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2021年08月03日04:26
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『万国の直耕者、団結せよ！』 憲さんの日本政治思想史講座 『日本のマルクス』？ 奇跡の思想家 安藤昌益に迫る！ その五、安藤昌益に対する違和感
※画像は石渡博明氏著『安藤昌益の世界』
その四から続く！
●安藤昌益に対する違和感
と、ここまで昌益の偉大なところを縷々述べてきた。
では今度は少し斜に構えて昌益を見てみる。
憲さんも何冊か安藤昌益に関する著作を読んだだけだが、彼に対する疑問や違和感も当然ながら出てくる。
昌益と憲さんには約300年の時空の隔たりがあるのを承知で次にこれらを挙げていこう。
●百科全書派的な昌益
�‐傘廚痢惻�然真営道』は全100巻であり基本的には医学書である。
しかし、それは医学にはとどまらず哲学、論理学、倫理学、宗教、政治、経済、歴史、地理、天文学、暦学、数学、薬学、動植物学、農学、軍事学、文字学、世界を論じた。
これは、同時代のフランスでは百科全書派と呼ばれる、広大な知性を持った一群の思想家たち、ディドロ、ダランベール、ヴォルテール、モンテスキュー、ルソー、ケネーたちと比肩するものだそうである。
参考
↓
【百科全書派】
https:/
しかし、それらについては憲さんにとっては難解と同時に特に自然科学の分野では現代の科学に少しでも触れている者にとっては正直「？」マークがつくことも多い。
例えば「爵(すずめ)ハ大水二入り蛤(はまぐり)ト為ル」とか「烏(からす)ハ海中二入り烏賊(いか)トナル」である。
雀やカラスが水や海に入ってもハマグリやイカには絶対にならない。
この辺りについては、深く昌益の思想に触れてみたいとは正直思わないのが憲さんの本音である。
解説を読んでいても正直難解で退屈でもある。
●漢字制限論者の昌益
��安藤昌益は「漢字制限論者」ないしは「表音文字推進論者」である。
これは、憲さんの考えとは相容れず、いただけない。
中国で生まれ東アジアで育まれた4000年の歴史を持つ漢字は「表意文字」として、それ自体視覚的な喚起力があり、思考を明確化し文章にメリハリをつけ豊かな表現を可能にする。
確かに、その表意文字のみで言語を表記するという中国や台湾の文字文化にはだいぶ無理があるだろう。しかし、日本の文字文化は漢字のみではなく、平仮名、片仮名という表音文字との併記である。さらに現代の言語文化は文語体から口語体に移行し、さらに現代仮名遣いとなり、当用漢字や常用漢字が普及して結構漢字そのものが合理化されている。
憲さんはこの漢字の合理化にすら結構否定的だが、それでも明治初期にあった、全く愚か極まりない森有礼などの「日本語廃止論」や前島密の「漢字廃止論」などを私たち日本人はその英知でよくぞ乗りきってくれたと思っている。
しかし、その先鞭が安藤昌益だったのかと思った。
昌益は「一字なりとも省き棄つるは転真(てんしん)への奉公なり」と主張し『自然真営道』の『字書巻』では、漢字の成り立ちを批判し、漢字の欺瞞性を指摘しているそうだ。
これは、是非とも読んでみたいものだ。
昌益は仮名文字論者であり基本的には片仮名を採用すべきであり、平仮名は「漢字を崩したものである」から採用しなかったそうであるが、片仮名だって漢字の一部分を採用したものではないのか？これは言っていることがおかしくないか？
参考
↓
【片仮名】
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さらに昌益は自著『自然真営道』など独自の漢文(漢文もどき、なんちゃって漢文)で書いている。これは、それを読ませたいのが農民などの非インテリ階級ではなく、漢文を嗜(たしな)むインテリ階級あったらとのことであるが、これはあまりにも自説にこだわる昌益らしくないではないのか？
その上、独自の漢字を造字し、独自の熟語を造語してしまうのはいかがなものか？
それを認めては同じ言語圏にいてもコミュニケーションが不能になってしまうではないか。
人に何かを伝えたければ、やはりこだわりは捨て相手の言語のルールにしたがってコミュニケーションをとるのが合理的であろう。
参考
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「森有礼の日本語廃止論」
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【漢字御廃止之議】
