意見が寄せられたので紹介しよう。
私の高校の同級生で、一橋大学で経済学を学び博士号を取得した、秀才の呼び声高いM君から先日の憲さんの「歴史教科書に騙されるな！」と題した随筆に関して以下の反論メールをいただいた。
以下、ほぼ全文(一部加工)を紹介しよう。
(私が所属するサークル)の会員でYさんという、メーリングリストでしばしば問題発言をする人がいる。このあいだ彼が個人あてメールを送ってきて･･･
日本軍は南京で歓迎されていた。だから虐殺などなかったのではないか。
といってきたので･･･
中国軍が焦土戦術等で自国民に非行をはたらいたのは事実。だがだからといって日本軍が非行をはたらかなかったことにもならない。日本軍の方がましと思われれば歓迎されたこともあろう。しかし、「中国軍もやった」のならなおのこと、「歓迎された」ことが、「非行を(全然)しなかった」ことの証拠にはならないのではないか。
と返信した。再返信はないので、相手も考えこんだのかもしれない。
なにがいいたいのかというと･･･
憲さんこのあいだ、「江戸時代の終期」について熱心に論じてたけど
時代なんて所詮、後世の人が、歴史をふりかえる便宜のために決めるのだから、区切りを年単位で厳密に決めることに、そもそもあまり意味がない。
と思わないか？
なんというかな･･･
自分なりのものの見方を、実際の歴史的事象に、無理にあてはめようとしている。
という点で、憲さんとYさんが、意外にもにているような気がするんだけど、どうなんだろうか。
以上、引用おわり。
憲さんの「何ちゃって西暦問題」＝疑似西暦問題批判と、「南京大虐殺はなかった」という反知性的、歴史修正主義との議論を同様の問題であるという見方については、いかがな物かと憲さんは考える。
※ちなみに、「南京大虐殺はなかった論」については、ただ「歴史修正主義」のレッテル貼りをするだけではなく、「合理的な根拠に基づき立証」されるべきである。そのような議論もほとんど出尽くしている感もあるが、それについてはまた別の機会に論じたいとは思っている。
問題を「何ちゃって西暦」問題に絞って論じたい。
では、M君言うところの･･･
「時代なんて所詮、後世の人が、歴史をふりかえる便宜のために決めるのだから、区切りを年単位で厳密に決めることに、そもそもあまり意味がない。」
のだろうか？
憲さんがここで問題にしているのは･･･
� 峩萓擇蠅鯒�単位で厳密に決める」のではなく「区切りを日にち単位で厳密に決め」るどころか、出来事の発生順序に沿って時間系列に順番に論じなければならないと言っているのである。
でなければ、歴史の前後関係が曖昧になり、その「原因と結果」の因果関係が正確に捉えられまい。
それは、前回の随筆で述べた神戸港開港と王政復古の大号令との関係の例ではっきりしよう。
�△任蓮◆峪�代なんて所詮、後世の人が、歴史をふりかえる便宜のために決める」のか？
確かにその側面はある。
明治６年以前、日本は長きに渡って旧暦を利用していた。
参考
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【新暦】
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しかし、現在の私たちは歴史教育、とくに日本史教育において、その年号は新暦の西暦を用いて学ぶ。
それは年号に和暦表記だと、その前後を認識するのがはなはだ繁雑であるのが理由であろう。
しかし、当時(明治五年以前)の日本には「西暦」という概念がないので、そういう意味においては、「時代(年号)なんて所詮、後世の人が、歴史をふりかえる便宜のために決め」ているに過ぎないと言えるかもしれない。
であるのであればなおさら、西暦を表記するのであれば、「何ちゃって西暦」ではなく、正確に現在のグレゴリウス暦に日にちも換算して表記しなければ、その「便宜」に揺れや曖昧さが入り込む余地があると言っているのである。
��しかーしっ！、時代(年号)は「後世の人が、歴史をふりかえる便宜のために決め」ているだけなのであろうか？
であるならば、赤穂浪士の討ち入りは「西暦1703年1月30日に強行された」でいいのである。
参考
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【赤穂事件】
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しかし、私たち日本人のDNA(？)には、この事件は･･･
「時に元禄十五年十二月十四日、江戸の夜風をふるわせて響くは山鹿流儀の陣太鼓、しかも一打ち二打ち三流れ。
