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2021年07月20日21:15

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憲さん随筆アーカイブス ポストコロナを考える

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※この随筆は2020年5月31日に書いたものに加筆修正しました。

※画像は中島岳志教授

東京新聞夕刊の論評欄がコロナ情勢を受けて気焔をあげている。

先日紹介したイギリス在住のコラムニスト、ブレディみかこさんの「社会時評」に続き、水曜日の夕刊は満を持してわれらが中島岳志先生の「論壇時評」が「ポストコロナの環境問題」と題して論評を載せている。

参考

「ポストコロナの環境問題 収奪やめ、自然の再生産を 中島岳志」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/31688

「憲さん随筆アーカイブス 今なおイギリスに取り憑くサッチャーの亡霊」
https://hatakensan.cocolog-nifty.com/blog/2021/07/post-a915f0.html

どちらの論評も、キーワードは「緊縮財政の新自由主義から決別し、ポスト資本主義へ」である。

今回の時評で一番興味深かったのは『群像』6月号に掲載された若手哲学者斎藤幸平氏の「コロナ・ショックドクトリンに抗するために」である。

憲さんこの哲学者知らなかった。

参考

【斎藤幸平】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E6%96%8E%E8%97%A4%E5%B9%B8%E5%B9%B3

憲さん随筆
「脱成長コミュニズム」の展望−斎藤幸平著『人新世の「資本論」』を読む
https://hatakensan.cocolog-nifty.com/blog/2021/01/post-052eda.html

なんでも、憲さんより20才も若い33才で、大阪市立大学の先生。

専攻がヘーゲル哲学、ドイツ観念論、マルクス主義哲学、マルクス経済学。
影響を受けた人物がヘーゲル、カール・マルクスなんだって!

いまどきいるんだね、こんな人が!

で、この先生こう言ってるそうです。

「資本主義こそが危機の確率を飛躍的に増大させている」

そして、この先生が特に問題視するのがアグリビジネスの拡大だそうで…。

「その経営者たちは、世界中で原生林の破壊と乱開発を繰り返し、そして、単一の家畜を過密状態で飼育している。そのような環境でウィルスは新たな生息地をみつけ、伝染し進化していく」のだそうだ。

そしてさらにこの先生、「本当のスキャンダルは、多国籍企業がこの危険性をしっているということだ」と暴露しています。

しかし、「企業はこれらの対策に経費をかけず、政府に負担を回し『外部化』する一方で、政府に規制緩和を求め目先の利益をおいかける。

さらに、これに追い打ちをかけるのが各国政府の新自由主義政策で、「緊縮財政によって保健福祉体制は瓦解し、公衆衛生部門への予算は削減され、行政は危機に対して脆弱になる。」そうである。

まさに、先日のブレディーみかこさんが言及したのと同じ分析である。

そして、時評はこう続く

「では、具体的に誰が最もシリアスな危機にさらされるのか。それは低賃金労働者である。彼らは自粛すると、経済的に困窮する。労働現場に出て、感染リスクに晒されるしか生きる方法がない。しかも、感染すると高額な医療費を請求される。十分な治療を受けることもできない。『ウィルスは平等ではない』のだ。」

Σ( ̄□ ̄;)ハッ!

まさに、憲さんのことではないですか!

そして、時評は斎藤先生の解決策を紹介している。

「(環境破壊を続ける)資本主義的アグリビジネスをやめることしか、根本的解決策は存在しない」と。

そして、新自由主義から決別し、相互扶助社会を築いていかねばならず、「他者と自然からの収奪を中心とする資本主義から、他者と自然のケアと再生産に重きを置いたポスト資本主義への『跳躍』に向けた扉が、今開かれているのだ」と述べているそうです。

この斎藤先生が最終的に目指す「ポスト資本主義」は、当然ながら専門のマルクス主義=共産主義ということになるのでしょうな。

しかし、ただ論評しても(これは私にも言えることではありますが)、「ポスト資本主義」が笑いながら歩いてこちらにやってくるとは思えません。

問題はそれをどういう手段で勝ち取るか、それはこの先生はどう考えているか興味深いですな。

(これについては、後日憲さんの読んだ先生の著書、『人新世の「資本論」』に触れていました。)

また、この先生の論説にふれ、「リベラル保守」を自称する中島先生がどう考えるかもまた、興味深いです。

参考

【中島岳志】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%AD%E5%B3%B6%E5%B2%B3%E5%BF%97

まさか、環境問題のみが解決されれば全てよし。とは考えているまい。

時評の最後、中島先生はこうまとめられています。

「私たちは環境を搾取するあまり、大きなしっぺ返しを受けている。これをイノベーションによって乗り越えることは容易ではない。私たちの文明観を見つめ直し生活スタイルを変えていかなければならないだろう。(←これは以前から憲さんが主張していること!)そうしないと、次から次へと難民化したウィルスが私たちに『引っ越し』してくる可能性がある。
元に戻るのではない。新しい扉を開くのだ。」と。

コロナ禍を機に、中島先生も「ポスト資本主義」を目指す方向ではあるようだが、そのビジョンは少なくともここでは語られていない。

憲さんもコロナ禍を奇貨とし、ポスト資本主義を目指すチャンスだと確信している。

しかし、それを担う主体が本当に成長しているのか?

日本の若者もコロナが収束するかしないかで闘争を再開した香港の若者を見習うべきではないか?

