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2021年05月23日14:31
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日本のおかしな現状を卓越した比喩表現で味わう。 小田嶋隆著『ア・ピース・オブ・警句』を読んで
皆さんももう気づいているかもしれないが、憲さんはあまり頭の回転が良い方ではない。
特に、記憶力に至ってはからっきしである。
よって、暗記科目のさいたる日本史の高校時代の成績や入試の点数は散々であった。
なので、憲さんは文章を書くのが好きなのだが、それを書いてしまうと数日のうちにその中身を忘れてしまうのがほとんどである。
内容は勿論のこと、何のことを書いたのかすら忘れてしまっている場合が多々あり、そのタイトルやうっすらとした中身を覚えていれば「御の字」である。
いわんや、他人が書いた本を読んでも、その場では納得して理解したつもりでいても数日たつとその内容などはきれいさっぱり溶解し、頭の中からなくなってしまうことがほとんどである。
なので、憲さんは読んで印象に残った書籍についてはできうる限り感想文を書いておこうと心がけているのだ。
なので、この随筆は憲さんにとっての読書感想文の備忘録でもあるのだ。
これもその実践である。
二週間前、図書館から予約した本の順番が回ってきたとの連絡が入った。
小田嶋隆氏の『ア・ピース・オブ・警句』である。
参考
↓
https:/
相当待たされたので、予約したことすら忘れていた。
なぜ、この本を予約したかもはっきりしない。
薄らぼんやり、以前に同氏の書いた書籍を読んだ記憶があるが、その題名も思い出せない。
(と、思っていろいろと調べていたら、思い出した！『日本語を取り戻す』だ！憲さん、随筆まで書いている？こちら→憲さん大学入試問題！(現国)−トランプ大統領は往年のパンクロックスなのか？https:/
どれだけ記憶力が衰えたのか！
(´Д`)=*ハァ〜
いま、自分の書いた随筆を読み返してみた。
今回読んだ『ア・ピース・オブ・警句』と全く同じ感想だった。
このオダジマ氏の発想や思想、考え方はほぼほぼ憲さんと似かよっている。
安倍や菅など政権に対する姿勢、五輪に対する考え方ほとんど同感である。
そして、どことなく天の邪鬼な立ち居振舞いも似ているのではないか？
いずれにせよ、彼の文章を読んでいると溜飲が下りる。
しかしそれ故に、彼のような考えの人は少数派なのかとも感じるし、オダジマ氏自身もそう考えている節がある。
しかし、彼はそれに怯むことなく社会に自分の意見を発信し続けるところに憲さん自身勇気を貰う。
そして、何よりも彼の武器はそのペンの技巧にある。
以前の随筆にも描いたが、「文章でメシを食う」とはこういう物書きのことを言うのだな。と圧倒される。
自身の考えることを、これだけ分かりやすく、説得力をもってさらには、ユーモアを交えて文章にする能力は卓越している。
学ぶべき物が多々あるが、その文章の怜悧さと、ユーモアはやはりその脳ミソの構造に起因しているのであろうと思うと、とても太刀打ちができないと感じる。
しかし、その中でも文章作法も憲さんに似ている部分が多くあり親近感がわくと同時に、憲さん自身もさらにこの文章道を突き進み、早くオダジマ氏のような領域に達してみたいものだと呻吟してしまう。
その文章作法の例が、まずは話を自分の過去の経験や体験に置き換えて語るところである。
これは、憲さんもよくやる手法である。
このような手法を多用する物書きを憲さんはあまり知らない。
このような、書き方は憲さんにとってはとても参考になる。
そして、もうひとつがその卓越した比喩表現である。
この比喩表現こそがオダジマ氏の真骨頂ではないだろうか？
憲さん、読んでいて何回も爆笑してしまった。
そこで、今回は自身の文筆修行も兼ねて今回読んだオダジマ氏の『ア・ピース・オブ・警句』に出てきた印象深い「比喩」を書き留めておこうと思う。
たしかに、比喩表現はその文章全体のリズムの中に組み込まれることによりその威力が十分に発揮されるものであり、このように抽出してその面白味が伝わるかは疑問だが、それでも幾分かは味わえるのではないかと思い書いてみる。
