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2021年01月07日01:13

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トランプ現象

 天地の狭間、神羅万象をあまねく敵味方に分けないと気がすまないネットの一角があって、かつてそこでの最大の「敵」は在日韓国朝鮮人だった。当時はネットで自分の気に入らない書き込みがあると、「ザイニチ」と返すのが通例だった。
 その頃の界隈における解説によると、とにかく「ザイニチ」の日本社会への浸透ぶりはすさまじく、放送局や新聞社など大手マスコミは言うに及ばず、電通などの代理店や野党、官公庁にも入りこんでこの国を支配していたらしい。
 本当にそこまで牛耳られているなら、その状況に順応した方が賢明だと思うし、あくまで抵抗するならそれこそ立候補するなりすればいいと思うのだけど、なぜか匿名掲示板でいるかいないのかわからない相手を見下しながら罵詈雑言を浴びせるという活動に終始していて、傍で見ていてあまり意味がわからなかった。

 それから時代はめぐり(数年経過)、今や「敵」の呼称はほとんど「五毛」にとって代わられている。五毛とは中国のネットへの書きこみ工作員のことらしい。これが事実であるなら由々しいことで、世間がほぼそれと知らないうちに、日本の権力構造に甚大な地殻変動が生じ、パワーシフトが生じたことになる。断じて飽きたから矛先が変わったわけではないと思うのだが、真相は闇の彼方にある。

 ターゲットが中国になってしまったことについては、尖閣諸島の件があるので、仕方ない感じもある。中国がコロナ禍の原因にされてしまっているのは、個人的には濡れ衣だと思ってもいる。最初の大規模なパンデミックが武漢で起こりはしたが、それ以前に欧米で症例が存在したことは後で判明している。オーストラリアが発生源の調査を求めたのはさすがに無茶で、中国が反発するのも当然である。とはいえ、それに対して捏造画像をつけてツイッターするのもやりすぎだし、米英を中心とする機密情報を共有するネットワーク、ファイブ・アイズに対する「目がつぶれるぞ」という恫喝も子どもじみている。
 往年の大日本帝国ほどではないにせよ、現在の中国もなかなかオラついているので、去年から世界中で妙に好感度が下がっているみたいながら、トータルとしては順当な気がしている。

 さて、その中国と戦う男として界隈で絶大な期待をよせられているのが、第45代合衆国大統領ドナルド・トランプである。彼がどれほど熱烈に支持されているかといえば、負けた選挙の結果を認めないという自由と民主主義の旗手をもって任じる国の首長とはとても思えないその態度すら、あくまで賛同と擁護の発言が絶えないほどである。よその国の話なのに。

 もちろん、選挙で不正があったかどうかは議論の分かれるところのようである。日米の主要なマスコミで大規模な不正があったとするところは存在しないけれど、ネットでは「選挙は盗まれた」とする説が根強くささやかれている。後者の界隈では、決まって「マスゴミ」という言葉が多用される。
 たしかに、いわゆるマスメディアがさまざまな問題を抱えていることは間違いない。当然、スポンサーにはなにも言えないし、権力への忖度や、エンタメ部門を併せもっている場合には大手芸能プロダクションへの矛先が鈍りがちになる。
 しかし、ジャーナリズムの看板を背負っている以上、信用失墜はそのまま命取りになりかねないし、ある程度の組織ならば内部チェックも機能しうる。一方で、ただのツイッターや動画サイトのアカウントなどは、特に失うものなどないのだから、虚偽の発信になんらの制約もない。
 たしかに、情報化の促進は当事者が直接に発信する可能性を広げ、生の情報に触れる機会を飛躍的に増大させたが、結局のところ、取材能力のあるアカウントは限られている。フリーのジャーナリストによる綿密な調査がオールドメディアを介さず公開されることもあるが、それ以上に膨れ上がった箸にも棒にもかからないゴミ情報やデマに飲みこまれているのが現状である。

