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2021年01月09日07:50

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声劇台本を作成しました!「生き抜く活動。」前編

「生き抜く活動。」前編




※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※



こちらの作品はシリーズ物となっています。
一作目
「生きる活動。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1967560293&owner_id=24167653

二作目
「生き続ける活動。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973207660&owner_id=24167653

三作目(最終作)
「生き抜く活動。」前編(本作)

「生き抜く活動。」後編
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1978066294&owner_id=24167653

こちらの作品単品でも楽しんでいただけるよう書いていますが、
もし良ければシリーズ内の他の作品と併せて見ていただけると幸いです。




想定時間

20分程度(前後編合わせて45分程度)




配役

男性1:女性2




登場人物

夜雨 恕(やさめ しのぶ):大学一年生の男性。草撫 和子(くさなで かずこ)と同じ大学に通う。改善気味だが、基本的には自己評価が低く無気力。
この人物を演じる方は、その前に下記※欄を読んでください。


古田 つとめ(ふるた つとめ):大学一年生の女性。草撫 和子の昔からの親友。たらこパスタが好きで炭酸ジュースが飲めない人。
この人物を演じる方は、その前に下記※欄を読んでください。


草撫 和子(くさなで かずこ):大学一年生の女性。この世代の人間にしては珍しく「〜のよ」「〜わよ」といった女性口調で喋る。古田 つとめとは無二の親友。






※ 台本本編内に以下の人物表記がありますが、それぞれの状態及びどなたが演じるかは記述に従ってください。



恕(しのぶ)…恕(しのぶ)が心の中でつとめに対し喋っている状態。恕(しのぶ)役の方が演じてください。

恕【しのぶ】…恕(しのぶ)の肉体を使って恕(しのぶ)が喋っている状態。恕(しのぶ)役の方が演じてください。

つとめ…つとめの霊体が喋っている状態。つとめ役の方が演じてください。

恕【つとめ】…恕(しのぶ)の肉体を使ってつとめが喋っている状態。つとめ役の方、若しくは恕【つとめ】役専用に女性役を設けてその方が演じてください。





本編


恕【しのぶ】「ふー……。」(困ったように溜息を吐く)

つとめ「うっ、ぇぐ、ぇぐっ…」(小さな声で呻き泣く)

恕【しのぶ】「…つとめ、その。今日はお互い大変だったな。」

つとめ「……ごめんね…私のせいで、恕(しのぶ)君まで怒鳴られて。」

恕 【しのぶ】「いやそれは別に良いんだ。」

つとめ「……どうして信じてくれないんだろうね。」

恕【しのぶ】「両親か?…そりゃあな。娘が事故で死んで二年以上経って、多分そろそろ娘の死を受け入れつつあっただろうところに『事故直後からあなた達の娘さんの魂が俺に憑りついています』とか言い出した奴が現れたらな。冷静に受け止められんし、簡単に信じられんだろ。」

つとめ「でもさ、体借りて私がちゃんと話したじゃん。明らかに私しか知らない事とか喋ったし、態度とか口調とか仕草そういうのでさ、親だったら中身が本当に自分の娘なのかどうなのかって分かるでしょ。」

恕【しのぶ】「いやぁ、それは冷静ならな。とにかく冷静じゃないんだろ。」

つとめ「……甘く考えてたなあ。最初は驚くにしても、話していれば最後は分かってくれるって。」

恕【しのぶ】「…俺もまさか最後まで全く聞く耳持たれないまま、追い返されるとは思ってなかったわ。そのあたり抜きにしても俺ってお前の親にとっては、娘助けようとして大けがした人間で…いやまあ結局助けられなかったわけだけど、それでももっと丁寧に扱われるもんだと。」

つとめ「残念ながら君はもう親にとっては、ただの不謹慎な変質者なんだろうね。」

恕【しのぶ】「あーっ、くっそがよお。」

つとめ「……これさ、和子(かずこ)にも言わないとだめなのかなあ。」

恕【しのぶ】「……俺はだめとは思わないがな、俺は数日前のお前に、何があっても絶対ちゃんと両親と草撫(くさなで)さんに自分が俺に憑りついてこの世に居るって言うから弱音吐いたら叱ってくれって頼まれてんだよ。ちゃんと言わないとだめだって少なくともあの時のお前は真剣に思ってたんだろ。」

