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2018年07月21日13:05

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声劇台本を作成しました!「生きる活動。」

「生きる活動。」






※ 金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※




こちらの作品はシリーズ物となっています。
一作目
「生きる活動。」(本作)


二作目
「生き続ける活動。」
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1973207660&owner_id=24167653

三作目(最終作)
「生き抜く活動。」前編
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1978066292&owner_id=24167653
「生き抜く活動。」後編
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1978066294&owner_id=24167653



こちらの作品単品でも楽しんでいただけるよう書いていますが、
もし良ければシリーズ内の他の作品と併せて見ていただけると幸いです。




【想定時間】

30分に少し満たない程度。



【想定人数】

2:3or2:4(詳細は登場人物欄にて記述)



【あらすじ】

 ある日、高校二年生の少年、夜雨 恕(やさめ しのぶ)は水難事故に遭った少女、古田 つとめ(ふるた つとめ)を助けるべく自ら川に飛び込んだ。しかしその甲斐なく彼女は搬送先の病院で死亡してしまう。
 その後、病院で目を覚ました彼、夜雨 恕の前には幽霊となった彼女、古田 つとめの姿があった。こうして二人の奇妙で前向きな生活の幕が上がる。



【登場人物】

夜雨 恕(やさめ しのぶ):男性。笠木岳(かさぎたけ)高校二年生。高校一年次の終わり頃から二年次の6月末頃まで不登校。

古田 つとめ(ふるた つとめ):女性。鬼ヶ海(おにがうみ)高校二年生。高校二年次の6月に水難事故で死去。

倉木 白露(くらき しらつゆ):男性。笠木岳(かさぎたけ)高校二年生。一年次、二年次ともに恕の同級生。

草撫 和子(くさなで かずこ):女性。鬼ヶ海(おにがうみ)高校二年生。つとめの一番の友達。

神楽 かなた(かぐら かなた):女性。笠木岳(かさぎたけ)高校教諭。彼らの一年次、二年次ともに恕や白露の担任の先生。



※ 台本本編内に以下の人物表記がありますが、それぞれの状態及びどなたが演じるかは記述に従ってください。



恕(しのぶ)…恕(しのぶ)が心の中でつとめに対し喋っている状態。恕(しのぶ)役の方が演じてください。

恕【しのぶ】…恕(しのぶ)の肉体を使って恕(しのぶ)が喋っている状態。恕(しのぶ)役の方が演じてください。

つとめ…つとめの霊体が喋っている状態。つとめ役の方が演じてください。

恕【つとめ】…恕(しのぶ)の肉体を使ってつとめが喋っている状態。つとめ役の方、若しくは恕【つとめ】役専用に女性役を設けてその方が演じてください。



※※ よって、恕【つとめ】専用の女性役を新たに設ける場合は2:4の配役となり、恕【つとめ】役をつとめ役の方が演じる場合は2:3の配役となります。





【本編】

かなた「失礼します。…こんにちは、大丈夫?恕(しのぶ)君…。」

恕【しのぶ】「…先生。こんにちは。」

かなた「うん、久しぶり…。体調はどう?」

恕【しのぶ】「もう大丈夫ですよ。まだ検査がいくらか残ってるらしいですけど。」

かなた「そっか、良かった…。恕(しのぶ)君が助けようとしたあの子…古田 つとめ(ふるた つとめ)さんは残念だったけど…恕(しのぶ)君だけでも助かって……。」

恕【しのぶ】「…。」(無言)

かなた「あ、お見舞いの果物(くだもの)と…あと、クラスの皆からの寄せ書きとか色々預かってきたから、置いていくね?」

恕【しのぶ】「どうも。」

かなた「学校の行事とかお知らせとかのプリントも一緒に入れておくから…この青色のファイルに入ってるのは全部大事なのだから、ちゃんと見てね?」

恕【しのぶ】「…ありがとうございます。」

かなた「それじゃあ…先生はもう行くね。…その、元気になってね。」

恕【しのぶ】「はい。…ありがとうございました。」



つとめ「…学校の先生?」

恕【しのぶ】「つとめ。起きていたのか。…ああ、そう。一年でも二年でも俺の担任やってる…確か、神楽 かなた(かぐら かなた)先生だ。」

つとめ「神楽 かなた先生ね。覚えておくよ。あの先生の事、嫌いなの?あんな不愛想にしなくても。」

恕【しのぶ】「…担任だからな。良い先生なんだろうが、元から不登校の俺にとっては、気まずくて仕方ない。」

つとめ「…そっか……それで、体の方は本当に大丈夫なの?」

恕【しのぶ】「多分な。」

つとめ「……ごめんね、私のために。」

恕【しのぶ】「…。」(無言)