 ネットではよく「マスゴミが」という表現を見かけるが、取材能力という点ではまだまだ既存のメディアに軍配が上がるとしか判定のしようがないし、さらにいえば、取材能力の有無とそれだどのチャンネルで流されるかは関係がないので(現にネットへの配信を行っていないマスメディアの企業体は存在しないはずである)、メディアの形態で真偽を判断するのは馬鹿げている。もっと言うと、マスゴミ云々を物言いをするアカウントが、マスメディア発の情報をすべてシャットアウトしているかといえば、そんなことはないし、それは不可能である。
 結局、都合のいい情報だけを受け入れつつ、そうでない情報には「マスゴミ」のレッテルを貼って否定している。そうした選別が無意識かつ無自覚に行われているという、実はきわめて危険な状況があらゆるところで展開されている。現状はきわめて際どい。

 あらゆるメディアには偏向がある。異なるソースをクロスチェックするなり、近接する情報との整合性に目を光らせることにより、総合的になにがどの程度まで信用できるのかを個々に判断せざるをえない。情報をめぐるその原則はネットが普及した後でも、いっこうに変わらない。しかし、情報化の大波の中にあって、判断を下さなければならない頻度が明らかに人間の能力の上限を越えて爆発してしまったため、逆に判断を放棄してしまっているケースが多いように見受けられる。
 特に、なんでも白黒をつけなくてはいけない界隈にあっては、「わからない・判断保留」という基本的には最も多くの情報が分類されるべき棚の存在が許されないため、強引にこじつけられた判断が積み上がった結果、かなり現実と乖離した世界が形成されることも珍しくない。

 たしかに、世間で権威あるメディといっても、無条件で信じるわけにはいかない。過去には枚挙に暇がないほどのやらかしもある。しかし、なんの実績もないツイッターのアカウントの方が信頼できるかといえば、そっちの方が無茶というものなのである。
 あるいはまた、アメリカの4大ネットワークと真っ向から対立しているトランプ本人の直接の発言は信じるに足るだろうか。
 日本でも大きく報道された彼の発言に、「新型コロナウイルスは中国の武漢にある研究所から広がった」というものがある。彼は「その証拠があるのか」という記者団からの質問に、実際に見たと応じつつ、具体的な根拠は明らかにしなかった。引き続き調査するとしつつ、別に今日に至るまでその証拠は明らかにされていない。むしろ、前述の通り、武漢のパンデミック以前にコロナウイルス自体は世界中に広がっていたが、その実態は把握できていなかったとみるべき材料の方がそろいつつある。
 他に少し日本で報道されたものといえば、「オバマはアメリカで出生していないので、そもそも大統領の資格がなかった」というものもある。いくらなんでもこれは無茶苦茶で、さまざまな公的機関やマスコミのチェックをくぐり抜け、民主党の予備選挙と大統領選挙を勝ち抜いてきているのだから、大統領選挙立候補受け付けの窓口担当者が「そういえば、出生地の確認を忘れてました。てへ」というわけにはいかないのである。こんなことは最低限の社会常識があれば言うはずがないのだが、本人は意に介する様子はない。もっとも、さすがにオバマが出生証明書を公表し、トランプも自分の間違いを認める羽目になった。

 以下、https://news.livedoor.com/article/detail/19269436/ より引用。

 そんなミシガン州で私が1000人以上の支持者に囲まれてトランプの演説を聞いたのは、10月中旬のこと。彼は冒頭でこう話した。

「オレは12年前、ミシガンで最も活躍した人物に選ばれた時、『なぜミシガンは自動車産業の仕事口を、賃金の安いメキシコやカナダに流出させているんだ』と言った。賞を貰って文句を言ったのはオレぐらいだろ」

 聴衆が沸き、こう続けた。

「(大統領就任後)安倍首相に『日本はもっとミシガンに自動車工場を作らないといけない』って言ったんだ。その翌日、日本の自動車企業がミシガン州で5つの工場を建てると発表した」

