mixiユーザー(id:5019671)

2020年11月12日22:17

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【「御社」と「貴社」の使い分け&「当社」と「弊社」の使い分け〈5〉】

 下記の仲間。
日本語アレコレの索引(日々増殖中)【24】
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1977236645&owner_id=5019671

mixi日記2020年11月12日から

 下記の続き。
【「御社」と「貴社」の使い分け&「当社」と「弊社」の使い分け〈4〉】2020-11-11
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12637385995.html

 よくわからないので、質問してみた。
【ビジネスメールの書き言葉として、「御社」と「貴社」について その2】2020/11/06
https://oshiete.goo.ne.jp/qa/12001679.html

 No.7ですばらしいコメントをいただいた。
 ごくまれにでもこういう収穫があるので、質問サイトでガチャガチャやるのもムダではない。
===========引用開始
No.2です。
失礼とは存じますが、追記させていただきます。

>ネット検索すると、そういう主張が多いようです。
>当方は、このテのサイトの主張はウノミにしないことにしています。
>どんなに断定的に書いてあっても、典拠がないので。

ということなので、以下の説明が根拠の参考になれば幸いです。
(ただし、ご質問者が飯間浩明氏ご本人である場合、私にはどうにもできません)

日本語学者、辞書編纂者で『三省堂国語辞典』編集委員である飯間浩明氏によれば、

1.「御社」も、もともとは手紙でも使われていた文章語で、口語では「お宅の会社」「そちらさま」が普通だった
2.80年代に「おたく」に「特定の趣味にのめりこんでいる(内向的な)マニア〉」というネガティブな用法が登場した
3.このため、相手の会社を「お宅の会社」と呼ぶのもためらわれる雰囲気が生まれた
4.「おたく」が差別的な語感を伴うこととなったため、90年代には代わりの言い方として、文章語だった「御社」が好まれるようになった

ということのようです。↓
https://kangaeruhito.jp/article/3574
https://kangaeruhito.jp/article/3575

この経緯からすると、「御社」を「書き言葉」として使用しても、「誤り」とまでは言えないのかも知れません。
前回の回答にも書きましたが、まさに「ことばは活きもの」なのです。

>〈読んだ受け取り手が不快な気分になるかどうかで判断〉……それは想像するしかないのでは。

全くおっしゃるとおりなのですが、ビジネスの世界ではその「想像」を全力でやっておられる方が大勢いらっしゃるのも事実です。
しかも、「想像」ですから「確実性」があるとは言い難いのですが、「相手の立場で考える」ことはビジネスの世界では恒常的に行われおり、事業者であれば、その優劣が業績を左右することすらあります。 
===========引用終了

 引用してくださったサイトは飯間氏の個人サイトではなく、新潮社のものらしい。こうなると、あまりヘタなことは書けない(笑)。
https://kangaeruhito.jp/
 〈4〉で検索したときにはまったくヒットしなかった。上位に来るのはビジネスマナー系ばかりで、かわり映えのしないものばかりで、いくら読んでもストレスがたまる一方だった。
 飯間氏のエントリーはかなり趣きが違う。
 要点は、↑の回答がまとめてくれている。気になった点を補足しつつ見ていく。

1.「御社」も、もともとは手紙でも使われていた文章語で、口語では「お宅の会社」「そちらさま」が普通だった
 これは相当古い話なんで、記憶がない。でも、記録があるんで逆らえない(泣)。どこまで一般的だったのかはナゾ。

2.80年代に「おたく」に「特定の趣味にのめりこんでいる(内向的な)マニア〉」というネガティブな用法が登場した
3.このため、相手の会社を「お宅の会社」と呼ぶのもためらわれる雰囲気が生まれた
4.「おたく」が差別的な語感を伴うこととなったため、90年代には代わりの言い方として、文章語だった「御社」が好まれるようになった
 これはわかる。このあたりの文章を読んでいると、男性が女性に「おたく」などと呼びかける例もあった気がする。

