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2021年01月12日21:55

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来たるべき“ワールド4”シナリオの世界

「たとえ明日世界が滅亡しようとも今日私は林檎の木を植える」という言葉が私は嫌いだ。
この言葉を残したマルティン・ルター(※注1)が当時ユダヤ人排斥を訴えていたからという理由ではない。

一見エモーショナルでキャッチーに響くこのルターの名言が今流行りの「セカイ系アニメ」の中で発せられたのならば私は苦笑いで誤魔化すだけだが、今現在の現実の世界において近い将来の地球環境の真の姿(シナリオ)を知ってしまった者が真面目に噛み締めるのであれば、あまりにも軽々しく砕けて溶けて消滅してしまうな、白々しい虚無感と絶望感を覚える言葉だからである。

1972年にローマクラブによって発表された「成長の限界」(※注2)は当時ベストセラーにまでなった地球環境の危機的問題の予測レポートであったが、その後の経済成長とテクノロジー神話(IT急発展含)に浸って殆ど顧みられることもなくなり次第に人々の記憶からも遠ざかった。
しかしそのレポートでは僅か60年〜100年後先には地球全体の環境(人類の活動を持続する為の需要と供給のバランス)が破綻に至り、現代文明のオーバーシュート(崩壊)が始まる事をMITによる当時の最先端コンピュータープログラム「ワールド1」(※注3)によってグローバル且つ多角的にシミュレートされていた。
地球環境の持続可能性(サスティナビリティ)について初めて科学的にシミュレートされたレポートでもあった。

だから数年前スウェーデンの環境活動家:グレタ・トゥーンベリが生まれたての彗星のように現れた時、私は一種の身震いを感じ、この地球の未来に一筋の希望を持った。
それは私が彼女と同じ10代半ばの子供の時初めて「成長の限界」を読んだ時の衝撃の記憶がありありと蘇ってきたからだった。そしてもしかしたら彼女なら本当に林檎の木を植える事が出来るのかも知れないと直感した。

地球の将来について彼女達若い世代が現在受けている衝撃は、これから老年に向かう私や私の同世代の感覚(深刻さ)の比ではない事は容易に想像できる。

「成長の限界」は我々人類つまりホモ・サピエンスの脳の特徴(意識の限界)の説明から始まる。そして人間の脳が下す判断(実行)のスピードは(その意識の限界によって)、
残念ながら簡単な数学の計算式が導き出した答えにさえ到底間に合わないのである。

世界中の優秀な科学者達は決してこの50年間怠けていた訳では全くない、寧ろその逆で常に警鐘を鳴らし続けてきた。

「ワールド1」の後も、世界中の叡智を結集し、その都度最先端のスーパーコンピューター(以下スパコン)による解析=すなわち「ワールド2」、「ワールド3」とプログラムを更新しシミュレートの精確性と具体性を増していった。
現在のIPCC(※注4)発表に関わるWMO(※注5)による気象観測データ(CO2濃度含)も当然「ワールド3」のプログラムに組み込まれている筈である。

新型コロナウィルスの影響で開催が今年の11月に一年間延期されたCOP26(※注6)に向けて、おそらく日本のスパコン“富岳”も導入され世界中で「ワールド4」の解析を進めているに違いない。

はたしてCOP26でどんな近未来の現実が世界に向けて発信されるのか、そして「ワールド4」シナリオのレポートが一体いつ発表されるのか、それとも一般には伏せられるのか?私にとってはコロナ禍以上に胸のつまる思いである。



注1:
16世紀のドイツの神学者=宗教改革(キリスト教プロテスタント派の創始者)

注2:
民間シンクタンク「ローマクラブ」が資源と地球の有限性に着目しMIT(マサチューセッツ工科大学)のデニス・メドウズ教授を主査とする国際チームに委託して、システムダイナミクスの手法を用いてとりまとめた研究で、1972年に発表された。
「人口増加や環境汚染などの現在の傾向が続けば、100年以内に地球上の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らしている。

注3:
注2の地球環境の近未来の状況をシステムダイナミクス理論により解析する為の仮想地球のコンピュータープログラム

注4:
IPCC:国連気候変動に関する政府間パネル

注5:
WMO:世界気象機関

注6:
COP26:第26回 国連気候変動枠組条約締約国会議

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