つとめ「…その、私が不注意で川なんかに落ちちゃうから、助けてくれようとして…。」

恕【しのぶ】「…結局お前は死んでるんだ。謝りたいのはこっちだ。それに。」

つとめ「…。」(無言)

恕【しのぶ】「自分の命が大事な奴が命をかけるのと俺がしたのは訳が違う。俺はただ、どうせ自殺するなら、ついでに女の子助けて死ねれば格好がつくと思っただけだ。」

つとめ「ねぇ、恕(しのぶ)君…もし答えたくなかったら良いんだけど…。」

恕【しのぶ】「なんだ?」

つとめ「…なんで自殺しようとしたの?」

恕【しのぶ】「…なんで、だろうな。長いこと生きてる意味が分からなくて…それで、一年の終わり頃から高校も行けなくなって、それが原因で一人しか居ない家族…父親とも触れる事がなくなって……ここ最近、ついに出席日数的に留年が現実味を帯びてきて…。まあ、色々積み重なってたんだろうな。そこに都合良く格好つけて死ねる方法が転がってきたから、衝動的にって感じだ。」

つとめ「…そういう…ものなんだ。」

恕【しのぶ】「あの時はとやかく考える時間もなかったし、咄嗟の行動だった。あ、今死ねば迷惑より利益の方が上に行く。って。」

つとめ「…今もまだ、死にたい?」

恕【しのぶ】「…今、俺が死んだらお前が取り憑く先がなくなってこの世に居られなくなるかも知れないからな。」

つとめ「…そっか。」

恕【しのぶ】「それとも成仏したいか?」

つとめ「…それは怖いかな。二度も死にたくない。」

恕【しのぶ】「了解。」









かなた「…はい、お宅の恕(しのぶ)君、退院の後、急に登校してくれるようになって、その後は今のところずっと学校に来てくれています…。ただ、少し様子がおかしくもありまして…ご家庭の方、お父様は何かお気づきの点などありますでしょうか…?そうですか…ともかく、このままずっと来てくれれば出席日数も何とかなるかも知れません。学校側としても全力でサポートしますので、よろしくお願いいたします。」