以下である。
「」内はその比喩が出たコラムの表題
※は憲さんの注釈
「誰がための新国立競技場」
※新国立競技場の建設整備費を巡る国の説明について
新国立競技場建設に関する国の説明は、まったくもって当事者意識のかけらもない、葬儀屋の挨拶みたいな空虚な文言に終始している。
「あべさんちの茶の間から見る夕日」
※安倍内閣が打ち出した少子化対策の一貫として、三世代同居を推奨する愚しい政策を批判して
水を換えないで魚だけを持ってくることはできない。
鰓呼吸のできる国民を育てたいのなら、もういちどこの国を金魚鉢みたいな閉鎖世界に戻さねばならないはずだ。
私はごめんだ。そういうことになったら真っ先に溺死したいと思う。
「置かれる場所で咲きたがる私たち」
※安倍政権の集団的自衛権行使容認を柱とする安全保障政策の変更を受け、日本の国民の「自己決定権」を忌避する風潮を憂いて
なのに、われわれは、政治に「決断」を求めた。
具体的には、「自分でない誰か」に決断を丸投げしたい欲望を抱いたということだ。
これは、「勝手に決めてくれ」という、マンションの管理組合の会合に出ることを面倒臭がってるオヤジが、中身も見ずに、委任状のすべての項目に○をつけている姿とそんなに変わらない態度だと思う。
「オリンピックの予算を蒸し返す罪」
※オリンピックの開催費用が膨張する現実を目の当たりにして
個人的な思い出を書く。
私は、偏食家で、なおかつ少食で、おまけにわりとケチだ。
なので、大勢で食事に行くとけっこうな確率でトラブルになる。
「なんだよこの『シェフの気まぐれパスタ』って、気まぐれで2000円とかバカにしてんのか？」
「いいから文句言わずに食えよ」
「そうだよ。店に入る前ならいざ知らず、もう席に着いちゃってるんだから、食事を楽しめよ」
「お前が不満なのはお前の勝手だけど、お前の言い草を聞いているとオレのメシがマズくなる」
「お前はアレだな。文化祭は出席取るのかって質問してた頃から成長してないな」
つまり、明らかにおかしいことがあっても「おかしい」と口に出して言う人間は、共同体の空気をかき乱す存在として、煙たがられるわけなのである。
この夏が終わる頃、私たちは、組織委員会の人間の口から、中間段階の五輪関連予算の見積額として、冗談みたいな数字を聞かされることになる。で、私たちはそれを受け容れる。しかも、末っ子のやんちゃ坊主にゲームソフトをねだられたクリスマス前の甘いパパみたいに嬉々として、だ。必ずそうなる。賭けても良い。
「甘利といえば、あんまりだった民主党」
※甘利内閣府特命担当大臣の金銭授受疑惑を受けた野党民主党の対応について
〈民主党は嫌いだけど、民主主義は守りたい
そんなあなたへ。すぐに信じなくていい。
野党として、止める役割をやらせてください。〉
という文字オンリーのポスターを発表した。
なんでも、参院選向けのポスターなのだそうだ。
正直な話、大変がっかりした。
こんな、斜に構えた中学二年生がどうせ振られる予防線コミコミで同級生の女子を口説いているみたいなからっきし意気地のないコピーで、いったい彼らは何を有権者に訴えようとしているのだろうか。
「あべさんが誤っても謝らない理由」
※安倍内閣の消費税率引上げ延期の、安倍首相の説明になっていない説明について
(安倍首相の)会見について幾人かの人々が指摘していたのは、
「新しい判断」
という言葉のとてつもなさについてだった。
「これまでのお約束とは異なる新しい判断」てなことで、約束を反故にすることがアリになったら、この社会を支えている信用秩序はガタガタになるぞ、というのが彼らの批判の主たる内容だ。
同感だ。
「おまえから借りてるカネだけどさ、返済期限と利子についてこれまでの約束とは異なる新しい判断で対応することにしたんでそこんとこよろしくたのむわ」
「おい。チャーシューメンが3500円って、どういうことだ？」
「はい、メニューに記載しているお値段とは異なる新しい判断で代金をご請求させていただいております。」
「先生、レポートの提出期限ですが、新しい判断で夏休み明けまで延期させてもらいます。枚数についても新しい判断で検討中です。よろしくどうぞ」
てな調子で、前言撤回が自在にできる世の中になったら、正直な人間は生きていくのが難しくなるだろう。もしかしたら、すでにそうなっているのかもしれない。
