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2021年07月04日18:11
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日本義民“烈”伝 世界初！『新潟コミューン』を指導した涌井藤四郎に思いを馳せる
※画像は絵本『べろ出しチョンマ』の表紙
皆さんは『べろ出しチョンマ』という話をご存知だろう。
以前には小学校の国語の教科書にも載っていた有名な話である。
千葉の花和村(架空の地)に伝わる「ベロ出しチョンマ人形」というおもちゃがある。
紐を引っ張ると眉が八の字になりベロを出す、というこのおもちゃはどうして生まれたのか・・・。
ここに長松という男の子が泣き虫な妹が両親と暮らしていた。
長松は妹の包帯を取り変えるのだが、妹は包帯をはがそうとする度に皮膚が引っ張られる痛みで泣いてしう。
その度に長松は眉を八の字にさせ、ベロを出したおもしろい顔を作り、妹がその顔を見て笑っているうちにいっきにはがしてしまう、という方法で包帯を変えていた。
そんなある日、長松の父が年貢を減らして欲しいと将軍に直訴しようとして捕まってしまう。
そして刑罰＆見せしめとして一家全員磔にされてしまうのだ。
怖い怖いと泣く妹をちょっとでも楽にしてやろうと長松は「兄ちゃんの顔見てみろ、ほら！」と、包帯を替えるときに見せるおもしろい顔をして見せる。
長松は妹をちょっとでも楽にしようと最期までその変な顔を作り続けた。
最期まで妹を想いやりながら死んでいった長松を哀れに思った人たちが「ベロ出しチョンマ（長松）」という人形を作り、今も大事にされている･･･。
という話である。
参考
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【ベロ出しチョンマ(書評)】
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朗読『ベロ出しチョンマ』
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この話､憲さんにとっては「パブロフの犬」のような話で、その題名を聞いただけで涙腺が完全に緩んでしまう。
実はこの『ベロ出しチョンマ』、作者も話しているが「江戸時代の下総国佐倉藩領の佐倉惣五郎の逸話をモデルにした」とのことだ。
佐倉惣五郎は言わずと知れた我ら千葉県民が誇る「義民」であり、佐倉藩領主堀田氏の重税に苦しむ農民のために将軍への直訴をおこない処刑されたという伝説が講談や浄瑠璃、義太夫で知られているが、実話かどうかは疑わしいとのことである。
参考
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佐倉義民伝 惣五郎住家子別れの段
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【佐倉惣五郎】
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先日、憲さんが歴史の本を読んでいたらこの佐倉惣五郎以上の偉大な「義民」の歴史的存在を知って、「義民マニア」の憲さんは興奮が止まらなくなり、いてもたってもいられず筆を執った。
その人の名は涌井藤四郎である。
Σ(￣□￣;)ハッ！
そんな人知らない？
(´Д`)=*ハァ〜
そうであろう。
「義民マニア」の憲さんも知らなかった。
この人、新潟の人である。
江戸時代の明和５年(1768年)、越後国新潟町（現新潟県新潟市）において町民が長岡藩政に抵抗しおよそ2ヶ月にわたる町民自治を行なったのだ。
これを新潟明和騒動といい、この町民自治を指導したのが涌井藤四郎であった。
参考
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【新潟明和騒動】
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【涌井藤四郎】
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この事件は日本の歴史の中でも特異な歴史的事件であり、町民たち自らの手で町政を治め、日本史の中に「自治」を実現させた数少ない事件であったとされているほか、この騒動は2ヶ月とはいえ江戸時代の封建制の中で町民自らが町政を行うだけでなく、町民の多くが参加していることから「惣町一揆」の様相を示したとされている。
参考
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【惣町一揆】
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安政6年（1859年）江戸の漢学者であった寺門静軒は涌井のことを「越後にも惣五郎がいた」と紹介している。
参考
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【寺門静軒】
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戦後には民主主義や市民自治の視点から、本騒動の町政は歴史上画期的なものだと、パリのコミューンにも並ぶと高く評価する論者も現れた。
Σ(￣□￣;)ハッ！
「パリコミューンにも並ぶ」！？
確かにパリコミューンも約２ヶ月間の市民自治であった。