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●激烈な昌益の仏教批判
��昌益は前述した通り、仏教を批判するあまり、飛鳥時代に起きた蘇我氏と物部氏との対立において、排仏派の物部守屋を「日本第一の神忠臣は守屋の大臣なり」と絶賛し、崇仏派の蘇我氏や聖徳太子を「日本の大敵」とこき下ろすが、これがもし本当なら、これまで昌益が言っている事とは完全に矛盾しているだろう。
物部守屋は負けたとはいえ、丁未の乱で蘇我氏と「殲滅(せんめつ)戦」の殺しあいを戦っているのだ。
参考
↓
【丁未の乱】
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それに、昌益は「義」を否定するのだから「神忠臣」はないだろう。
これについては、前述の石渡氏も「こうした表現には、何事にも囚われず、国際的な視野をもった人物として昌益を見る目からは、信じられないほどの過剰な民族意識の持ち主として、違和感を覚える向きも多いかもしれない。私もその一人である」と昌益の発言に違和感を呈している。
●昌益の徹底した釈迦批判
ちなみに、昌益の仏教批判は最晩年に一層深化した。
これも、石渡氏の著書から引用する。
以下、引用。
(昌益は)最晩期の「契(かな)う論」に至って、「世は聖人乱し、心は釈迦乱し」「聖人出でて･･･欲々・盗々乱々として止むこと無し。これに釈迦出でて欲心の迷いを足し」として、社会を混乱に陥れた聖人と混乱に輪をかけた釈迦という形で、それぞれの犯罪性について、明確な位置づけがなされるようになる。
つまり「自然の世」を破壊したそもそもの元凶は聖人であるが、聖人の破壊により世の中が混乱し、人心が乱れてきたとき、聖人の悪である不耕貪食(搾取生活)を告発し正すのではなく、聖人の尻馬に乗って、「衆生を度(ど)す」などといって人々の心の中に入り込み、自らも不耕貪食(寄生生活)を始め、混乱に拍車をかけたのが釈迦であり、それに続く仏教家であるというのである。
以上、引用終わり。
釈迦もここまで言われたら形無しである。
憲さんは、仏教については人の道としての道徳律として存在意義を認めている。
また、昌益の蘇我氏に対する態度は幕末期における廃仏毀釈を彷彿とさせ、正直寒々してしまう。
参考
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【廃仏毀釈】
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仏教が今まで培ってきた文化的なプラスの側面を捨象すべきではないのではないか？
そう考える。
●実は「直耕」していなかった昌益
�い修靴董⊂傘廚紡个垢觀�さんの最大の違和感がある。
それは、昌益は武士や聖人などを「不耕貪食の徒」として「衆人直耕の穀産を貪」ると批判しており、また、学者やインテリ階級に対してもなどは「学問は、書字は･･･道を盗む謀(なかだち)なり」「学問といえることは童子の所業」といって、古来の学問を一切否定した。そして、「すべての人が鍬で直に地面を耕し、額に汗を流して田畑を耕す」農民の直耕こそが正しいありかただと主張している。
しかし、にも関わらず昌益自身は一ミリたりともそれ、すなわち狭義の意味での「直耕」を実践していなかったということである。
昌益の生業は前述した通り、医者なのだ。
この事実は、実際にはそのような社会はあり得ないと自身で立証してしまったに等しくないか？
やはり、医者や社会変革の道理を説く職業的インテリ階級は必要ではないのか？
もし、それを否定するのであればそれは中国文化大革命の「下方政策」や、さらに言えばカンボジアにおけるポル・ポト率いるクメール・ルージュの知識人大量虐殺とどう違うのであろうか？
丁寧な説明が必要であろう。
参考
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【上山下郷運動】
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「内戦や虐殺、傷痕深く 悲劇の王国カンボジア」
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やはり、昌益の説くような社会はユートピアなのかも知れない。
以上が憲さんの昌益に対するささやかな疑問、違和感である。
その六へ続く！
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