 だが、トランプがその年最も活躍した人に選ばれたことも、日本企業がミシガンに5工場を建てるというのも真っ赤な嘘だった。

 引用ここまで。

 息をするようにウソをつくとはまさにこのことで、むしろ、あまりにスムーズなウソの挟み方に感心するのだけれど、当然、彼のついたウソが上記だけということはなく、こんな調子で日々膨大なデタラメを量産し拡散している。おそらく、彼にとってはどれだけ聞き手の歓心を買い影響下に置けるかが重要なのであって、それに較べれば正確さなどは些細な指標にすぎないのだろう。綸言汗の如し、合衆国大統領に二言はないというなら、以前にツイートしたようにコロナで陽性になったならば消毒液を注射してもらうべきだったけれども、未認可のワクチンを投与されてすぐ選挙活動に復帰している。かつて自分がなにを言ったか、おそらく思い出しもしなかっただろうが。
 そんな無責任な言動をくり返す人間でも、個人の信条として理解はできないにせよ、許容はしなければならないのかもしれない。しかし、そういう人物(現時点における合衆国大統領だが)の発言とアメリカ4大ネットワークの報道のどちらを信頼するかといえば、やはり、後者に軍配を上げざるをえない。

 結局、アメリカの大統領選でトランプが主張するような不正があったのかといえば、まず、事前の世論調査ではバイデンが10%ほどの差をつけて優勢だったという事実に注目すべきだと思う。
 前回のクリントンは優勢とはいえ、その差は3%ほどしかなく、結果として激戦州での僅差の逆転が全体に響き、選挙人の獲得数が規定に達せず敗北した。今回は、むしろ、圧倒的な勝利を予測する向きすらあったのである。そもそもリスクを冒して、不正に手を染める必要はなかった。
 実際の開票では、注目された州の一つ、フロリダをトランプが早々に確定させ、4年前の再現かと一時は世界の注目を集めたものの、最終的には激戦州のほとんどとそれ以外のいくつかの州もバイデンが手中に収めて勝利を決めた。
 むしろ、選挙戦たけなわの最中にコロナへ感染するという、絶体絶命ともいえるハンデを覆したトランプの追いこみは凄まじかった。圧倒的な結果をもって選挙後の分断を修復しければならなかったバイデンとしては、勝ったとはいえ相当に苦い勝利といえた。事実、選挙後も国内の亀裂はますます深まる一方に見える。
 状況だけをみるなら、事前のあらゆる予測から票を伸ばしているのは、むしろ、トランプの方といえる。

 通例、民主党支持者は郵便投票の割合が高く、開票作業の序盤における共和党の優勢が、郵便投票が反映されてくる終盤で逆転されることが多いという。特に去年はコロナ対策として、民主党は積極的に郵便投票を呼びかけた。一方のトランプ陣営は劣勢がはっきりした時点で、いかに郵便票を無効化するかを選挙対策の主題に据えたようである。個人的には、「なんじゃ、それ」と思うけれど、ルールを盾にとっては戦うことがあちらではごく一般的なことらしい。
 選挙前から郵便投票は不正の温床になるとさんざん伏線を張っている。また、郵便事業の縮小に乗り出しているが、これも選挙対策の一環と言われている。他方で自らの支持者には当日に投票所で直接に投票するよう呼びかけているが、コロナ禍でのそれはリスクのある行為といえる。現職の大統領が選挙に勝つために支持者の健康と生命を危険にさらしたようにも思えるのだけど、そこを指摘した報道は見たことがない。

 いよいよ投票日当日が2020年11月3日、即日に開票が開始され、途中経過が続々と発表され、いよいよ郵便投票の結果が反映されるころあいになって、トランプ陣営は不正投票のカウント停止を主張し始める。これに賛同する支持者と、あくまですべての票を数えるべきという集団が開票所の前でにらみあい、ときに小競り合いになったりしていた。この時点でかなり発展途上国っぽいことになっているのだけれど、当然ながら本人たちは大真面目である。