それでは、パリコミューンをもう一度おさらいしよう。
【コミューン】
三省堂広辞林で引いてみる。
�ー�治的な原始社会
��中世ヨーロッパの自由市。国王、領主から幅広い自治権を得ていた。
��フランス・イタリアなどの最小行政区
要領を得ない。
さらに調べる。
コミューン（仏: commune）は
フランス語である。「共通」「共同」「共有」「多数」「平凡」「庶民」等を意味する語で、英語のコモン (common) にあたる。
一般名詞では「フランスにおける基礎自治体、すなわち地方自治体の最小単位」を意味する。
参考
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【コミューン】
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しかし、「コミューン」は日本では一般名詞で語られることはあまりなく「パリコミューン」として、固有名詞として語られることがほとんどである。
【パリコミューン】
山川の世界史用語集で引いてみる。
【パリ=コミューン Commune de Paris 】
1871年 革命化したパリ民衆が樹立した自治政権。臨時政府軍によるパリ国民兵の武装解除を契機にパリ民衆が蜂起し、1871年3月に全市民の選挙でコミューン議会(パリ市議会)を樹立して、臨時政府から自立を宣言した。知識人を中心に都市民衆も参加した自治政権は、公務員の選挙とリコール制、労働者による仕事場の自主管理などをうち出した。しかしドイツの支援 を受けた臨時政府との「血の週間」と呼ばれた市街戦ののち5 月末に崩壊した。
【血の週間】
パリ=コミューン弾圧の最後におこなわれた、コミューン軍と臨時政府軍との戦闘を指すことば。1871年5月21日〜28日におこなわれ、 コミューン派の死者は約3万人と言われる。
【臨時政府】
1871年、ドイツとの休戦条約締結後の総選挙によって生まれた政府。保守派の圧倒的に多い国民議会がボルトーで開かれ、ティエールが行政長官に選出された。この政府の下で、屈辱的な内容のドイツとの仮講和条約が調印された。
まだ、うすらぼんやりしかわからない。
世界史の教科書を紐解く。
19世紀の半ばフランスはナポレオン三世(ナポレオン一世の甥)の第二帝政下にあった。
ナポレオン三世は資本家、労働者、農民各層の利害の調停者を装い国民総意の独裁体制を敷いた。(ボナパルティズム)
【第二帝政】
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【ボナパルティズム】
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『カール・マルクス著 ルイ・ボナパルトのブリュメール18日』
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ナポレオン三世は、国民の支持をつなぎ独裁の権威を高めるため、伯父のナポレオン一世同様、数々の戦争を起こした。
クリミア戦争、アロー戦争、インドシナ出兵、イタリア統一戦争などである。
また、繁栄のフランスを誇示するために1867年にはパリ万博を開催し、そこには政権末期の徳川幕府が参加した。
※これについては今週の大河ドラマ『青天を衝け』でやるようだ。
参考
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「篤太夫、パリへ！人生の転機が訪れる 大河ドラマ『青天を衝け』」
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1870年、プロイセン(ドイツ)ｰフランス戦争(普仏戦争)が起こるとナポレオン三世はプロイセン軍に捕縛される。これをもって第二帝政はあっけなく崩壊する。
翌年の1871年に「ドイツ帝国」が成立した。
普仏戦争終結後、フランス臨時政府がドイツ帝国と結んだ講和条約を不服としたパリ市民軍と労働者の集団が、臨時政府に反旗を翻して樹立した革命自治政府＝パリコミューン(3月18日〜5月28日の72日間)が樹立され、世界史上初の労働者による革命的自治政府(コミューン)が出現した。
これにより臨時政府はベルサイユに放逐された。
そして、パリに続いて起こった地方都市のコミューン運動は次第にベルサイユ政府によって次々に鎮圧され、ベルサイユ軍はパリの孤立と内紛、軍事指導の混乱に乗じて進撃を続け、ついに5月21日、パリ市中に侵入、「血の週間」とよばれる凄惨な市街戦ののち、28日、コミューンを完全に鎮圧した。この間に3万人近くのパリ市民が虐殺され、4万人が軍事裁判にかけられ、1万人近くが死刑、無期流刑その他の有罪宣告を受けた。
しかし、民衆の自発的蜂起と新しい連帯の原理は現代革命の原型として重視され、マルクスはこれを最初の労働者政権としてその著書『フランスの内乱』で高く評価した。
参考
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『フランスの内乱』
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参考
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【パリコミューン】
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やっと「パリコミューン」の概要がおぼろげながら理解出来ただろうか？