思わずハッと立上り、耳を澄ませて太鼓を数え、『おう、正しく赤穂浪士の討ち入りじゃ』助太刀するは此の時ぞ、もしやその中に昼間別れたあのそば屋が居りはせぬか。」
と、三波春夫の名調子、「元禄名槍譜俵星玄蕃」(げんろくめいそうふたわらぼしげんば)でも吟(うた)われているように、赤穂浪士の吉良邸討入り＝元禄15年12月14日と刷り込まれているのである。
参考
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【元禄名槍譜俵星玄蕃】
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これが、「ときに西暦1703年1月30日〜」では全くもって様にならず、またピンとこないこと請け合いである。
すなわち、この旧暦表記でわかるのは･･･
１、「元禄期」という江戸文化も華やかなるきわめて平和な時期にこの物騒な事件は起こったということ。
２、旧暦で12月14日と暮れも押し迫った時期、江戸町民も師走の忙しい時期にこの事件が起こったということが、一撃でうかがい知ることができるのである。
旧暦で表され想像してこそ、当時の事件当事者やそれを見守った民衆に感情移入ができたり、時代を感じ取ったりすることができるのである。
しかし、この赤穂浪士の吉良邸討入り＝西暦1703年1月30日と表すとなると、「ふーん、討ち入りは今でいえば１月も末に行われたのか〜。」
「ふーん、討ち入りはロシアのサンクトペテルブルクが建都された年に起こったのか。」
と、全くもって、チンプンカンプンでピントがずれた理解となってしまうのである。
参考
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【1703年】
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�い気董△海譴蓮崟嵎耋音里瞭い粗�り」という、日本国内で起こった事件で、ほとんど対外的な外国との関わりのない事象だからこれでいいのである。
しかし、私が問題としている西暦表記問題の核心は、日本人と西洋人、殊には1549年のザビエル来日以降のイエズス会宣教師の来日と彼らと日本人の交流をめぐって、和暦と西暦の違いを明確に認識していなければ、ある出来事が西洋人はいつ発生している事柄として記録しているかという、それがおきた日時の認識に日本と諸外国において大きな齟齬(そご)が発生してしまうのである。
一つの例を挙げよう。
大河ドラマ『麒麟がくる』で盛り上がっている明智光秀が「敵は本能寺にあり」と言ったか、言わなかったかは別として、光秀が本能寺において信長を討った日は、天正10年６月２日である。
参考
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【本能寺の変】
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これを正確にグレゴリウス暦に換算すると1582年７月１日になる。
しかし、これにはもうひとつ説がありそれが６月21日となっている。
ちなみに、この三つの日にちは全て同じ日にちを表しているのだ。
最初は太陽太陰暦の和暦、２番目は現在も使われている西洋暦のグレゴリウス暦、３番目は西洋暦のユリウス暦である。
実はユリウス暦はグレゴリウス暦以前に広くヨーロッパで使用されていた暦であるが、それに誤差が発生したので、誤差を修正した暦としてグレゴリウス暦に改訂されたのである。
そして、それが改訂されたのが日本では本能寺の変がおきた、1582年であった。
参考
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【ユリウス暦】
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なので、厳密にいうと1582年以前の歴史的事件をグレゴリウス暦に正確に換算したとしても、それはユリウス暦とは若干の誤差があり、それはそれでまた、「何ちゃって西暦」ということになる。
さらに話はややこしく、1582年のグレゴリウス暦導入後それを使ったのはローマ・カトリックの世界であり、これと対抗したイギリスやオランダなどのプロテスタント国はそれ以降もユリウス暦を使用していたのだ。
なので、歴史の前後関係を認識するのであれば、現在と同じ換算グレゴリウス暦を用いればいいのだが、当時の資料にあたる場合、1582年以降は、プロテスタントとカトリックでその日にちにズレが生じていることを認識せねばならないのである。
