「女は二度決断する」等で知られる、ドイツのファティ・アキン監督の最新作は、1970年代に実在した連続殺人鬼、フリッツ・ホンカの物語。
安アパートの屋根裏部屋にすむフリッツは、「ゴールデン・グローブ」という、クソダメみたいなバーの定連。そこに迷い込んできた女性に声をかけるが、彼を相手にしてくれるのは、年寄りの売春婦だけ。そうした売春婦を部屋に連れ帰っては、痛めつけ、セックスし、惨殺するのが、彼の日常茶飯だ。惨殺し、死体をバラバラにしたものの、どこかへ捨てに行くのも面倒で、押し入れの奥に押し込んで、死体の腐敗臭に耐えつつ、酒を浴びるように飲んで、暮らしている。
年老いた売春婦の惨めな境遇と、その彼女らを餌食にするしかない、フリッツの鬼畜ぶりを、これでもか、これでもかと描く、ハッキリいって、そのくそリアリズムに、辟易とする。楽しいシーンも、美しいシーンも、何ひとつなく、あるのは、冷え冷えとした人の孤独と、場当たり的で、虚無な、最低男の、のたうち回るような、唾棄すべき、日々の暮らしのみ。
しかし、そのフリッツの悪行も、ある日、唐突に、終わる。彼の住むアパートで、小火が起こり、駆けつけた消防夫と警官たちらによって、押し入れの中の、腐敗した死体の山が、発見されるのだ。獲物にしようと、若い女をつけ回していたフリッツは、あえなく逮捕されて、映画は終わる。
殺戮シーンが怖いのではなく、人の心の、深い闇が怖い、映画である。
ヒューマントラストシネマ有楽町で、観た。新宿武蔵野館でも、やっている。
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