では、この中の記述「パリコミューン(1871年3月18日〜5月28日の72日間)が樹立され、世界史上初の労働者による革命的自治政府(コミューン)が出現した。」というのは正しいのだろうか？
パリコミューンが1871年である。そして、新潟明和騒動が1768年である。
日本の新潟でのコミューンのほうが100年も早いではないか！
世界史上初の労働者・市民による革命的自治政府(コミューン)は日本の新潟で起きたのではないか！？
そういう問題意識で「新潟明和騒動」をさらに調べてみた。
現在、新潟県の県庁所在地となっている新潟市だがこの中心部は江戸時代は新潟町といって長岡藩の所領であった。
参考
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【新潟市】
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この新潟市中央区の上古町商店街では、毎年８月24日に「明和義人祭」が開かれている。
参考
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「地域の歴史や文化を語り継ぐ 〜明和義人祭〜」
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この祭りは新潟明和騒動の指導者、涌井藤四郎らを讃え追慕する祭りなのである。
憲さん、この事件何で知ったかというと先日随筆に書いた田沼意次を調べているときである。
参考
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「憲さん歴史探偵！ 田沼意次(たぬまおきつぐ)は本当に悪人だったのか？ 一橋幕府説から読み解く」
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彼について調べていたら、井上清著作の『日本の歴史・中』の19章「封建制の矛盾と激化ｰ享保・天明期の政治と社会」中「町民のうちこわしと農民一揆」に中にこうあった。
以下、引用。
この年(1768年)長岡藩領の新潟では、藩が市民に強制献金(御用金)を命じたのを、町役人がひきうけて一般市民にわりあてたのに反対し、おりからの米価騰貴に苦しむ荷揚げ人夫ら下層市民を主力として、商人湧井(涌井)藤四郎の指導のもとに、大衆が蜂起した。奉行所は鎮圧のために鉄砲までもちだしたが、市民勢はこれをうちやぶり、役人の逃亡した後、一ヵ月以上にわたって市民が市政の全権をにぎった。短期間とはいえ、市民が権力をにぎったことは、近世都市では、現在までに知られている唯一の例である。
町人の闘争がこのように激烈な形態をとるのは、日雇労働者・下級職人・奉公人・問屋制家内工業の労働者など、近代プロレタリアの前身である無産労働者＝前期プロレタリアの層が厚くなり、彼らが蜂起の主力となるからである。同様に農村でも前期プロレタリアがひろく生じた。水呑は、一面では前期プロレタリアでもある。彼らが貧苦のどん底においてかえって土地 へのしばりつけからあるていど自由になり移動性をもったことと、一般農民が商品の生産と交換にますますひろく参加して地方的な利害の共通性を深めたことのために、一所の一揆はただちに他所にひろがり、領主の異同をこえて波状的にひろがってゆくようになった。
以上、引用終わり。
井上清は言わずと知れたマルクス主義講座派の歴史学者である。
参考
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【井上清】
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彼の著述はいわゆる「唯物史観」「民衆史観」に貫かれておりこのような当時の民衆の闘いが多数あげられており大変興味深い。
その彼がこの新潟明和騒動を「近代プロレタリアの前身である無産労働者＝前期プロレタリアの層が」「一ヵ月以上にわたって市民が市政の全権をにぎった。短期間とはいえ、市民が権力をにぎったことは、近世都市では、現在までに知られている唯一の例である。」言っているのだ。
また、権威ある歴史書『岩波講座日本の歴史』の中の「宝暦ｰ天明期の社会情勢」の中で歴史学者の林基がこの新潟明和騒動を「市民的反対派の指導のもとに平民的・前期プロレタリア的要素が行動力となり、一時的ではあるが、市政をにぎるまでに至るのである。日本における都市コンミューンの闘争ともいうべきものである。」と紹介している。
しかし、これは日本に限らず世界初の「都市コンミューン」とも言えるのではなかろうか？
参考
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【岩波講座日本歴史】
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【林基】
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さらに、この説を補強する言及が豊田武の『日本の封建都市』の中にある。
以下、引用。
明和四年(1967年)(？ママ)に起った新潟湊の騒動など、一時的にも、市政機関を占領し、一種の臨時政府をうちたてた点において、打ちこわしの中でも画期的な意義をもつものと思われる。 打ちこわしの主要勢力は船大工・木挽き・荷揚人夫・船乗り・漁夫・日傭取りなどの労働者によって占められて、その首領に推薦されたのは、布帛(ふはく・織物)(？ママ)を商う越前屋涌井藤四郎であった。
