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2020年10月13日21:07

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ドナルド・トランプ

マイケル・サンデル教授の『ハーバード白熱教室』は初めもっぱら哲学のごく基本的な問題を扱っていたけど、後には時事的な問題も扱うようになっていった。トランプ大統領について討論した回もあって、内容はほとんど忘れてしまったのだけど、支持派も否定派もアメリカの現状と将来についてかなり悲観的だったのが印象に残っている。

 失われた20年を過ごした日本と違って、いわゆるGAFAなどの巨大IT企業が経済を牽引しているアメリカに不安な要素など微塵もないと思いこんでいたので、意外だった。
 つまるところ、中間層がみるみる崩れていって格差が広がっていることが、彼らの問題意識の根本らしかった。経済が順調といっても、最上層にますます富が集中しているだけで、別にそれが国の中を行き渡っているわけではないという苛立ちを感じた。

 結果として、アメリカの政治を担ってきたエリート、エスタブリッシュメントへの信頼が完全に失われてしまっていて、それがトランプへの支持につながっているようだった。支持派であっても、トランプの大統領としての資質を積極的に肯定している様子は見えず、あくまで既存の政治への不信の大きさが、トランプを支持するかどうかの分岐点になっているようだった。

 選挙の結果が出てから、なぜヒラリー・クリントンが負けたと思うかのインタビューに「あいつは嘘つきだから」と答えた有権者の映像を見たことがある。彼女については、私的なメールアドレスを公務にも流用していたことが選挙期間中には攻撃されていて、そのセキュリティへの意識の甘さはたしかに責められるべきとはいえ、それをもって「嘘つき」とするのはやや飛躍があって、むしろ、その背景に横たわっている支配階層への懐疑の根深さを見た思いがした。

 一方、トランプは大統領就任後も発言が支離滅裂で、そこが民主党やマスコミからも格好の批判対象になっているのだけれど、民主党の選挙活動の最前線にいる人間が、そうした党の中央の振る舞いについて「逆効果だからそうすべきではない」と苦言を呈していたのが、記憶に残っている。
 彼の支持者にとって発言の矛盾は欠点ではなく、むしろ、そうした旧来の権力からの批判こそが彼の正しさを証明するものに映っているらしかった。
 今からすると、そうした層はエスタブリッシュメントだけではなく、マスメディアへの信頼も失ってしまっていたように思う。実際、日本でも「マスゴミ」という言葉が頻出する界隈では、トランプが持て囃されている傾向が強い。

 大統領としての実績は、支持者の期待に応えるものではなかったと思う。多くの話題を振りまきはしたものの、実際に解決へとこぎつけた案件はほとんどない。他にも、多民族国家のトップの地位にありながら、国内の分断を助長するような発言をくり返したのは大問題で、Black Lives Matterについてのデモが頻発しているのは、コロナによる移動制限で人々のストレスがたまっているという背景を考慮しても、彼のこうした言動が騒乱にいたる雰囲気を醸成していることは否めない。

 再選の可能性は低いと言われている。もともと劣勢だったが、コロナに感染したのがトドメになったと思う。すぐに復帰してタフネスぶりをアピールするつもりだとの憶測もあり、実際に異様な速さで公務へ戻ったが、あれだけコロナを軽視した言動をくり返しながら未認可の薬品を投じてすぐ戻ってくるというのも、なんとなく間抜けさが際立っただけのようである。

 もっとも、落選はすでに折りこみ済みで、そこから郵便投票に不正があったと主張して、裁判に持ちこむつもりと言われている。副大統領同士の討論会で、選挙に負けたら滞りなく政権を返すのかという問いにペンスが頑なに答えないという謎の振る舞いがあり、また一筋縄ではいかない感じがしている。
 良くも悪くも超大国アメリカの大統領の言動は世界中に大きな影響を及ぼす。自分がアメリカ人だったら、憂鬱だったろうなと思うだろうけど、違うから気にする必要はないというわけにもいかなそうなのが、困ったところではある。

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