参考

【2019年-2020年香港民主化デモ】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/2019%E5%B9%B4-2020%E5%B9%B4%E9%A6%99%E6%B8%AF%E6%B0%91%E4%B8%BB%E5%8C%96%E3%83%87%E3%83%A2

ポストコロナの社会を継続してあの腐敗しきった敵が手中にするのか、それとも味方が未来を掴むのか。

これは危機でもあると同時に大きなチャンスでもある。

まさにいまがその分岐点だと思うのだが、それにしては巷の情勢はいたって呑気なのが気にかかる。

不要不急かつ、ジェット燃料の無駄遣いで環境破壊のブルーインパルスの曲芸飛行やレインボーブリッジのライトアップに一喜一憂している場合ではないのである。

参考

「ブルーインパルスはなぜ都心を飛んだ? 『政治利用』『迷惑』の声も 」
https://www.tokyo-np.co.jp/article/32922

それとも、こんな情勢分析は哲学者や学者の机上論であり、また憲さんの夢想に過ぎないのであろうか?

我々に未来はあるのか?

この日曜日もコロナに怯えながら、自宅に閉じ籠り考えていました。

(´Д`)=*ハァ〜

どーよっ?

どーなのよっ?

※念のためくだんの論評を再録します。

以下。

ポストコロナの環境問題 収奪やめ、自然の再生産を 中島岳志
2020年5月28日

 そろそろ本格的に、コロナ後の世界ヴィジョンを構想しなければならない。単に元の状態に戻るのでは意味がない。新しい時代の世界観が必要とされている。
 イタリアの作家で、大学院で素粒子物理学を専攻したパオロ・ジョルダーノは、非常事態下でエッセイを綴(つづ)り、『コロナの時代の僕ら』(早川書房)を出版した。彼は環境破壊と新型ウイルス拡大の関係に鋭く迫る。
 人間は森林を大規模に破壊することで、これまで踏み込んだことのなかった場所まで生活圏を広げた。これに伴って、「新しい病原体と接触する可能性」が高まった。動物はどんどん絶滅し、「その腸に生息していた細菌は別のどこかへの引っ越しを余儀なくされている」。
◆巣を失うウイルス
 「ほんの少し前まで本来の生息地でのんびりやっていた」ウイルスたちは、新たな宿主として、人間に目をつけている。人間は数を増やし続けている。しかも、グローバルに移動し、多くの人と接触し続ける。「これほど理想的な引っ越し先はないはずだ」
 ウイルスは、環境破壊によって難民化している。ウイルスが悪いのではない。「僕らのほうが彼らを巣から引っ張り出している」のだ。
 コロナウイルスが終息しても、ウイルス問題は終息しない。次々と別のウイルスの引っ越しが起こる可能性がある。今回の感染症以上のパンデミック(世界的大流行)が、何度もやってくるかもしれないのだ。
 今考えるべきことは、私たち人間が「ひとつの壊れやすくも見事な生態系における、もっとも侵略的な種であることについて」である。ポストコロナのヴィジョンは環境問題にほかならない。
 斎藤幸平は「コロナ・ショックドクトリンに抗するために」(『群像』6月号)で、現在を「未来への分岐点」と捉え、「大きな変革のビジョンが必要」と説く。斎藤もジョルダーノと同じく、人間の環境破壊が未知のウイルスとの接触機会を増やしたことを指摘する。そして、「資本主義こそが危機の確率を飛躍的に増大させ」ていると訴える。
◆危険性を知る企業
 彼が特に問題視するのが、アグリビジネスの拡大である。経営者たちは、世界中で原生林の破壊と乱開発を繰り返している。そして、単一の家畜を過密状態で飼育する。ウイルスは新たな生息地を見つけ、伝染し、進化していく。
 斎藤は言う。「本当のスキャンダルは、多国籍企業がこの危険性を知っているということである」。しかし企業は、対策に経費を掛けない。政府に負担を回し、「外部化」しようとする。政府に規制緩和を求め、目先の利益を追いかける。
 これに追い打ちを掛けるのが、各国政府の新自由主義政策である。緊縮財政によって保健福祉体制は瓦解(がかい)し、公衆衛生部門への予算は削減される。当然、行政は危機に対して脆弱(ぜいじゃく)になる。
 では具体的に、誰が最もシリアスな危機にさらされるのか。それは低賃金労働者である。彼らは自粛すると、経済的に困窮する。労働現場に出て、感染リスクに晒(さら)されるしか生きる方法がない。しかも、感染すると高額な医療費を請求される。十分な治療を受けることもできない。「ウイルスは平等ではない」のだ。
 斎藤曰(いわ)く、環境破壊を続ける「資本主義的アグリビジネスをやめることしか、根本的解決策は存在しない」。地産地消型の持続可能な農業への移行を進めるしかない。そして、新自由主義から決別し、相互扶助社会を築いていかなければならない。「他者と自然からの収奪を中心とする資本主義から、他者と自然のケアと再生産に重きを置いたポスト資本主義への『跳躍』に向けた扉が、今開かれているのだ」
 私たちは環境を搾取するあまり、大きなしっぺ返しを受けている。これをイノベーションによって乗り越えることは容易ではない。私たちの文明観を見つめ直し、生活スタイルから変えていかなければならないだろう。そうしないと、次から次へと難民化したウイルスが私たちに「引っ越し」してくる可能性がある。
 元に戻るのではない。新しい扉を開くのだ。 (なかじま・たけし=東京工業大教授)

以上
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