それにつけても訝しいのは、このとてつもない言葉を発明するに至った首相の内心の変化だ。
こんな、
「立ち読みじゃないよすわり読みだよ」
じみた小学5年生の頓智みたいな言い訳を、いったい脳のどの部位を活性化させれば、思いつくことができるようになるのだろうか。
「入院した中年男性はなぜおしなべて不機嫌なのか」
※著者入院中、男性患者を観察して
シンデレラがガラスの靴を脱いだ時みたいに、おっさんの魔法は、背広を脱ぐたけで、あとかたもなく解けてしまう。
「自業自得だ」と言う資格は誰にある
※フリーアナウンサー長谷川豊の透析患者差別発言を受けて
問題は、彼の考え方そのものの中にある。
書き方が悪いのではないので、これは、添削では改善することができない。例えば、「病弱な皆さんが選ぶべき道は、病弱という現状に甘んじる生き方ではなくて、病弱の行き着く先にある静かな境地への勇気ある出発です」
くらいな言い方をすれば、たしかに、炎上はしにくくなるだろうが、病人に対して「死ね」と言っている事実は変わらない。
こんな表面的な推敲で文章がマトモになってたまるかというのだ。
長谷川豊氏の文章の欠点は、言葉の選び方ではなく、彼自信のものの考え方の根本に宿っているところのものだ。であるから、誰がどんなふうに推敲してみたところで、決してマトモな文章に改めることはできない。腐ったケーキはトッピングのフルーツを替えても腐ったままだし、包装を改めても切り方を変えても食べられるブツにはならない。あたりまえだ。
「教育勅語が『愛される』理由」
※森友学園が経営する幼稚園で「教育勅語」を園児たちに暗唱させる問題で、松野文部科学大臣が「教育勅語」を擁護する発言をしたことを受けて
してみると、このたびの松野(文部科学)大臣の発言は、一旦国会の場で「憲法の理念に反する」として「排除」され「失効」した歴史的な教材(教育勅語)を、文部科学大臣の名において「憲法や教育基本法の理念に反しないような配慮」を前提にしているとはいえ、「有効」であるとして再び召還しようとした措置に見える。
(中略)
たとえばの話、腐っていることが認定されて、食べてはいけないことになった食品について、「腐敗に気をつける配慮」があれば、「食材として用いることは問題としない」てなことを保健所の所長がドヤ顔でいってのけるような世界で、果たして食卓の衛生は防衛できるものなのであろうか。
「私たちは時間切れを待っている」
※さらに、五輪関係の経費が膨大化するに至り
(五輪経費の自治体負担について)われら都民は、理由や根拠を説明されないまま、支出だけを求められている。
(中略)
いったいどういう事なのだろう。われわれは、なめられているのだろうか。
さよう。われわれは、なめられている。都民は、事後承諾の形で支出を求められている。
「えっ？」
と言ったきり、レジ前で立ち尽くしている間抜けな酔客よろしく、わたしども一千万都民は、はじめて見る伝票の中の身に覚えのないオーダーに絶句している次第だ。
あるいは、多くの都民は、注文した記憶もない不思議な色の飲み物を、テーブルに出されたからという理由で、たいした考えもなくごくごくと飲み干すのかもしれない。
「文学として味わう森友文書」
※森友学園事件で問題となった官僚の文書をして
霞が関文体で書かれたメッセージは、木で鼻をくくったような行政文書としての機能とは別に、高い読解力を備えたメンバーでだけ通用する符丁としてもっぱら行間を読み合う形式で流通している。
ラテン語を解するエリートだけが共有するアカデミアの結界と似ていなくもない世界が、霞が関文壇の周辺には広がっているわけで、あの練りに練られた悪文を自在に使いこなしている人々は、結局のところ自分たちにしかわからない日本語で何かを伝え合うことのできる、テレパシーにも似た一種の超能力の遣い手でもあるのだ。
「猛暑五輪も凍りつくおためごかしのおもてなし」
※五輪テストイベントで暑さ対策検証 朝顔の鉢植えで『視覚的にも涼しく』のニュースを受けて
