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2021年05月16日06:19
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憲さん随筆アーカイブス 「賊軍」よ、永遠なれ！ 安倍晋三の尊崇する吉田松陰とは何者なのか？松陰著『幽囚録』を読む
※画像は長州テロリストの親玉、吉田松陰。異様な面構えである。
※憲さん随筆アーカイブス
この、随筆は2018年1月25日に書いたものの加筆修正版です。
※今回の随筆は憲さん会心の出来です。ちょっと長くなりましたが、是非暇なとき読んでくださいね。
第11代将軍徳川家斉の娘溶姫が前田家に輿入れの際に造られた赤門で有名な加賀前田家百万石の上屋敷跡にある東大本郷キャンパスに、富山藩の足軽の息子から成り上がり安田財閥を創設した安田善次郎が東大に寄附した収容人数千人ちょっとのチンケな講堂、安田講堂がある。
参考
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【安田講堂】
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1968年の東大闘争安田講堂攻防戦の舞台になったところでもある。
その講堂の裏にその胸像はひっそりと建っている。
東京帝国大学初の日本人理学部教授に就任し、理科大学長を経て、東京帝国大学総長にまで上り詰めた山川健次郎の像である。
参考
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私は彼の本業である物理学における功績はよく存じあげないが、彼がかの会津藩白虎隊士であり、慶応4年8月23日から9月22日までの一ヶ月にわたる戊辰戦争における最激戦、会津若松城籠城戦を戦い抜いた会津藩士というだけで、その存在に一目おかざるを得ない。
参考
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【山川健次郎】
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さらに、彼がその経験を基に監修した『会津戊辰戦争史』はその戦いの凄まじさを伝えるものであり、現在においてもその一級の資料価値に揺るぎはない。
参考
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【会津戊辰戦争史】
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2018年1月22日、都心にも大雪が降った日に召集された第百九十六通常国会で安倍首相の施政方針演説が行われ、その冒頭この山川健次郎が引き合いに出されたのである。
短いので引用しよう。
安倍曰く
「百五十年前、明治という時代が始まったその瞬間を、山川健次郎は、政府軍と戦う白虎隊の一員として、迎えました。
しかし、明治政府は、国の未来のために、彼の能力を活かし、活躍のチャンスを開きました。
『国の力は、人に在り。』
東京帝国大学の総長に登用された山川は、学生寮をつくるなど、貧しい家庭の若者たちに学問の道を開くことに力を入れました。女性の教育も重視し、日本人初の女性博士の誕生を後押ししました。
身分、生まれ、貧富の差にかかわらず、チャンスが与えられる。明治という新しい時代が育てた数多(あまた)の人材が、技術優位の欧米諸国が迫る『国難』とも呼ぶべき危機の中で、我が国が急速に近代化を遂げる原動力となりました。」
参考
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安倍はこの間の施政方針演説に歴史上の人物や歴史的な事柄を引き合いに出すのが気に入っているみたいで、一昨年の第百九十回通常国会においては、憲さんの大好きな幕末期の悲劇の幕臣、小栗上野介忠順を引き合いにだした。
参考(産経ビズより)
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参考
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第百九十回通常国会安倍晋三施政方針演説冒頭
以下、引用。
一 はじめに
（未来へ挑戦する国会）
開国か、攘夷か。
百五十年前の日本は、その方針すら決められませんでした。終わらない議論、曖昧な結論、そして責任の回避。滅び行く徳川幕府を見て、小栗上野介は、こう嘆きました。
「一言以て 国を亡ぼすべきもの ありや、どうかなろう と云う一言、これなり。幕府が滅亡したるは この一言なり」
国民から負託を受けた私たち国会議員は、「どうにかなる」ではいけません。自分たちの手で「どうにかする」。現実を直視し、解決策を示し、そして実行する。その大きな責任があります。
経済成長、少子高齢化、厳しさを増す安全保障環境。この国会に求められていることは、こうした懸案に真正面から「挑戦」する。答えを出すことであります。
批判だけに明け暮れ、対案を示さず、後は「どうにかなる」。そういう態度は、国民に対して誠に無責任であります。是非とも、具体的な政策をぶつけあい、建設的な議論を行おうではありませんか。
引用終わり。
参考
