明日は勤務日なので、本日中に三冊目を挙げておきます。今回取り上げるのは大昔に講談社から出て、その後、1996年7月1日に朝日文庫から復刻したディーン・R・クーンツ先生の『ベストセラー小説の書き方』です。
これから作家を目指す人は勿論必読ですし、巻末に記された読書ガイド「読んで読んで読みまくれ」を含めて、エンターティメント小説の読み方としても非常に優れた内容でして、一時期はモダンホラーの旗手として、あのスティーヴン・キング御大とも肩を並べていた時期もあった程の売れっ子でして、日本でも本書の中で再三に渡って引用される『ウィスパーズ』(ハヤカワ文庫NV モダン・ホラーセレクション)を初め、最高傑作の一つでは無いかと思っている『ウォッチャーズ』(文春文庫刊)日本でも一時期は随分と邦訳が出された作家さんですが、兎に角具体的でありまして、小説を書くと言うことはどんなハードな肉体労働よりも過酷な事。動機についての重要性、ストーリーラインの組み立て方、ヒーローとヒロインの描き方等微にいり細に渡る名著であります。
本書を読んで一番影響を受けたのは「登場人物にありそうな動機を与える」と言う一章でして、自分が小説や映画を読んだり観たりするときの最重要項目が「動機」と「舞台設定」の二つでありまして、ちょっと本から離れて何ですが映画『ゆりかごを揺らす手』のヒロインの友人が不動産屋さんだと言うことが、物語の進行に大きな役割を果たしたり、一番凄いなぁと唸ったのはインド娯楽映画の最高傑作だと信じて疑わない『きっとうまくいく』の出産シーンで使われた「あるもの」の必然性でして、普通は映画に為らない素材を使って見事なシーンに仕上げているのであります。
「動機」で忘れ難いのは、横溝正史先生の『女王蜂』での、戦前でしかありえない動機でありまして、映画ではこの動機の部分が歪められてしまったのが非常に残念であります。
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