 同じ頃に登場したのが「面接の達人」などという面接マニュアル本だったような。
 そのテの書籍や雑誌が(当時はネットの時代ではなかったから)が〈話し言葉では「御社」〉というマナー(「エセマナー」と書きたいところだけど、やめておく)を広げたのでは。
 新たに湧いて出たマナーなので、当初は知らない人も多かった。飯間氏はいくつかの例をあげている。このあたりは、さすが学者の仕事で、素人の断定とは次元が違う。
・2003年の書籍で金田一秀穂氏が〈〔最近は〕「御社」というのもよく聞く〉と書いている(ちょっと遅い?)
・作家の丸山正樹氏(1961年生まれ)ツイッターで〈社会人になって初めて「御社」なる言葉を知った〉と書いていた
・飯間氏(1967年生まれ)も、だいたいそんなところだったと記憶している
・大正期の文献にも「御社」が見られる
・1923(大正12)年の『女工哀史』の例もあげている
※日国がひいている例(たいてい初出)は大正5年
https://kotobank.jp/word/%E5%BE%A1%E7%A4%BE-455811

・『言語生活』83年12月号にのっている投稿には、オンシャと言われてわからなかった、とある
===========引用開始
 ところが、その後、「御社」は口頭語として急速に広まります。「大人の流行語」と認識されたのはこのためです。織田裕二主演で映画化もされた杉元伶一「就職戦線異状なし」(90年)では、就職面接で「御社」を決まり文句的に使う学生が描かれます。 
===========引用終了
 たしか書棚にあったな(笑)。
 こうして。90年代には「御社」は話し言葉として広まっていく。
 〈2〉で引用した文献を再掲する。 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 敬語の専門家は下記のように書いています。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1824714512&owner_id=5019671
================引用開始
 なお「貴社」の意で「御社」と使う人がいますが、これは比較的新しい言い方で、一種の社会方言なのでしょう(私自身の語感では抵抗があります)。(P.65)
================引用終了 
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
http://kotobank.jp/word/%E5%BE%A1%E7%A4%BE?dic=daijisen&oid=02669850
===========引用開始
おん‐しゃ 【御社】
相手を敬って、その人が属する会社などをいう語。書き言葉では「貴社」を使うのが普通。→貴社
◆同音の言葉が多く紛らわしい「貴社」に代わり、主に話し言葉において使われ始めた。1990年代初めころからか。 
===========引用終了
『敬語再入門』の原本の発行は1996年。学者の世界は、こういう話は一般より少し遅い気もする。
 そう言えばmixiでも下記のようなコメントがあった(2014年09月02日)。
http://mixi.jp/view_bbs_comment.pl?comment_number=238&community_id=222342&bbs_id=11795092
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「御社(おんしゃ)」に関するご質問ですね。私が大学区卒業後にサラリーマンになった最初の職場が経理部でした。今から42年前です。毎日のように来社する取引先の銀行、証券会社の営業担当者が皆、私の会社のことを「おんしゃ」と言っていました。最初は、どう漢字で書くのか当惑しましたが、6年先輩に「ああ、それはね…」と教えてもらったのです。 
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私は1984年に社会人デビューですが、当時「御社」は自然に広く流通していたように思います。
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 この使用例はかなり古い。個人の記憶でしかないが、参考ぐらいにはなるだろう。

 いずれにしても、90年代に使われはじめた「御社」がこんなに短期間で定着し、現在では〈話し言葉では「御社」〉が相当強力なマナーになっている。現在ネット検索するとそんな主張ばかりなのはしかたがない面もある。あのテの記事は、伝言ゲームの再生産でしかないから。
 すでに書いたように、「濡れ衣御三家」「濡れ衣新御三家」の例もある。
【濡れ衣御三家〈2〉 新御三家登場(笑)】
https://ameblo.jp/kuroracco/entry-12210196959.html

 ただ、〈「御社」話し言葉説〉は、ネットの普及より前の時代の気がする。これはやはり大先輩では。
 結局、たとえいい加減なマナーでもここまで普及してしまったら、論理ではどうにもならない。
 従うのが無難でしょうね。
 たださ。「御院」「貴院」も使い分けるべきなの? 「御会」「貴会」も使い分けるべきなの? それはさすがに勇み足じゃないかね。
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