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こんな、安倍の野党批判の引き合いにされた小栗忠順に同情する。
ちなみに、小栗は憲さんの愛してやまない幕末期の幕臣である。
新政府軍により非業の死を遂げている。
参考
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【小栗忠順】
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(´Д`)=*ハァ〜
話をもどすが、山川健次郎の話は、今回は安倍が鳴り物入りで推し進める「明治150年」を意識して、それも施政方針演説冒頭での演説である。
首相の施政方針演説は翌日、各新聞社一斉に社説が掲載される。
その中でこの山川健次郎の部分に言及した社説が毎日新聞にあった。
引用しよう。
毎日社説曰く
「昨年までの演説では野党に対し『ただ批判に明け暮れ』などと挑発を繰り返してきた首相(第百九十回通常国会安倍晋三施政方針演説、小栗忠順に触れた部分)だが、今回はそれが影を潜めた。敵か味方かに固執する従来の政治手法では、少子高齢化は乗り越えられまい。
首相は演説冒頭、150年前に会津の白虎隊で新政府軍と戦った後、東京帝国大総長などに登用された山川健次郎のエピソードを紹介した。山口県選出で長州の立場から明治維新を語ることの多い首相があえて元会津藩士の活躍に触れたのは、野党との融和姿勢の表れであろうか。」
Σ(￣□￣;)ハッ！
「野党との融和施政の表れ？」
(´Д`)=*ハァ〜
甘いっ！
毎日新聞は！
読みが全然甘いっ！
確かに安倍の施政方針演説は山川を主語とし、
「山川は白虎隊士として明治を迎えた」
「山川は貧しい若者たちに学問の道を開くことに力を入れた」
「山川は、日本人初の女性博士の誕生を後押した」
と言ってはいるが、安倍がいいたいのはここではない。
安倍が声を大にしていいたいのは「明治」「明治政府」が主語の部分である。
つまり、
「明治政府は、山川の能力を活かし、活躍のチャンスを開いた。」
「明治は数多(あまた)の(優秀な)人材を育てた。」
「明治政府が育てた人材が我が国が急速に近代化を遂げる原動力となった。」
と。
すなわち「明治礼賛」なのである。
もっとこの施政方針演説の行間を凝視すると安倍の言いたい事が滲み出てくる。
行間曰く
「あの会津の『賊軍』出身の山川を登用した、薩長が作り上げた明治政府はなんと度量が広いのだ。」
「その『賊軍』を登用して、日本を近代化した薩長の作り上げた明治は素晴らしい！」
「その薩長が牛耳り作り上げた日本帝国、そしてその帝国陸軍、海軍が突き進んでいった明治『維新』〜敗戦までの日本帝国の侵略戦争の歴史は間違ってなかった」
こう、言っているのである。
ここには、「野党との融和」など一ミリたりとも考えていない。
安倍は「賊」でも使えるものは何でも使う。
そして安倍政権に逆らう者は「賊」のレッテルを貼り徹底的に殲滅すると言っているのである。
安倍とは徹底した「官軍」「賊軍」史観であり、薩長史観によって凝り固まった歴史感の持ち主である。
それが、証拠に安倍の尊敬する人物が長州テロリスト集団の巨魁、吉田松陰であり、安倍の名前晋三の「晋」は吉田松陰の忠実な子分でありテロリストの頭目高杉晋作からとった字だということをみても明らかだろう。
参考
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「こんにちは、安倍晋三です」
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安倍は以前岩手の選挙区に入って小沢一郎の対抗馬の選挙応援演説でこう言ったそうである。
「私の家系は官軍ではない。祖先は岩手県出身だから賊軍だ」と。
安倍の母方の祖父は言わずと知れたA級戦犯被疑者で後に首相となり、「昭和の妖怪」と呼ばれた岸信介だが、父方の祖父が衆議院議員の安倍寛であり、その安倍一族は平安の頃に東北で起こった前九年の役で負けて賊軍となった安倍貞任、宗任の末裔なので、安倍も「賊軍」だというのである。
参考
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【安倍氏 (奥州)】
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【安倍寛】
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何言ってるんだよ！こいつ。
長州出身で名前を高杉晋作からとった輩が！
あきらかに、東北に対する選挙目当てのリップサービスである。
このように、安倍の頭の中には「官軍」「賊軍」意識で満たされており、当然ながら「私は官軍である」という意識が人一倍つよいのである。
では、今回の安倍の施政方針演説で引き合いに出された山川健次郎とはどういう人物なのだろうか？
山川健次郎は会津松平家の白虎隊士、戊辰会津戦争終結後、会津若松城籠城者として猪苗代に送られ、屈辱の日々を送る。十月に猪苗代脱出に成功し越後に潜む。越後では和漢の書籍を耽読して過ごす。
明治三年一月、松平家が斗南藩三万石として再興が許されると、健次郎の兄、浩が芝増上寺の宿坊徳水院に「斗南藩学」という名の藩校を開いたのを聞き、ここで学業を続け英語を身につける。