つとめ「だってさあ和子(かずこ)、君に体借りた状態で再会してまた友達になったわけだけど、このままずっとずっと中身が私だって知らないで一緒に居るって、それはもう騙してる事になるじゃん。せっかく生きてた頃の友達とまた友達になったのに、ずっとそうやって騙し続けるのっておかしいじゃん。」

恕【しのぶ】「あんな良い人二年も騙し続けてるんだもんな。」

つとめ「……言わないと、だめだと思う。」

恕【しのぶ】「ま、言ってちゃんと信じてもらえれば、その方が良いのは間違いないわな。両親だって今はあんなでも連絡先は渡せたんだ。いつか向こうから何か言ってくるような都合の良い展開もあるかもしれん。」

つとめ「…頑張る。明日、大学に行って言う。前期の試験は終わってるけど、和子は確か集中講義で大学行くっていってた筈だから。」

恕【しのぶ】「おう。」







和子「お待たせ!ごめんね、わざわざ大学来てもらって。」

恕【つとめ】「ううん、特にする事もないし、草撫(くさなで)さんとお昼食べた方が美味しいからさ。」

和子「えへへ、私も夜雨(やさめ)君と食べた方が美味しいわ。今日はどんなパン?」

恕【つとめ】「胡桃(くるみ)アンパンだって。ほら、美味しそうでしょ。」

和子「わあ、良いわね。おいしそう!どこで見つけたの?」

恕【つとめ】「駅の近くに新しくできたパン屋さんで見つけたんだ、良いでしょ!」

和子「あ、あそこ。見た事あるわ。今度私も行ってみようかしら、お弁当作るの毎日はやっぱり大変だし。」

恕【つとめ】「狭い割には色んなの置いてあって良かったよ。結局買わなかったんだけど、チョコチップメロンパンとかも」

恕(しのぶ)「おい、つとめ。」

つとめ「……分かってるって。食べ終わったらちゃんと言うよ。」

恕(しのぶ)「お前は。」





和子「……ふう、ごちそうさまでした。」

恕【つとめ】「ご馳走様でした。…………ねえ、草撫(くさなで)さん。」

和子「どうしたの?」

恕【つとめ】「……(深呼吸)……あのね、大事な話があるんだ。」

和子「…うん。」

恕【つとめ】「あの、そのね……古田つとめ…って、覚えてるよね。」

和子「うん。私の友達。」

恕【つとめ】「ごめん、多分途中で色々言いたくなると思うけど…俺が『終わり』って言うまでは何も言わずに聴いててほしいんだ。」

和子「……分かった。ちゃんと聴いてるわ。」

恕【つとめ】「ありがとう。実は、その……信じられないかもしれないけど、実はね。俺……私がその、古田つとめなんだ。あ、いやその。古田つとめは死んじゃった後、夜雨恕(やさめ しのぶ)の体に憑りついたんだ。それで恕(しのぶ)君が退院した後、私、を、生きてた頃通ってた高校に連れていってくれて……そこで私に体を貸してくれて。そこで草撫…和子と再会したんだよ。こんな事、信じてもらえるか分からなかったし、信じてもらえなくて色々こじれちゃうのが怖くって言えなかったけど、今まで和子と会ってきたのは全部私。恕君が体使わせてくれて。……その、いきなり言われてもって感じだと思うけど……あ、終わり。ごめん。聴いてくれてありがとう。」