つまり、本能寺の変をイエズス会宣教師ルイス・フロイスが本国に報告する日付と、後世、イギリス人で家康の外交顧問となった、ウィリアム・アダムスが報告する日付は異なる日付となるのである。(この二人が本能寺の変について報告していたかどうかは憲さんは知らないが･･･。)
と、このように一つの歴史的事件であっても、それがいつ起こったかを認識するにおいて、特に16世紀後半からの西洋との接触が起きてからは、こと「西暦」換算についてはことさら留意する必要があるのである。
それが、歴史と向き合うときに現代人が心得るべき一つの作法といえるのではないかと、憲さんは考えるのである。
ここで、話を冒頭にもどすが、日本ではグレゴリウス暦換算の「1855年２月７日」に締結された、日露和親条約に因み２月７日に成立された「北方領土の日」であるが、これをもし、ロシア側が「露日和親条約締結」の記念日とするとしたら、これは１月27日となるのだ。
なぜか？
それはロシアは近代にいたるまで、東方教会ゆえにユリウス暦を使用していたからである。ロシア暦においては締結日は1855年１月27日となっているのだ。
※ちなみに、現在のユリウス暦は修正ユリウス暦となり、実質的にはグレゴリウス暦と日付が一致している。
これで、冒頭ロシア人が「何で２月７日なので〜すか？」といぶかしがる理由を理解していただけたであろうか？
このように考えると、憲さんがいわゆる「何ちゃって西暦」問題をこれだけ問題視するのは、M君がいうところの「自分なりのものの見方を、実際の歴史的事象に、無理にあてはめようとしている。」のではなく、全くその逆で「実際の歴史的事象について、現代人の間違ったものの見方から修正しようとしている」ことを試みているということを理解していただけたかと思う。
よって、憲さんの問題意識とは「歴史修正主義者」とは正反対の立ち位置ではあるが、意外にもにもそれをあえて呼称するのであれば「歴史真正修正主義」と言うこととなり、これはこれで似ているような気がするのは否めないかもしれない。
(´艸`)くすくす
さて、実はこの暦と歴史に関する難しい関係、さすがに憲さんが独力で発見できるわ〜けがない！
当然、アンチョコ本がある。
それが、前回の随筆でも紹介した近世日本史の泰斗(たいと)国際日本文化研究センター教授の笠谷和比古教授の著した『歴史の虚像を衝く』という書籍である。
参考
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【笠谷和比古】
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『歴史の虚像を衝く』
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この本、日本の近世史を中心に巷間に流布している俗説、誤説を資料を駆使し丁寧にその誤りを指摘してくれており、大変興味深くためになる書籍である。
その第１章に今回の問題にピンポイントの「歴史書における年号表記の誤り」という章があり、そこから今回の例は拝借し憲さんがアレンジして例示した。
そして、その章で掲げられている例の最後に、事例８として「王政復古の宣言−年号表記問題の総決算」として、憲さんが前回の随筆で問題にしたいわゆる「王政復古の大号令」の西暦表記問題が提示されていたのである。
それも「年号表記問題の総決算」として！
すなわち、憲さんの問題意識は歴史学の大家の問題意識とまさに合致していたというわけなのです！
(￣ー￣)ムフフ
ということで、今回私たちが学んだことは、いくら権威ある歴史書や教科書も、旧弊を引きずり非合理的な表現を続けている場合があるので、読者はそういう問題意識をもって、気を付けて読まなければなりませんよ。
という教訓でした！
どーよっ！
どーなのよっ？
(´Д`)=*ハァ〜
参考文献
・笠谷和比古『歴史の虚像を衝く』
・片山真人『暦の科学』
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追伸！
この『歴史の虚像を衝く』に憲さんも騙されていた歴史的事件が書かれていて、読んですんごく「目から鱗」だったので、今度はそれについて言及するね！
※それがこれ！
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憲さん随筆アーカイブス ifの日本史 方広寺鐘銘問題は徳川家康のインネンか？
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是非読んでね！！
(￣ー￣)ムフフ
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