恕【つとめ】「…家着いたよ。」

恕(しのぶ)「…どうも。」

恕【つとめ】「体返すよ。交代。」

恕【しのぶ】「ん。…大分体の交代にも慣れてきたな。」

つとめ「私の方は毎回ちょっとしたけだるさがあるけど。」

恕【しのぶ】「大丈夫か?」

つとめ「…大丈夫大丈夫。それよか君の方が慣れるの早すぎなんじゃないの?」

恕【しのぶ】「まあ、幽霊と体の貸し借りしながらの共同生活なんて、ぶっ飛びすぎてて逆に楽しいよ。」

つとめ「私の体は多分もう燃やされちゃってるから貸せないけどね。」

恕【しのぶ】「俺があえて触れて来なかったところに触れるか。」

つとめ「お墓から自分の遺骨、少しでも失敬できないかな…。」

恕【しのぶ】「綿密に予定を練って、人が居ない時に2〜3分で済ませてやれば行けるんじゃないか?」

つとめ「…冗談が通じない奴だな。」

恕【しのぶ】「お前の骨をお前が少しでも取り戻すのに、誰がバチを与えるって?」

つとめ「普通に警察と裁判官が罰を与えるからダメ。」

恕【しのぶ】「…まあ良いや。代わりに学校行ってくれてる礼だ。他の事で何かあったら遠慮なく言えよ。」

つとめ「…私からしたら代わりに学校行ったり、宿題とか勉強教えたりするのが、せめてもの恩返しなんだけどね。」

恕【しのぶ】「…お前さえ良ければこの体くれてやっても良いんだが。いかんせんこの体、男だからな…。」

つとめ「仮に君が女の子だったとしても…君の人生でしょ。」









恕【つとめ】「…おはようございますー…。」

恕(しのぶ)「流石に学校来るの早すぎだろ。まだ誰も居ない。」

恕【つとめ】「昔は陸上部で朝練とかしてたから、ついクセでね…。」

かなた「…あれ、おはよう、恕(しのぶ)くん。」

恕【つとめ】「おはようございます。…あ、この前の補充課題のプリントとレポート出しますね。」

かなた「もうやってきたの?すごいね。難しくなかった?」

恕【つとめ】「あはは…まあ何とかなりました。」

白露「お、恕(しのぶ)じゃん!早いなお前!」

恕【つとめ】「おはよう、えっと…。」

恕(しのぶ)「そいつは倉木 白露(くらき しらつゆ)。クラス委員で一年の頃から同じクラスの奴だ。」

恕【つとめ】「倉木くんも早いね。」

かなた「ふふ。白露くんもおはよう。」

白露「おはようございます先生!」

かなた「さて、先生、一回職員室に戻るね。何かあったら呼びにきてくれても良いからね。」

白露「はーい!」

恕【つとめ】「はい!」



白露「…それにしても恕(しのぶ)お前、学校ずっと来ない間どうしてたんだよ。」

恕【つとめ】「…まぁ、色々とね…。」

白露「色々って?」

恕【つとめ】「…。」(気まずそうに言葉を探す。)

白露「何かあったんなら、俺に言ってくれれば何でもするから遠慮すんなよ?」

恕【つとめ】「あはは…ありがと。」











恕【しのぶ】「…なぁ、ここの解説の意味がよく分からないから教えてくれないか。」

つとめ「ああ、これはね。なんかもって回った書き方してるけど、要は一個前のと同じで…。」

恕【しのぶ】「なるほどな…。しっかし、本当に同い年なのか疑いたくなるな。いや俺が勉強遅れてるだけではあるが。」

つとめ「私は間違いなく君と同じ高校二年生だよ。まあ自分で言うのもなんだけど、けっこう良いとこ行ってたし、そこでも友達にこうやって…。」

恕【しのぶ】「…学校、鬼ヶ海(おにがうみ)高校だっけ?どんなとこだったんだ?」

つとめ「あそこは自由な校風だったからね…良い意味でも悪い意味でも馬鹿みたいな生徒が沢山居たよ。先生もなんかおかしな人ばっかりだったし。」

恕【しのぶ】「それ本当に良いとこだったのか?」

つとめ「やるべき事は真っ先にやって、その後は全力でやりたい事をやるっていうのを先生達がよく言ってて、割とみんなそれを守ってたからね…何だかんだでみんな勉強もできてたよ。それに、毎年色んな行事に気合い入れてて…。」

恕【しのぶ】「…なるほどな。」

つとめ「あ、でも笠木岳(かさぎたけ)高校も良いとこだと思うよ。みんな楽しそうで。」

恕【しのぶ】「…そうだ、お前は寝ていて知らなかっただろうが、一つ良い話があるんだ。」

つとめ「良い話?」








恕【しのぶ】「そろそろ着くかな…おい、つとめ。流石にもう暑くてたまらん。後は頼む。交代だ。」

恕【つとめ】「うん。…うわ、あっつ…。」

恕(しのぶ)「良かったなぁ。つらさを知る事はそのつらさを今まで味わわずに済んだ事に対する感謝を知る機会を得(え)、即ちそれは悟りに近づける機会を得るという事だって教科書に書いてあったぞ。」