和子「……本当なのよね?」

恕【つとめ】「本当だよ。」

和子「……そっ…か……そっか。その、ごめんなさい。えっと、その話だと、例えば今は本来の恕君はどうしてるの?」

恕【つとめ】「私が貸してもらってる時は寝てる事もあるけど、今は私の中で起きてる。」

和子「そっか……私の事、何か言ってる?」

恕(しのぶ)「大変な思いをさせてしまってすまない、と伝えてくれ。」

つとめ「うん、分かった…うん。」

恕【つとめ】「大変な思いをさせてしまってごめんなさいって、今言ってた。」

和子「……そんな話、私はどうしたら。」

恕【つとめ】「…。」

つとめ「黙ってた方が良いよね…?」

恕(しのぶ)「そうだな。」

和子「……うぅん…。」

つとめ「この間(ま)が怖いんだよ…それなら良かった、嬉しい、やった、みたいな事言ってくれたらって思うけど、そんな感じじゃないよね…。」

恕(しのぶ)「そんなお気楽な雰囲気じゃないな。」

和子「……あのね……っ…あ!」

恕【つとめ】「え?…あ、もうこんな時間!」

和子「えっと…ごめんなさい、私次の講義があるから……信じてないわけじゃないのよ。ただ…ちょっと冷静になるまで待って?ちゃんとお話できるようになるから。その時私から連絡する。」

恕【つとめ】「…うん、ごめんなさい。ありがとう。」

和子「私の方こそ…ええ、行ってくるわね。」








恕【しのぶ】「おい、つとめ。いつまでへこんでんだ。もう家着いたぞ。」

つとめ「…うん。」

恕【しのぶ】「今日もすっげえ疲れたわ…もう横になる。」

つとめ「ねえ恕君、どう思う?」

恕(しのぶ)「まー、そりゃそうだって感じだろ。すぐ信じろってのも無理な話だし、信じるなら信じるでどうして今まで言ってくれなかったんだってなるしな。」

つとめ「それは、言っても信じてもらえるか分からないんだから言いづらいでしょ?普通に考えてさ……もう勘弁してよ。友達が生きて…生きてはないけど、ここに居るんだからさ、普通に喜んでよもう。怖いんだよ……私から連絡しちゃだめだよね?」

恕(しのぶ)「だめに決まってんだろ。下手に刺激しても悪い方にしか行かねえよ。」

つとめ「もうやだ……言わなければ良かった。」

恕(しのぶ)「両親と違って草撫さんは怒鳴ったり罵倒してきたりしてこなかったろ、冷静になるまで待てって。普通に考えて友達が生きてたんだ。色々複雑でも冷静になれば嬉しいってなるに決まってる。」

つとめ「それは信じてくれるならでしょ?」

恕(しのぶ)「まあな。」

つとめ「変な噂流れたらごめんね。」

恕(しのぶ)「あの人が変な噂流すわけないだろ。」

つとめ「……あはは。……まあね、そうなんだけどね。」











つとめ「……うぅ、まだかな、講義終わるの…。」

恕(しのぶ)「たしか16時半までだろ。ここまでと比べたらもう少しだ。」

つとめ「うぅぅ……やっと昨日連絡が来たのは良いけど、来てから会う約束の時間までがまた長い……ああ、うぅ。」

恕(しのぶ)「連絡が来るまでの一週間は俺にとっても地獄だったが、お前にとっては俺の比じゃなかっただろうな。」

つとめ「ああ、怖い怖い怖い怖い。嫌だ。何言われるんだろ、嫌だ怖い怖い怖い怖い……友達止めるとかもう連絡取らないとかそんな事にさ……ああ、もう嫌だ嫌だ…。」

恕(しのぶ)「落ち着け、普通に考えてそんなわけないだろ。」

つとめ「だってさ…」

和子「ごめんください。」

恕【つとめ】「あっ!……いらっしゃい。」

和子「ごめんなさい、待たせちゃったみたいね。」

恕【つとめ】「いや、そんな。講義お疲れ様。…私が早く大学に着きすぎちゃっただけだから。」

和子「……ありがとう。」

恕【つとめ】「……。」

和子「…あのね。」

恕【つとめ】「うん。」

和子「今、夜雨君はどうしてるの?」

恕【つとめ】「今は起きて、私の中で見守ってくれてる。」

和子「…そっか。できれば寝てもらって……ううん、やっぱり何でもないや。……あのね、私達、二年前の夏に知り合った…再開したわよね。」

恕【つとめ】「そうだね……暑い日だった。」

和子「夜雨君の事は前から知ってた。葬儀で古田さんのご両親に話を聞いて、その時写真も見せてもらってたから。それで実際に話してみて、最初はお互いよそよそしくはあったけど、柔らかい雰囲気の人だとは思った。その後も一緒に勉強したり古田さんの事で色々話したりとかして、仲良くなって……夏祭りにも一緒に行って、その時イカ釣りで取った花札は今でも家にあるの。帰りに二人で花札したの、とっても楽しかった。」

