mixiユーザー(id:4535387)

2021年04月10日15:07

30 view

憲さん、日本三大廓悪噺の一つ、幻の『突落し(つきおとし)』を初めて聴く!

フォト


今は特殊浴場街となってしまった吉原だが、昭和33年に売春防止法が施行されるまではお上公認の遊郭であったのは周知の事実である。

その、遊郭だった頃の吉原は鉄漿溝(以下、お歯黒どぶ)という堀に四方を取り囲まれていた。初期の頃のお歯黒どぶは、5間(約9m)もの幅があり(後期には幅約2間=3.6mとなった)、汚水が流れていて遊女たちの逃亡阻止という役割もはたしている。ここには非常用のはね橋は架けてはあったものの、普段は上がっているのではね橋で逃げることは不可能だった。堀の内側には塀があり、その向こうに約三千人の遊女がいたといわれている。


現在、このお歯黒どぶの遺構が1ヶ所だけ残っている。

それが、こちら。

http://kaeru.moe-nifty.com/ankyo/2009/08/post-d291.html

「お歯黒どぶ」の名の由来については、遊女の使用したお歯黒を流すのでという説やお歯黒のように黒いのでという説があるが、いずれにせよ汚いドブの堀だったようである。

ちなみに、宮木あや子さんの小説『花宵道中』の映画にもなった第一部の主人公朝霧はこのお歯黒ドブに身を投げて自害するのだが、本当にこの汚いドブに身を投げた遊女がいたかは疑問である。 

参考

【花宵道中】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E8%8A%B1%E5%AE%B5%E9%81%93%E4%B8%AD

このドブ、当然ながら江戸落語の廓噺に登場しており、一番有名なのは『首ったけ』ではないだろうか?

この噺は古今亭志ん生の録音で聴いたことがある。

こちら

【古今亭志ん生『首ったけ』】
https://youtu.be/6Xir2Rl9YSg

噺のあらすじ

https://senjiyose.com/archives/3913

この噺は志ん生から息子の十代目馬生、志ん朝に伝わったが、今では高座にかける噺家はほとんどいない。

このお歯黒どぶを題材にした大変珍しい噺を今朝聴いた。

毎度のことであるが土曜日朝4時半から放送しているNHKの「日本の話芸」である。

今朝は入船亭扇遊師匠の「突落し(つきおとし)」である。

扇遊師匠は故入船亭扇橋師匠のお弟子さんである。

落語評論家の飯島友治氏

※この人は、かの落語評論家の大御所アンツルこと安藤鶴夫に苦言を呈することができた数少ない人物。
参考→https://kogotokoub.exblog.jp/24371729/

は「突落し」「居残り佐平次」「付き馬」を後味の悪い「廓噺の三大悪」と呼んでいる。

噺に世間一般の道徳観念を持ち込むのも野暮な話である。

この、三大悪の廓噺の内「居残り佐平次」「付き馬」は今でもよく高座にかかるし、憲さんも大好きな噺である。

「居残り佐平次」は川島雄三監督の撮ったフランキー堺主演の傑作映画『幕末太陽傳』の骨格的素材になっている。

参考

【幕末太陽傳】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%95%E6%9C%AB%E5%A4%AA%E9%99%BD%E5%82%B3

【古今亭志ん朝『居残り佐平次』】
https://youtu.be/FbCHSB2ozcw

また、「付き馬」はこれまた傑作で憲さんは古今亭志ん朝師匠のをTBSテレビの「落語特選会」で観て深夜に腹を抱えて笑った記憶がある。

こちら

【古今亭志ん朝『付き馬』】
https://youtu.be/mXDDOs7vl2A

そして、今回初めて聴いた『突落し』である。

この「落語通」として知られる憲さんですら聴いたことがなかった噺。どんな噺なのか?

以下、噺のあらすじである。

https://senjiyose.com/archives/5124

確かにこれはひどい!

「居残り佐平次」や「付き馬」はあくまでも廓に対して頭脳戦を挑み、実力行使なしにお銭(あし)を支払わずに無銭飲食するのに対して、この「突落し」は廓の若い衆に対してお歯黒どぶに突き落とすというひどい実力行使に出ている。

これは、普通に考えれば無銭飲食に加え若い衆への暴行、さらに今回の扇遊師匠の噺では若い衆の煙草入れまで失敬してきて実刑クラス、下手をしたら「殺人未遂」となる犯罪である。

この噺、古今亭志ん生は「あんな、ひどい噺はやれないね」と言って生涯手掛けなかったという。

志ん生は若い頃はよく吉原遊郭に通ったという。その愛すべき吉原への愛着から、弱い立場の廓の若い衆をひどい目に合わせるストーリーに義憤を感じ、また小見世の揚げ代を踏み倒すようなケチな料簡ならの根性が江戸っ子らしくなく許せなかったのであろう。

参考(三遊亭圓生の音源付き)

https://rakugo-ohmineya-com.cdn.ampproject.org/v/s/rakugo.ohmineya.com/%E7%AA%81%E3%81%8D%E8%90%BD%E3%81%A8%E3%81%97%EF%BC%88%E6%A3%9F%E6%A2%81%E3%81%AE%E9%81%8A%E3%81%B3%EF%BC%89%EF%BD%9E%E4%B8%89%E9%81%8A%E4%BA%AD%E5%9C%93%E7%94%9F%E3%83%BB%E7%AC%91%E7%A6%8F%E4%BA%AD/amp/?usqp=mq331AQSKAFQApgBl_LcpYzP2NFfsAEg&_js_v=a6&_gsa=1#referrer=https%3A%2F%2Fwww.google.com&csi=1&share=https%3A%2F%2Frakugo.ohmineya.com%2F%25E7%25AA%2581%25E3%2581%258D%25E8%2590%25BD%25E3%2581%25A8%25E3%2581%2597%25EF%25BC%2588%25E6%25A3%259F%25E6%25A2%2581%25E3%2581%25AE%25E9%2581%258A%25E3%2581%25B3%25EF%25BC%2589%25EF%25BD%259E%25E4%25B8%2589%25E9%2581%258A%25E4%25BA%25AD%25E5%259C%2593%25E7%2594%259F%25E3%2583%25BB%25E7%25AC%2591%25E7%25A6%258F%25E4%25BA%25AD%2F

確かに憲さんもこの噺は「後味の悪さ」を感じずにはいられなかった。

なので、扇遊師匠もさげに「こらから、品川へ行ってバカなしくじりをするという、お客様のお暮らしには何の役にも立たないという『突落し』でした。」とさげて「因果応報」を匂わせている。

しかしこの噺、扇遊師匠がとても楽しそうに話すのが救いである。

扇遊師匠の噺はどれも楽しげでいい。

しかし、落語にはこれ以上に後味の悪い噺も存在する。

それが「宮戸川」であるが、これも現在では「通し」で聴くのは至難であろう。

参考

【宮戸川】
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%AE%E6%88%B8%E5%B7%9D

これについてはまた別の機会に述べたいと思う。

このように、憲さん後味が悪かろうがよかろうが、江戸落語の演目を全て聴くのが一生の夢である。

その夢の実現に一歩近づけてくれた入船亭扇遊師匠に感謝!

これが、扇遊師匠の幻の噺「突落し」

https://youtu.be/3JmdKOODMVE

どーよっ!

どーなのよっ?

※画像は入船亭扇遊師匠
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する