つとめ「…ここまで連れてきてくれてどうも。…で、何時に着けば良いの?その表彰ってやつには。」

恕(しのぶ)「ああ、表彰ね。あれは嘘だ。」

つとめ「ぬぇ!?ちょ、私を助けようとしてくれた事についての表彰に呼ばれたって言うから、わざわざこんな休日にここまで案内したんでしょ!?」

恕(しのぶ)「俺にはこの学校での用事なんてないが、お前が友達の様子とか校舎とか、そういうの見たいだろうと思ってな。」

つとめ「なっ、誰もそんな事」

恕(しのぶ)「自分からそんな事言わないだろうし、聞いても拒否するだろ。でもお前、この前高校の話聞いたらめちゃくちゃ嬉しそうに話してたぞ。」

つとめ「意外と強引なとこもあるんだね…。自分の学校には行きたがらない癖して。」

恕(しのぶ)「ってわけで俺は寝てるから、なつかしさを十分堪能したら起こしてくれ。帰りは俺が歩いてやるから体力の温存なんて考えなくて良いぞ。」

つとめ「この野郎……あっ、あれ、もしかして…。」

恕(しのぶ)「…ん?今俺達を追い越していったあの女の子、知り合いか?」

恕【つとめ】「……あの…。」

和子「?…呼びました?」

恕【つとめ】「!…えっと、その……この学校の生徒さんですよね…あの、実は道に迷ってしまって…。」

和子「!…あ、あの…もしかして、夜雨 恕(やさめ しのぶ)さん…?」

恕【つとめ】「え?は、はい。…なんで名前を知って…?」

和子「失礼しました。私は、この前の水難事故で亡くなった古田 つとめ(ふるた つとめ)さんの友達で、草撫 和子(くさなで かずこ)と言う者です。…どうしても亡くなった友達の事、信じられなくて…調べられる事全部調べてたら、あなたが助けようとしてくれて、それで入院したっていうのも出てきて……本当はお見舞いもしたかったんですけど、流石にそれはと思いまして…。」

恕(しのぶ)「…良かったなぁ、つとめ。お前の事沢山好いてくれてそうな友達と再会できたじゃないか。俺は邪魔だから今度こそ寝るぞ。おやすみ。」

つとめ「なっ、この…。」

恕【つとめ】「そう…ですか。初めまして…。」

和子「…っ…。」(気まずそうに言葉にならない声を漏らす。)

恕【つとめ】「…あの、これから用事ですか?」

和子「いえ、ただ自宅で集中できないので学校の自習室を借りようと思っただけですので。…その、夜雨(やさめ)さん…。もし良かったらどこか近くのお店で、彼女の事、お話できませんか…?」

恕【つとめ】「…願ってもないです。向こうの交差点の先の喫茶店とかどうです?」







恕【つとめ】「…そう、だから古田(ふるた)さんとは別に面識があったわけでもないので、彼女の事は特に何も知らなくて…。それで今日、休日だって忘れて着替えてしまったもので、せっかくだからどこかに出かけようと思ったところ、気になって古田さんの母校を外から少し眺めてみようと思って来たんです。」

和子「そうなんですね…。それじゃあ、事故の前の彼女の様子とかそういうのは特に分からないでしょうか…何か言っていたとか。」

恕【つとめ】「…すみません……あの、草撫(くさなで)さんは……っ、古田さん…と、仲が良かったんですね。」

和子「…彼女は中学からの友達で…一番仲の良い友達でした。彼女の夢を私は応援していましたし、彼女の頑張る姿が私には眩しかったです…。」(一つ一つ区切るように、苦々しく。)

恕【つとめ】「…。」(苦々しい空笑い。)

和子「…。」(無言。)

