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2020年10月26日23:01

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コロナ禍のネット界隈

 新型コロナが猛威をふるい始めたころ、当然のようにネットでもどのように対応するかという話題で盛り上がっていた。なにもわかっていなかった時分の素人同士の話だから、当たり前ではあるけれど、論としてはもっぱらきわめて厳格なロックダウンと放置でほぼ二分されていた。

 もちろん、どちらもありえない。感染拡大を阻むための移動の制約は、経済活動とトレードオフの関係にある。さまざまなインフラに依存して現代の活動というものが成立している以上、厳格なロックダウンは単純に生活の破綻を意味している。電気・ガス・水道の維持、あるいは、食料品や医薬品やその他の生活必需品の流通がなければ、われわれは生命すら危険な状況に陥ってしまうし、あらゆるものが相互に関わっている以上、なにが必要でなにが必要でないかの区別すら実は明らかではない。
 例えば、手前味噌ながらとりあえずドラム缶なんかなくてもよさそうなものだが、二大顧客の一方は燃料・エネルギー系の企業である(もう一方は薬品・化学系)。つまり、ドラム缶がなければエネルギーの供給にもそのうち支障をきたしてしまう。そういう業種は実は意外と多いはずである。

 放置はイギリスがやりかけて、すぐやめた。ブラジルはやった。アメリカはある意味やっている最中だが、あの通りである。スウェーデンはやりきったのかもしれない。いずれにせよ、途中でやめた場合も含めて被害は甚大だし、他国で凄惨な状況が現出しているのに、政府の対応としてなにもしないのは無責任の極みといえる。そして、ネット上で放置を唱えていた人たちも結果について自身がなんらかの責任を負うつもりなどなかったろう。

 つまり、必要な議論は上の二つの極論の間のどこに立ち位置を定めるかということだが、では、どこに定めるかといえば、それすら最初の段階ではわからないのだから、とりあえず、まずは便宜的にスタンスを決め、そこから感染が広がるようなら制限を強めていくし、許容範囲に収まるようなら緩めていくということになる。

 これをもっと具体的に掘り下げると、

1.どの指標を参照して、
2.どのタイミングで、
3.どのオプションを選択するのか、

 その仕組みを設計していくのが必要ということになる。さらに、新型コロナの詳細について仮説を立て、検証を重ねて解明していくという作業も並行して進めていかなければならない。

 現在、大筋でいって各国の対応は上のようになっていると思う。まだまだわからないことが多い以上、それぐらいしかやることはないともいえる。そして、こういうある程度の構造を伴った内容について、ネットでやりとりされることはほとんどない。どういうわけか、あそこで飛び交っているのはひたすら断片なのである。あらゆる議論は深められないまま、ひたすら次のトレンドへと横滑りしていく。
 データのフォーマットとして、ネット上のテキストは完全に書籍を代替できるはずなのだけど、意外とその方向へは向かわない。もっぱら賽の河原に石を積むようなやりとりが続いていく。

 その様子を眺めながら、以前から考えていたのだけれど、ネットというところは暇で沸点の低い人から順番に発言してくところにすぎないのではないかという思いが強くなった。
 ネットはきわめて多くの人に開かれているけれども、そこでの主な潮流をなすものは明らかに偏っている気がする。あれは世論のうちのごく特殊な部分が姿を現わしているのであって、全体の縮図ではないのではあるまいか。

 建前ではなくて、匿名で本音を語るところという指摘があるかもしれないが、過度の攻撃性や敵と味方を決めてからそれに応じてロジックを組み上げていくスタイル、事実と願望の違いが判然としない論調などは、誰もが内包しているものというより、ある一群の特徴づけられたパーソナリティを想起させる。新型コロナへの対応についていえば、当初はわからないことが多すぎたのだから、まずは慎重に安全策を講じてから、わかったことについて順次に手当をしていくしかないと思うのだけど、とりあえずなんらかの結論を求めるような調子が多かった。ペンディングという宙ぶらりんの状態が受け入れがたいように見えた。
 職場その他で付き合いのある人々が、内心ではあのように思っているかどうか考えてみても、各人について掘り下げていくともっと拡散していって、こういうところへ収束する気がしない。

 もちろん、これは少しくきわどい仮説である。自分にとって望ましいニュースが流れてこないからといって、メディアをひとまとめにして「マスゴミ」と決めつけてしまうような危うさがある。メディアも内実はさまざまで、当事者間のせめぎあいもある。それをあたかもいずれかに存在する統一的な意志のもと、寸分たがわず一斉に同じく振る舞っていると考えるのは馬鹿げている。

 とはいえ、みなが同じく内心ではああ思っていると考えるのも憂鬱なので、当面しばらくこの線に沿ってネット上のテキストを読んでいくつもりである。

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