 とはいえ、けっこうまじめに懸念された大規模な騒乱が生じることもなく、バイデンが8128万票で選挙人306人を獲得し、7422万票232人のトランプを下して、第46代合衆国大統領に決定した。
 アメリカの制度では、ここから実際に次の大統領が就任するまで2か月以上の準備期間を挟むが、選挙の結果を認めないトランプは、恒例となっている敗北宣言も出さず、この間のあらゆる機会を捉えて選挙の無効化を図っている。
 まずは投票に不正があったと数百件の訴訟を起こし、法廷闘争で選挙を覆そうとしたが、これはほとんどのケースで根拠がないと門前払いをくらった。控訴して上級審に移っても、すでに下された判決が支持されるばかりでこの戦術は実質的にはほとんど成果もないまま終わった。

 日本のトランプを支持するネット界隈では、棄却ばかりの下級審について、「バイデン不正陣営の息の根を一息で止めるためにわざと敗けて、できるだけ速く連邦最高裁へ持っていってそこで決めようとしている」という説がまことしやかに語られていたが、控訴したところで一から裁判をやり直すわけではなく、証人の喚問や証拠の認否などは下級審の内容を踏まえるはずで(よく知らないけど、そうしないとやってられないと思う)、証人や証拠を出し惜しんでわざと負けるという方法が有効とはとても思えなかったけれど、結局、連邦最高裁までいった件もほとんど門前払いといった感じで棄却されている。
 連邦最高裁の判事はトランプが慣習を破ってねじこんだ判事によって保守派と革新派のバランスが崩れており、特に最後に任命された判事は実務の経験が乏しく個人的には懸念があったが、保守派といっても人工中絶や銃の所持についての考え方にその傾向があるというだけにすぎず、あくまで最高裁判事であって別にトランプのシンパというわけではないので、そこは思惑通りには機能しなかったらしかった。
 いくつかある判決の中で特に興味深いと思われるのは、ざっくりいうと「負けた後で選挙のやり方を訴えるな」というものがあって、これなどは敗けた側が延々と蒸し返すことで政治的な空白が生じることを避ける意図がはっきりと見てとれる。
 ネットの論調で、ときに一つでも不正がはっきりすれば、選挙全体を無効にしてやり直すべきだというものがあるけれど、さすがにそれは無理なようである。もっというと、選挙の手続きに実際に不備があったとして、次の選挙での改善を義務づけられるとしても、今回の結果を遡って破棄し、再投票にまで裁判所が踏みこむことをないと思われる。選挙の結果とはそれだけ重く、裁判所もよほどのことがない限り、そこまでは介入しないものであるらしい。

 裁判といえば、テキサス州の司法長官が激戦4州の選挙結果の無効を連邦最高裁判所に訴えてこれに共和党の州と大統領が同調し、民主党の州が反発して南北戦争みたいになったこともあった。
 これは日本でもけっこう話題になり、ネットでは「4州の選挙制度の変更が正規の手順に則っていないことが訴因なので、この場合はテキサス州に立証の責任はなく、4州の方が手続きの正当性を証明しなくてはならない。それは不可能なので、この裁判はトランプ勝利確実」とえらく盛り上がっていた。
 訴える側に立証の責任があるのは裁判の大原則であって、訴えられた方が証明しなくてはいけない裁判なんかありうるのかと思ったけれど、これはそもそも州の境界で揉めた場合などに連邦裁判所が調停する枠組みのものであって、よその州の選挙結果にまで踏みこめるものではないらしく、こちらも棄却されている。