恕【つとめ】「…ごめんなさい。」

和子「謝る事なんて何もないですよ…。むしろ何とお礼を言ったら…。」









和子「今日はお時間たくさんいただいてしまってすみませんでした…。お気をつけてお帰りくださいね…。また今度。」

恕【つとめ】「…ええ。草撫(くさなで)さんも。」

恕(しのぶ)「長いこと話し込んでいたな。もう夏の陽が落ちかけている。」

つとめ「…覗き魔。」

恕(しのぶ)「どんだけ長く寝てろってんだよ。起きた時まだ話してたから居づらかったわ。」

つとめ「体返すね、ありがと。」

恕【しのぶ】「…お、もう涼しいな。それでどうだった?久々に話せた感想は。」

つとめ「嘘に嘘を重ね続けるのって、つらいね。」

恕【しのぶ】「…なるほどな。」

つとめ「あとさぁ…あの子、私と同い年のくせに、普段何世代か前の女の人みたいな喋り方するんだ。」

恕【しのぶ】「どういう意味だ?」

つとめ「…あら、もうこんな時間だわ。ごめんなさいね、お時間たくさん拝借しちゃって。そろそろ解散にしましょうか。気を付けて帰るのよ、またね。こんな感じ。」

恕【しのぶ】「…俺が男で済まなかったな。」

つとめ「謝らないでよ。…それに、連絡先は教えて貰えた。それで早速明日一緒に勉強する事になったから、ひょっとしたら私のお陰で彼女ができるかもよ。」

恕【しのぶ】「俺に選ぶ権利はないのか?」

つとめ「和子じゃ不満?」

恕【しのぶ】「良いんじゃねぇの。実際会うのはお前だろ。」









かなた「さて皆さん、今日から夏休みですが、高校生である事を忘れずに、また二年生と言えど進学希望の子は受験の事を頭に入れて、計画的に勉強するんですよ。…もう、みんな聞いてないんだから。」

つとめ「って言っても補修が沢山あるせいで私達は明日からもしばらく学校だけどね。」

恕(しのぶ)「…正直な話、俺は一対一で先生から授業を受ける分にはさほど嫌でもない。」

つとめ「ふぅん。…ま、どの道、和子(かずこ)も明日からしばらく塾だしちょうど良いけど。神楽(かぐら)先生も好きだし。」

恕(しのぶ)「ならお前が出るか?」

つとめ「構わないけど、ちょっとずつ頑張って自分で学校行くって言い出したの君の方でしょ。つらくなったらいつでも代わってあげるから。」

恕(しのぶ)「了解。」

かなた「…はい、それではこれで解散とします。夏休み、皆さん悔いなく過ごしてくださいね!」

恕【しのぶ】「ありがとうございました。」

白露「おおい、恕(しのぶ)!」

恕【しのぶ】「…倉木(くらき)。どうかしたか?」

白露「今夜の夏祭り、クラスの何人かで行くんだけど、お前も来ねえか?」

恕【しのぶ】「夏祭りか…。誘ってくれてありがと。ただ悪い。他の人と行く約束があってな。」

白露「なんだよ、デートか?」

恕【しのぶ】「よく分かったな。他校の曼殊沙華(まんじゅしゃげ)の如き女性との大事なデートだ。」

白露「なっ」

かなた「えぅっ!?」

つとめ「…そんな驚くかね普通。」

恕【しのぶ】「そんな驚くかよ。」

かなた「…恕(しのぶ)君。白露(しらつゆ)君もだけど…あんまり遅くならないうちに帰ってくださいね。初日から補導とかされないように。」

白露「大丈夫ですって!迷惑かけないよう努力します!」

恕【しのぶ】「…まあ俺の場合、遅くまではしゃいでいたら明日からの補修に響きますし、ね。」





かなた「はい、もしもし。あ、恕(しのぶ)君のお父様。……そうですね…クラスの子と馴染めている様子はないものの、あれ以降…一か月近くずっと頑張って学校に来てくれています。明日からの補修で出席日数の方も大丈夫ですので…いえいえ、あの子が自分で頑張ってるだけですよ。それに…最近は学校来てた頃のあの子らしさが戻ってきたような気がしています。ぶっきらぼうで…あ、いえ悪く言っているんじゃないですよ?それでご家庭での様子は……そうですか…いつも遅くまでお仕事大変ですね…。」





恕【つとめ】「げ。早いね。待たせちゃったか。」

和子「えへへ。浴衣の着付けに時間かかるかなって思って早めに準備してたら時間余っちゃって。」

恕(しのぶ)「しっかりしろよお前。何こんな人通りのあるところで女の子一人で待たせてんだ。」

つとめ「…和子がいつも早すぎるんだよ。」

恕【つとめ】「そっか…似合ってるよ。とっても綺麗。」

和子「…ありがと。照れるわ。でもそれは多分目の錯覚よ。」

恕【つとめ】「そういう事なら夏休みを利用して眼科に行ってきて、その後また同じ事言ってあげようか。」

和子「ふふ。目の錯覚は病院で治せるものじゃないわよ。さ、行こ。」

恕(しのぶ)「…自分の体でキザな事言われるのつらいから寝てるわ。楽しんで来い。」

つとめ「知り合って二週間と少しでここまで仲を戻すのには多少の口説き文句は必要なんだよ。…で、君は曼殊沙華(まんじゅしゃげ)との大事なデートを疑似体験しなくても良いの?」

