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2021年12月21日21:44

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書評〜柳沢高志『孤独の宰相』(文藝春秋)

 今年もあと10日。
 しかし、8月に東京オリンピックがあってまだ4ヶ月とは思えないほど、昔のことのように感じる。
 何より9月に、菅義偉首相がわずか1年の命脈で退陣したのが、ずいぶん前に思える。
 岸田文雄新首相誕生、新型コロナ感染の原因不明の一気終息、維新党躍進と立憲民主党への「逆風」イメージ。
 政治世界の一寸先は闇とはいえ、攻守逆転、内閣支持率は今なお上昇中だ。

 それにしても、日替わりで様相が二転三転した8月末の大政局と自民党総裁選には、党支持者でもなく部外者の私でさえ興奮した。
 「令和おじさん」、パンケーキ好きの「たたき上げ」首相の、まさに上昇と墜落(ライズ・アンド・フォール)。
 学術会議任命でのつまずき、側近前大臣たちの公選法有罪、長男の接待不祥事、コロナ対応・・・醜聞にまみれた1年間を、誰か1冊にまとめておいてほしいなと思っていたところ、本書が発売され、一気読みした。

 著者の柳沢高志という人は初めて見たが、日本テレビ所属、菅官房長官づきの記者で、首相となったこの1年は、直接面談や電話で情報を伝え、また、相談も受けてきた政治記者だそうだ。
 言わば「身内」が書いた本であり、ある程度、差し引いて読む必要があるが、そばにいた人物が体験した事実を知るのは貴重だ。(菅氏が怒って、机をこぶしでたたく癖が出た場面など臨場感があった)

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 オビにあるとおり、「菅義偉とは何者だったのか」
 「一体、どこで何を誤ったのか」
 著者の意見は、本書にはっきり書いてある(233頁)。私も意見を同じくするが、それは実際にお読みにいただく方がよい。

 最終章は「最後の10日間」
 コロナに翻弄され、二階幹事長、安倍前首相らに「裏切られ」、そして誰もいなくなった、哀れな最後。政局に登場した政治家たちの醜い姿が、見事に活写されている。
 「歓喜、苦悩、無念」菅氏の孤独な息づかいが伝わってくる意外なほどの良書だった。

蛇足 昨年9月1日付けの日記において、スガ氏のことを、「一国の政治リーダーたる資質に欠け、自らの器量に不相応な地位にはつかない方が本人のためだ」、「本人の性格もあらわとなり、その限界や今後の末路も見えた」と指摘した。読みが当たったのは、政治ウォッチャーとして、素直に嬉しい。

※追記 一部報道によれば、本書出版とその内容について、菅氏は憤りを表明しているとのこと。政治家がメディアの政治記者とサシで話したことは、公表を抑えられないのではないか。確かに、相当に怒るだろうという事実が数多く書かれていて、読者は面白い。
あるいは、あべし提灯本のようなものをイメージして「書いてよい」と言ったのだろうか。
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