 投票については、ドミニオンという集計機が不正に関与したという疑惑もあったけれど、再集計ですぐ露見するような不正を施すのもバカバカしく、なんだかよくわからない話である。再集計で数百の違いは生じるものらしく、その範囲でなら数字を操作する意味はあるかもしれないけれど、万単位で差がついている場合はどうしようもない。
 ドミニオンについては、このサーバーをめぐってフランクフルトでCIAと軍が銃撃戦になったというツイートがトランプ陣営のスタッフからなされ、一時、ネットは騒然となった。結局、関連各所がこれを否定して鎮静化されたが、報道をいちいちフェイクニュース呼ばわりするわりに、ここから出てくる情報は突飛なうえになにを目論んでいるかも意味不明なことが多く、まじめに付き合うと本当に大変である。

 それから、大統領選挙には厳密は直接選挙というわけではなく、州ごとの投票で選挙人を選び、その選挙人が最終的に大統領を選ぶというやや込み入った手順を踏むことになっている。無論、これらは手続き上の問題にすぎず、ここで当事者たちが恣意を働かせてしまえば、選挙の意義そのものが失われてしまい、民主主義の根本を問わかねないことになってしまう。戦前の日本の統帥権干犯どころでない問題をはらんでいるののだけれど、かかる懸念はさほど斟酌されないようである。
 州ごとの選挙人の選出、選挙人による投票にいちいち介入しようと試みては、ことごとく失敗している。
 州の決定とは異なる候補に投票する選挙人は「不誠実な選挙人」と言われており、以前から存在はしている。前回の大統領選挙でも、トランプに投票しなかった共和党の選挙人がいたという。これらはあくまで結果が変わらないことを前提としつつ、個人の主張としてなされるものらしい。結果が覆すために行われてしまうと、選挙制度そのものの破綻を招くことになる。そういう暗黙の了解があるためか、状況がここまで緊張している今回は、むしろ不誠実な選挙人が生じなかった。

 また、この選挙人の投票を仕切るのが副大統領の職務ということになっているらしく、ペンス副大統領がこの手続きをとらなければ、大統領の選出は下院議員による州ごとの投票となり、この場合はトランプが選ばれるという説もまことしやかに囁かれた。
 当然、これもあくまで慣習上の職掌であり、結果が気に入らないからといって副大統領に破棄する権限があるわけでないから、これも規定の通りに進行しただけとなっている。

 つくづく律儀なものだと感心するのは、こうしたポイントごとにネットでは、「おー、やったぜ! トランプ逆転間違いなし!」といちいち盛り上がっていることである。といって、実際になにかいつもと違うことが起きるわけではないから、そうした期待はすべて不発に終わっているのだけれど、「すっぽ抜かされっぱなしじゃないか!」と怒り出すこともなく(そういう人は黙って離れていくだけだろうけれども)、次のトピックで再び、「今度こそすべてがひっくり返る」とひたすら期待が高まる。
 結局、なされた試みはすべて失敗したし、成功の可能性が垣間見えたものすらなかったけれど、とにかく次々とネタが投下されるので、うまくいったことがなにもないという現実と向き合うことがないまま、延々と与えられるトピックの消化にかかっている様子は、いかにも情報化社会といえた。

 傍からすると負けがこんで追い詰められている一方にしか見えないのだけど、本人たちとしては最後の決定的な勝利にむけてどんどん状況が整っていっていることになっているらしい。ギャンブルで泥沼にはまって最終的に借金で首がまわらなくなる人間の内面とはこういうものかと興味深い。
 次第に最終的な達成すべく目標みたいなものが見失われていき、どんどん選挙の結果を覆すことだけが目当てになっているみたいで、見ていられないものがあるけれど、身内の結束はますます高まっているようである。