恕【つとめ】「うん…楽しかったよね。」

和子「なんで知り合ったばかりなのに、こんなにも早く仲良くなれて、こんなにも居心地が良いんだろうって思ってたけど、中身が古田さんだったなら納得ね。ずっとずっと仲良くしてた友達だったんだから。」

恕【つとめ】「……本当は、すぐ言うべきだった。ごめんなさい。」

恕(しのぶ)「だがこれは……信じてくれそうか?」

和子「あのね、古田さん。」

恕【つとめ】「うん。」

和子「私、どうしたら良いかな。あなたの事ずっと夜雨君だと思ってて……夜雨君の事好きになっちゃってたの。」

恕【つとめ】「えっ……。」

恕(しのぶ)「なんっ!?」

和子「一緒に勉強したりとか遊びに行ったりとか…一緒の大学にも入って、中々言い出してくれないけど、夜雨君も同じ気持ちで居てくれてるんじゃないかって、ずっと……中身が古田さんなんて思ってなかったから。」

恕(しのぶ)「まじかよ……」

恕【つとめ】「あ…と、それは、えっと……その、ごめんなさい…。私、そうだね…中身は私だし、私は男の人としか付き合えないから…。」

つとめ「というか和子としても別に女と付き合いたいって思ったわけでもないわけだし、本当の夜雨君は和子が好きになった夜雨君じゃないし…つまり、これって」

和子「……私の好きになった男の人は最初からこの世に居なかったから、仕方ないのよ。仕方ないって分かってるから、大丈夫……大丈夫だし、古田さんの魂が生きてここに居るならそれは嬉しいはずなのに、色々手一杯でそれどころじゃなくなっちゃってるの。」

恕【つとめ】「そんな……私が早く言い出さなかったせいで、まさかこんな事になるだなんて。」

和子「大丈夫…夏休みが終わる頃までには、ちゃんとするから。……だから、それまでしばらくは一人にさせて?……古田さんとまた会えて良かった。」

恕【つとめ】「……分かった、ごめん…なさい。また、ね。」

和子「ええ、またね。」








恕(しのぶ)「なんだかとんでもない事になったな。」

つとめ「ああ…何これ、何なのこれ。でも……結局私がすぐに言わなかったのが悪いんだけどさ、そのね、信じる信じない、なんで早く言ってくれなかった、ずっと騙してた、そんな感じの話になると思うじゃん?それがまさかこんな、予想のはるか外の話だよこんなの。」

恕(しのぶ)「とにかく、また待ちの時間だな。」

つとめ「せっかくの大学入って初めての夏休みがこんなさ…私この一週間だけでも限界すれすれだったのに、これから先一か月とか待つの耐えられる気がしないよ。」

恕(しのぶ)「まあ落ち着け。趣味見つけようぜ。あ、それかバイト沢山入れるか。」

つとめ「うっさい!こんな気持ちで何を楽しめっての!バイトだってこんな状態じゃまともにできないっての!」

恕(しのぶ)「とにかく落ち着けって。信じてくれてる以上、向こうの気持ちの整理がついたらそれで解決だろ?な?」

つとめ「和子はね!生前の私を知ってて今でも話せるたった一人の友達なの!それが居なくなっちゃうかもなんて、しかも私が黙ってたせいで私を男だと…恕君だと思って私の事好きになって、可哀想でしょ!あの子自分の好きな人に騙されてて、しかもその好きな男は最初から居なかったんだよ!?私のせいで!私が和子の気持ち台無しにしたんだよ…気持ちの整理って、そんなの…簡単じゃないよ。」

恕(しのぶ)「……とりあえず家に帰ろう。交代、な。今日はお前が家事する日だけど、俺が代わりにやっておいてやるから。」

つとめ「うん……ごめん、ありがとう。交代。」

恕【しのぶ】「…よし、もう疲れたろ。後は俺に任せて中で寝てても良いぞ。」

つとめ「…良いの?」

恕【しのぶ】「ああ、良い。寝てな?もう色々限界だろ。」

つとめ「…ごめんね、お言葉に甘えるよ。」

恕【しのぶ】「…ああ、ゆっくり休め。」




続く

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