同年八月に会津藩士が下北の地に移住したことを受けて「斗南藩学」も閉鎖。健次郎は旧幕臣で一時会津援軍でもあった沼間守一の英学塾に移り、英語、数学、世界地理などを学ぶ。
と、ここまで健次郎は明治新政府の世話などほとんども受けることなく、厳しい環境の中で貧しさに耐えながら必死に学問を修め、己の力でその基礎を身に付けていったのである。
(※越後行きのときに会津藩公用方秋月悌次郎の古い知り合いの長州藩士奥平謙輔の口利きがあったのと、越後と斗南藩学の間に長州藩士で新政府参議の前原一誠の書生になっていた時期があるようだが…。
ちなみに、前原一誠も後、萩の乱の首謀者として処刑された、いわゆる「賊」である。)
参考
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【前原一誠】
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その健次郎に明治三年11月に北海道開拓使次官、薩摩藩出身の黒田清隆から海外留学の話がきて、アメリカエール大学へとむかい明治四年の元旦に日本を離れた。
しかし、この留学期間中も明治政府の成績優秀者以外官費支給停止という理不尽な対応に遭うなかで同級生の伯母、ハンドマン夫人の援助を受けてエール大学理学部を卒業して帰国したのである。
帰国してからの山川健次郎は知っての通り、東大で「白虎隊総長」と渾名されるまでに上り詰めたのである。
山川は、会津敗戦と「賊軍」の悔しさをバネに、赤貧のなか、苦学し、そして終生信義に生きた硬骨漢なのである。
その彼が平成の世も終わろうとするこの時期に、長州出身の「官軍」意識剥き出しの薩長史観満載の政治屋、安倍首相の飯の種(演説)に引っ張り出されたのだからたまったものではない。
歴戦の白虎隊総長も草葉の陰で泣いているのではなかろうか？
同情の念を禁じ得ない。
では、最後にこの安倍晋三なる人物が尊敬してやまない長州若輩衆をテロリストへと洗脳した吉田松陰についてみていこう。
安倍は吉田の遺書『留魂録』がたいそうお気に入りらしいが、松陰が野山獄で著した『幽囚録』なる著作がある。
松陰の『幽囚録』にはこう書いてある
現代語訳する
日は昇らなければ沈み、月は満ちなければ欠け、国は繁栄しなければ衰廃する。よって、国をよく保つ者は、有る領土をむなしく失わないだけではなく、ない領土を増やすのである。今、急いで軍備を整え、軍艦の計画を持ち、大砲の計画も充足すれば、すなわち北海道を開拓して諸侯を封建し、間に乗じてカムチャツカ半島とオホーツクを取り、琉球を説得し謁見し理性的に交流して内諸侯とし、朝鮮に要求し質を納め貢を奉らせていた古代の盛時のようにし、北は満州の地を分割し、南は台湾とルソン諸島を治め、しだい進取の勢いを示すべきだ。その後、住民を愛撫し、国土を養い、辺境の守りに気を配って、つまり堅固によく国を維持するといえるのだ。そうでなく諸国民が集まって争っている中で座りこみ、うまく行動することがなければ、国は㡬らかのうちに廃れるのだ。
全文はこちら
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読むだけで反吐(ヘド)の出そうな侵略思想である。
吉田は幕末において、すでに朝鮮半島、満州、台湾やフィリピンまで全部日本の領土にするべきだと喚いていたのだから驚くべきである。
こんな正気の沙汰とは思えない教育を萩の松下村塾で行っていたのだからたまったものではない。
そして、吉田の教えは長州の下級藩士に脈々と受け継がれ、そしてこやつらが、道理もへったくれもない「尊皇攘夷」なる屁理屈を掲げ、テロの暴力を背景に徳川幕府から政権を簒奪した。
なんとも嘆かわしい！
そして、その吉田の思想は長州藩閥が陸軍を握ることにより、さらにその狂暴さと狂気が増幅され脈々と受け継がれ、かの「大東亜共栄圏」構想へと繋がっていったのである。
しかし、その思想も1945年の敗戦で命脈がつきたと思いきや、未だ薩長史観と共に現在の長州出身の首相に脈々と受け継がれているのである。
かくなる、侵略主義者吉田松陰を尊崇してやまないと公言して憚らない首相をわれわれは現在国のリーダーとして戴いているのである。
そら恐ろしい限りである。
このような御仁が進めようとする「憲法改正」がどんなものかも、言わずもがなである。
私たちは早くこの安倍を政権から引きずり下ろさなければ、それこそいつか来た道であろう。
私たち国民の良識がいまこそ問われているとは私の考えすぎだろうか？
どーよっ！
どーなのよ？
追伸・施政方針演説の各論についての批判は各社社説に譲ります。
※参考文献
�〇┿錙愿豕�人』今月号
特集・明治を支えた幕臣・賊軍人士たち
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これは東京新聞で宣伝してて面白そうだから購入しました。
その中の「思想・学問」の章に「会津籠城四人組」という稿があり、その一人が山川健次郎でした。
�◆愨鰻海両赦損法挌焼０賤�、保阪正康対談集
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これは同僚に紹介されて丁度図書館で借りて読んでいたら、安倍のあの施政方針演説です。
書かずにはいられませんでした。
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