 それもこれも悪魔崇拝の小児性愛者からなるアメリカの影の政府、ディープステートに対してトランプが孤立無援の戦いを挑んでいるがゆえの苦難の行軍だということになっているらしい。民主党の大統領およびその候補者たちは当然のようにこのディープステートのメンバーであり、トランプ勝利の暁にはオバマやクリントンやバイデンたちはそろってクオンタナモの監獄へぶちこまれるそうである。
 オバマのツィートがしばらく途絶えたときには、すでに収監されたとまでされていた。裁判なしに収監などありえないし、前大統領なら拘置所送りもない。在宅起訴になるはずだけど、そうした前提は「国会の非常事態であるため」すべてすっとばしてひらすら自分たちに都合のいい妄想が自在に展開できてしまうのである。その後、オバマのツィートが再開されても、「本人によるものではないかもしれない」とされていたが、それを言うなら激務のはずの合衆国大統領があんなにツィートばかりやっていられるのだって十分におかしいはずである。

 ディープステートは陰謀論のありがちな秘密結社としてはベタすぎて、あまりに胡散くさすぎるけれど、いわゆるワシントン人脈というものはたしかに存在すると思われる。それはいわゆるアメリカのエスタブリッシュメントであり、たとえば映画『ソーシャルワーク』で描かれたように、有名大学の有力な寮をへて社会に出てきており、代々その大学に多額の寄付をしてきた富裕な家柄の出身でもある。きわめて閉鎖的で濃密なコネクションを形成しており、下の階層から這い上がってそこへ加わることは容易ではない(とはいえ、不可能でもないっぽい)。
 ただし、人間の形成するあらゆる集団がそうであるように、そこでも競合や対立や妥協があり、めまぐるしい離合集散もある。共通の利益については外部に対して口を拭って沈黙を決めこむだろうけれども、決してお話に出てくるような絶対的な統制されている組織ではないのだから、合衆国大統領ともなれば、そこに食いこんでそのうちの一派と協力関係を結び、互いに利用しあいながら国政を執ることも可能だったはずである。

 ただし、メキシコとの壁建設といい、トルコのエルドアンへの働きかけといい、北朝鮮との交渉といい、トランプのやり方はムシのいい見通しをもとにできもしないことに手を出した挙句、うまくいかなくて後始末もせずすべて放り投げるという日本の民主党政権未満の素人政治だったので(実は選挙結果を覆そうとする試みもすべてこのパターンを踏襲している)、そこからも見限られたというのが実態だったと思う。
 さらにまた、なにか気に入らないことがあると罵詈雑言を浴びせた挙句、ツイッターで解任を宣告してくるボスのもとでモチベーションを保ちつつ仕事をするのは困難に違いない。

 個人的に転機だったと思うのは、トランプに解任されたボルトンが回顧録を出版したことである。現政権の内幕を暴露すれば、国家の安全保障を損なうという批判は当然あり、それはまったくその通りといえるのだけれど、特に圧力をかけられた形跡もなくふつうに出版され、相当にえぐいやりとりが書かれているにも関わらず「まあ、そんなものだろうな」と受け取られただけに見えた。
 ある意味、ひどくハードルが下がっているので、合衆国政府内部にそぐわないやりとりが露呈したとしても、なんとなくそのことに不感症になっているようだった。なにが世界最強の覇権国家の政権中枢で話し合われるべきことなのか、その線引きがあらかじめ失われてしまっているように見える。

 さて、アメリカではいよいよ1月6日を迎えた。選挙人選挙が集計され、結果が公表される。本当はとっくに昔に明らかになっているのだけれど、手続き上の公式な発表日は本日である。共和党の一部の議員はその結果に異議を表明するとされているが、あくまでポーズにすぎず、これまで通り承認されるだろう。
 戒厳令の発布が言及されているが、軍は選挙の結果に関わらないと再三にわたって声明を出している。選挙に負けたからといって戒厳令を出しても、かなり以前からレームダックと化していた大統領に従うところはなく、逆に窮地へ陥るのは大統領本人だろう。ダメ押しで、存命の元国防長官が連名で軍に関与しないよう声明を発表しているが、当の軍からすれば余計なお世話に違いない。
 トランプはデモを呼びかけ、相変わらず思わせぶりなツィートをしているが、今回もこれまでと同じく結局はなにも起こらないと思われる。

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