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2021年07月17日06:31

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慣れから生まれるミス


病気の有病率が1000分の1、その病気を診断する検査の偽陽性率が5%の場合、検査結果が陽性だった人が実際にその病気である確率は何%でしょうか。その人の症状や病気の兆候については、何も知らないこととします。

これは、調査グループが、ハーバード大学とボストン大学の医学部生・医師に出した問題です。正解できたのはわずか4分の1、最も多かった答えは95%だったそうです。出典元「RANGE 知識の幅が最強の武器になる」(デイビッド・エプスタイン著・日経BP)

正解は1.96%です。確率の計算は以下のとおりです。まず、この問題の確率の式は「実際に病気の人(真陽性者数)÷検査した人のうち陽性になる人」で求められます。分母である「検査をした人のうちで陽性になる人」は、真陽性と偽陽性の人の合計数です。

実際に病気である人は検査すると必ず陽性になると仮定して、仮に10万人にこの病気の検査をした場合を計算します。前提より、有病者(真陽性者)は100人、偽陽性者は約5000人です。よって、式の分子は100人、分母は5000+100=5100人となります。これらから計算すると、100÷5100=0.0196・・・約2%です。

式だけを見ると、小学校の高学年であれば計算が可能なレベルです。有病率と偽陽性率を検索すると有病率「一時点における単位人口に対する患者の割合(10万人単位で表すことが多い)」。偽陽性率「病気に罹患していない人で、検査で陽性になった人の割合」と、用語の意味が確認できます。

問いは「陽性と判定された人が病気である確率」ですので、統計学を持ち出すこともなく、インターネット検索さえできれば小学校の高学年でも正解しているのではないでしょうか。医学部生・医師の間違いのもとは、「偽陽性率」が示すものを誤認したことです。

この率の分母は陽性と判定された人ではなく罹患していない人です。検査が陽性のときに感染している確率を示すのは「陽性的中率」と言われており、この問題の指標が示す意味を正しく理解していなかったのがそもそもの原因なのです。正解である約2%と、最も多い誤答の95%では、あまりに大きな差があります。

なぜ医学の専門家が用語の意味を間違い、しかも約2%と95%という数字の開きに気づかなかったのでしょうか?それは普段、医師は症状や兆候のある患者にのみ検査をしているからです。診察・検査時に既に症状が出ているため、陽性判定後に罹患していないなんてことが滅多にないのが普通です。

つまり、日々患者に接している医師としては、経験上「95%」と直感的に感じても違和感がないのです。逆に、計算して正解の約2%を導き出したとしても「本当に合っているのか?」と疑いを持ったかもしれません。

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