mixiユーザー(id:8729247)

2020年03月26日08:54

318 view

コウノドリ30巻はNICU

わたくしは小児科ではないが、産婦人科として大きい病院に勤務してきたんで
必ずとなりにはNICUがあった。
ウチで生まれた子をみてもらったり、他から搬送されてきた子をみていたり。
NICU勤務するうちにストレスからメニエル症候群になった同僚もいれば、
限界を感じて(たぶんね)小児科医をやめ保健所所長になった後輩もいる。
だから30巻の内容はよくわかる。
命に関わる重症の赤ちゃんが生まれたら命を救う努力をするのは当たり前。
でも「命さえ助かればそれでいい」のか?
新しく家族の一員になった赤ちゃん。
一番最初から入院になって家族の触れられない、場合によっては顔も見れない、
そんな場所で長く過ごしたら、もし運よく「命が助かっ」たとしても
家族の一員になれないんじゃないのか?
人工保育で育った野生動物が群れに戻れないみたいに。
確かに重症疾患を持つ赤ちゃんの治療や看護は難易度が高い。
家族という名のシロウトに手出しができる分野ではないし、
場合によっては口出しもしてほしくない、と専門の人間が思うのもわかる。
でも、この30巻にもあった通り、
「NICU卒業できたらそこから赤ちゃんの生活が本番を迎える」のだ。
本番のためには予行演習も必要だ。
その予行演習を手伝うのも実は医療側の大事な仕事なのだ。
家族ごとに事情が違うから、大変だろうと思う。
普通の小児科の先生方でさえ「親御さんに説明するのが一番大変なストレス」という。
中には「子のことをとても大事」に思っていない?という親御さんもいる。
その意味では、30巻に出てきた親御さんたちは「子が大事」
「子のためならがんばる」親御さんたちで、ちょっとくじけたりもするけど
なんとかやれそうなお話だ。
世のなか、そんな都合いい話ばかりでないのをわたくしは知っている。
NICUを卒業したあと育児放棄されて亡くなった赤ちゃんも知っている。
「そんな子、産まれないほうがいい、どうせまっとうな大人になれない」
「生まれたときに殺してもらえばよかったのに」
「きょうだいの結婚のときそんな子が身内にいたら破談になる」
そういう心無い言葉も聞いた。

きれいごとな世界ではない。
育児はそれだけで大変なのだ。
ましてや他の子にない病気がありケアが必要だとしたら…。

でもわたくしはこう思う。
赤ちゃんには、無限の未来がある。
少なくても生まれた瞬間はどんな未来が待っているかわからない。
どんな未来もある意味思うがままだ。
そんな存在は赤ちゃんだけ。
だからできるだけ守りたい。
赤ちゃんの無限の未来をできるだけ広い範囲で残して
自分で自分の未来を選べるようにしてあげたい。
きれいごとでもなんでも、そう信じている。
そう信じないと、赤ちゃんを扱う医療に関わることはできない。
36 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2020年03月>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293031    

最近の日記