恕(しのぶ)「俺は覗き魔じゃないからな。」

つとめ「本人の許可があれば覗きじゃないんじゃない?」

恕(しのぶ)「…どんな心理状態だ。見守ってて欲しいのか?」

つとめ「ほら、お金使い過ぎだって時に出てきてツッコミ入れてくれないと際限なくお金使うでしょ。」

恕(しのぶ)「…了解。」

恕【つとめ】「あ、見て見て、草撫(くさなで)さん。イカ釣り!ああいうの好きで…ああいうの好き?」

和子「わぁ。並ぼ!私、小さい頃からああいうの好きなの。」

恕【つとめ】「…良いね、懐かしいや。」(切なく笑みを浮かべて。)

つとめ「中学の頃からよく一緒にやったもんだよ。」

恕(しのぶ)「…またいつかの夏祭りの時、今日の事も懐かしく振り返れると良いな。」

つとめ「…自分だって十分キザだよ君は。」





白露「えーっと?あと来てない奴何人だ?…ったく、連絡もなく遅刻する奴多すぎだろうが。…っ、あれは……。」





恕【つとめ】「くっ…!あと一匹……あぁっ!だめかぁ…。」

和子「惜しかったわね。」

恕【つとめ】「あと一匹釣れてれば一番上の景品が選べたのに…。B賞の中で欲しいの何かある?あげるよ。」

和子「良いわよそんなの…。私はこの花札にしますね!夜雨(やさめ)君も自分が欲しいの選んで?」

恕【つとめ】「…なら俺はこのコンパクトチェアで。」





白露「…あんな顔するんだな。……あ、いや何でもない。それよりあいつらから返事来たか?…はぁ?結局来ないのかよ…。だったら自分から連絡しろってのあの野郎ども。」





和子「ね!人の少ないところ行って早速一緒に花札しよ!私得意なのよ?」

恕【つとめ】「人の少ないところなんかこの辺にないだろ。帰りまで我慢しな?」

和子「むぅ。帰り絶対するからね!」

恕【つとめ】「了解了解、約束するよ、草撫(くさなで)さん。」

和子「うん、約束っ!」

恕【つとめ】「…。」(切なく微笑む。)

和子「次は何か食べ物屋さんの屋台探しに行こ!」

恕【つとめ】「ああ。」

恕(しのぶ)「…おい、つとめ。」

つとめ「…なんだよ。デート中だぞ。」

恕(しのぶ)「…遠慮はしなくて構わないからな。」

つとめ「どういう意味だよ。」

恕(しのぶ)「…俺の体にお前が取り憑いている件を草撫(くさなで)さんに一向に話さない理由に、信じてもらえるか分からないとかそういう事以外に、もし俺に対する遠慮もあるのだとしたらその遠慮は要らんという事だ。」

つとめ「…相変わらず自暴自棄だね。そんな事軽々しく言いふらしたら君が大変な事くらい予想が付くでしょ。」

恕(しのぶ)「言いふらせとは言ってないだろ。俺だって変な評判が立ったら嫌だっての。」

つとめ「……へぇ、そっか。」(わざと悪役風に。)

恕(しのぶ)「なんだその言い方は。」

つとめ「悪くないなって思っただけよ。変な評判が立つと困るんだ…。その言葉、ちゃんと覚えておくよ。」

恕【つとめ】「あ、草撫(くさなで)さん!」

和子「なぁに?」

恕【つとめ】「あぁ…えっとね…。」

和子「うん?」

恕【つとめ】「……こんなに混んでるとはぐれるかも知れないから…手、だめ?」

和子「ふふ。……良いよ。」

恕【つとめ】「ありがと!」

和子「どういたしまして。あ、あそこにタコ焼き屋さんがあるわ。行きましょう!」







かなた「はい、本当に良かったです。恕(しのぶ)君、今日で補修も無事終わって。このままなら出席日数は何とかできそうです。それに……ここ最近、とっても楽しそうなんですよ。え、そうですね…心当たり…えっと、そうですね…なくもないですが、ちょっと個人情報なので、頑張ってご本人から聞いてください♪」






ー完ー
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