ついでに言えばだか、こと「おためごかし」の態度は、もてなす側の人間が「お・も・て・な・し」などという自家中毒じみた自分語りを誇示して恥じない、今回の五輪招致イベント以来の五輪組織委の根本姿勢に通低しているもので、サービス提供側が自分たちの美意識に酔って勘違いをしているという意味で、あるタイプの懐石料理屋のひとりよがり演出と区別がつかない。客は刺し身のツマを食いにているわけではない。飾り包丁の技巧の冴えなんぞで刺し身が腐っている事実を隠蔽することはできない。
以上
いかがであろうか？
やはり、全体の本文から切り離してしまうとその比喩の妙味は薄れてしまうが、それでもその切れ味の鋭さは読み取れるのではないだろうか？
私ももっと精進してこのような気の利いた、それでいて敵に打撃を与えられる比喩を身に付けたいものである。
備忘録ついでに以下、この本の中で私が知らなかった単語とその意味を羅列しておく。
皆さんは当然知っておられることだろう。
特に憲さんは「カタカナ語」に弱いことが露呈した。
以下
この本にある憲さんの知らなかった言葉
【インテンシティ】
「強さ」や「激しさ」
【メンション】
言及
【タスク】
課された仕事。課題。
【プロトコル】
「仕様」「規定」「議定書」「儀典」
【オリエンテッド】
方向づけられた,志向性の
【アンファン・テリブル】
恐ろしいほど遠慮がなく、その発言によって両親や他人を困惑させる子供のことを伝統的に指す、フランス語の表現。
【ホモソーシャル】
恋愛または性的な意味を持たない、同性間の結びつきや関係性を意味する社会学の用語。友情や師弟関係
【ティピカル】
典型的
【ジャーゴン】
部外者には理解できない専門用語
【ネポティズム】
縁故主義
【プラグマティック】
実用的、実利的であるさま。
【アンプリファイ】
アンプは、アンプリファイヤあるいはアンプリファイア（英：amplifier）の短縮形であり、漢字表現では増幅器のことであり、（電圧や電流の波で表現されることが一般的な）信号を増幅するもののこと。
【マックスウェルの悪魔】https:/
【リビジョニスト】
歴史修正主義者
以上、しかしこのようなカタカナ語は一般的に使用されているのだろうか？
少なくとも新聞には出てこないな。
以下、知らなかったもしくは、使ったことのない日本語
【小面憎い】(こづらにくい)
顔を見るだけで憎らしいと感じること。
【詰る】
なじる
【狷介不屈】(けんかいふくつ)
頑固で、どんな状況でも意志を曲げないこと。
【治乱興亡】(ちらんこうぼう)
政治がうまくいったり乱れたり、国が興ったり亡びたりすること。
【韜晦】(とうかい)
自分の本心や才能・地位などをつつみ隠すこと。
【三百代言】(さんびゃくだいげん)
１ 代言人の資格がなくて他人の訴訟や談判などを扱った者。もぐりの代言人。また、弁護士をののしっていう語。
２ 相手を巧みに言いくるめる弁舌。詭弁 。また、それを用いる者。
【希死念慮】 (きしねんりょ)
死にたいと願うこと。
自殺願望と同義ともされるが、疾病や人間関係などの解決しがたい問題から逃れるために死を選択しようとする状態を「自殺願望」、具体的な理由はないが漠然と死を願う状態を「希死念慮」と使い分けることがある。
【掣肘】(せいちゅう)
わきから干渉して、人の自由な行動を妨げること。
【仕儀】 (しぎ)
物事の成り行き。事の次第。特に、思わしくない結果・事態。「このような仕儀に立ち至り面目次第もございません」
【大丈夫】
立派な男の子、益荒男のこと
【規矩】(きく)
�� コンパスとさしがね。転じて、寸法や形。
【嗜癖】(しへき)
ある特定の物質や行動、人間関係を特に好む性向である。
【松根油】(しょうこんゆ)
https:/
以上。
大変、言葉の勉強にもなった。
この本の「あとがき」に著者はこう書いて締め括っている。
大丈夫、われわれはやり直せる。日本もきっと立ち直ると思う。大丈夫だ。ありがとう、ありがとう。
思わず目頭が熱くなった。
たしか、この本は図書館で数十人の順番待ちであった。
それだけ、彼の主張を支持する読者がいるのであろう。
憲さんと同じように！
そして、憲さんの後にも順番待ちしている人がいる。
早く返しに行かなくては！
どーよっ！
どーなのよっ？
※画像は本著
※小田嶋隆の「ア・ピース・オブ・警句」 〜世間に転がる意味不明
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