<お茶の間政治学:解散風を考える>
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出来レースの自民党の総裁選に続いて、衆議院の解散風が吹いているようです。
どうも現在の安倍政権は、本来は国会で議論を尽くすべきところを回避し衆議院の解散で対応してきたようです。
2014年には「アベノミクス解散(名目:アベノミクス推進と消費税引き上げ延期)」を行い、2017年には「国難突破解散(名目:消費税の使い道見直しと北朝鮮への対応)」を行いましたが、いずれも支持率が回復傾向にある中で野党の混乱状態を狙った「大義なき解散」という見解があります。
[憲法にみる衆議院の解散]
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衆議院の解散は「総理大臣の専権事項」という決まり文句があり、衆議院には「常在戦場」というキャッチフレーズもあります。
しかし実際のところ、憲法においては具体的に解散に言及しているのは第69条のみで「内閣は、衆議院で不信任の決議案を可決し、又は信任の決議案を否決したときは、十日以内に衆議院が解散されない限り、総辞職をしなければならない」と定められています(第69条解散)。
一方で憲法の第7条3号には「天皇は、内閣の助言と承認により、国事行為として衆議院の解散を行う」旨が定められています(第7条解散)。
この第7条が内閣(総理大臣)が任意に衆議院を解散することができる根拠になっていますが、これはあくまで天皇の国事行為(儀式)を定めたもので、常識的にはむしろ「象徴天皇が勝手に衆議院の解散を行ってはいけない」という縛り以上でも以下でもないと考えるべきではないでしょうか?
これはむしろ国事行為を行う象徴天皇を定めた日本国憲法の不備であり、「衆議院の解散権を明確化し濫用を制限すること」が憲法改正の喫緊の課題とも言えます。
[選挙制度と民意の反映]
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下記は現在の選挙制度の元での2017年の与野党の「総得票率」と「獲得議席率」です。
総得票率
自民党=小選挙区:49% 比例区:33% 単純平均:41%
公明党=小選挙区: 2% 比例区:12% 単純平均: 7%
野党他=小選挙区:49% 比例区:55% 単純平均:52%
獲得議席率
自民党= 61%
公明党= 6%
野党他= 33%
獲得議席率では与党の圧勝ですが、当時あれだけ混乱した野党側の方が民意(総得票率)では勝っているのも一つの事実とも言えます。
必ずしも民意を正確に反映していない議席率に便乗して、色々な制度を自らに有利に変えていくという循環があるとすれば、本当は「選挙制度はこれで良いのか?」という古くて新しい問題にもう一度立ち返らなければならないようにも思います。
[まとめ]
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今般、菅内閣が発足することになりますが、安倍総理が辞任を表明したことで政権への支持率が持ち直しているのを追い風に「国民の信を問う」という形で、衆議院の解散と総選挙の実施が取り沙汰されています。
しかし上記したような「解散権の濫用」を許す憲法の不備と、「議席数が民意を反映しない」という選挙制度の不備は、主権者たる国民にとって二重苦と言えるのではないでしょうか。
(おわり)
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