以上、引用おわり。
このように、新潟コミューンの主体となったのはまさに町民であり「前期プロレタリアート」であったのだ。
参考
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【豊田武】
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これは、世界史的にも「世界史上初の労働者による革命的自治政府(コミューン)」ではないだろうか？
1768年とはまさに田沼意次が側用人となった翌年であり、江戸時代においても田沼時代の幕開けであり、「明治維新」のちょうど100年前である。
しかし、この市民蜂起＝コミューンも最後はその規模こそ違えパリコンミューン同様悲劇的な結末になっている。
この新潟明和騒動に対して、長岡藩は新潟への派兵を試みたが町民側は新潟港での藩兵の荷降ろし作業を拒否。町民側の結束に長岡藩も涌井を総代として承認せざるを得なかった。
さらに長岡藩は町民懐柔の為、米1,000俵の配給を実施、当事者であった町役人等を取り調べる為と称し町人側の関係者を次々に召喚した。11月22日に長岡藩へ出頭した涌井らは藩側の策略により捕らえられた。
約一年後の明和6年（1769年）12月28日、涌井など13人を除いてほとんどが新潟に帰される。
そして、明和7年（1770年）7月20日に騒動の判決が出て、涌井と岩船屋が打首獄門の判決となり、8月25日、涌井は一切の責めを負わされ腹心の須藤佐次兵衛（岩船屋佐次兵衛）と共に市中引き回しの上鍛冶路牢屋敷で処刑されたのだ。
しかし翌26日夜半、かつて藤四郎に難を救われたお秀という女が獄門台からその首級(しるし)を奪い海辺の松の根元に葬った。その後安政4年だれとも知れず二十六夜と刻んだ石塚を建立。役人の目を憚(はばか)り転々としたが、昭和15年現在地に安置される。
月の眼のとどきつ廿六夜待
と真城院境内にある石塚の裏に句が刻まれている。
参考
↓
【真城院】
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それから200年たった今でも涌井と、岩船屋(須藤佐次兵衛)は義民として新潟市民の尊崇の対象となっているのだ。
日本の新潟ではパリコミューンのように大量の市民が虐殺され、処刑されることはなかったが、その指導者であった涌井藤四郎とその片腕となった須藤佐次兵衛が無惨にも無実の罪で市中引き回しの上、斬首されてしまうのだ。
彼らは騒動の責任を一身に引き受けた、文字通りの義民であった。
藤四郎享年55歳。佐次兵衛享年70歳。
以上見てきたように、パリコミューンの遥か100年以上も前に我が日本においておそらく世界史上初であろう、労働者・市民による革命的自治政府(コミューン)が出現したのは日本の階級闘争史上誇るべきことであるだろう。
しかし、残念なことながらこの「新潟コミューン」とでも言ってよい「新潟明和騒動」は高校の歴史教科書はおろか資料集すらにも載っていないのが現状である。
なので、知る人ぞ知る歴史的重大事件なのだ。
このように、江戸時代の民衆は「お上」の圧政に対してただただ我慢して従っているだけではなかったのである。
時には直訴、強訴、さらには打毀(こわ)し、一揆といった暴力的な手段で要求実現を勝ち取って来たし、今回の新潟明和騒動のように高度な市民自治を勝ち取ったという輝かしい歴史があるのだ。
しかし、振り返るに現代の日本はどうであろうか？
為政者の質が江戸時代以下であるにも関わらず、皆飼い慣らされてはいないだろうか？
民意を無視して強行されるオリンピックはもはや「実力闘争」で中止に追い込むべきではないのだろうか？
そして、現在の悪徳為政者に代わり労働者・市民こそが権力を奪取し高度な自治を築いていくときではないだろうか？
憲さんはこの新潟明和騒動の義民涌井藤四郎と須藤佐次兵衛の存在を知ってそう強く感じた。
旧暦８月25日の夜は、日本における偉大な義民を偲び遅く出る月を見ながら瞑目することとしよう。
合掌。
どーよっ！
どーなのよっ？
※参考文献
齋藤紀生著『新潟明和騒動文献資料集成ｰ新潟明和騒動研究への序説』
※この著者は「新潟明和騒動」を研究している民間の研究者です。憲さんと同じように井上清著『日本の歴史』でこの事件を知り研究に没頭したそうです。
※この本は奇跡的に江戸川区の図書館にありました。
しかし、何せ誤字脱字が多く読むのに苦労します。
※この著者は1753年に著された安藤昌益の『自然真営道』の思想が新潟コミューンに影響を与えていると示唆している。
これは大変興味深かった。
安藤昌益については憲さんのさらなる研究対象としよう。
参考
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【安藤昌益】
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全体参考
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「憲さん随筆アーカイブス 受け継がれる革命『武州世直し一揆』考」
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この憲さん随筆は幕末期の世直し一揆についての論考
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