フランス南東部のオートリーヴという村で、郵便配達員のジョゼフ=フェルディナン・シュヴァルが、33年間かけて、たった1人でつくりあげた「シュヴァルの理想宮」。その実在の奇想建築の、いわば誕生秘話である。
シュヴァルは寡黙で、不器用な男。孤立し、赤貧にあまんじる彼の唯一の趣味は、アンコール遺跡やマヤ遺跡等、世界各地の奇想建築の記事や絵はがき等を、集めること。結婚し、子供も出来たが、愛娘アリスへの接し方がわからない彼は、愛娘のために、おとぎの国の宮殿を、自宅に隣接する空き地に建てることを思いつき、実行に移す。郵便配達の仕事の合間に、石を集め、仕事後のすべての時間を使って、村人に馬鹿にされながらも、コツコツと、理想宮をつくり続ける。ところが、その愛娘は病気で、あっけなく、この世を去り、シュヴァルは絶望のどん底に落とされる。しかし、妻の励ましもあって、彼は天国の娘のための宮殿づくりを、再開する。
そして、33年もの月日は流れ、宮殿はついに完成するが、妻も、すでに、この世の人ではなくなっている。シュヴァル自身にも、その人生の終焉の時は、迫っていた。しかし、シュヴァルの理想宮は、1969年に仏政府によって、国の重要建造物として認定され、今も、訪れる多くの人々を、魅了し続けているのである。
人の見果てぬ夢の具現化であるシュヴァルの理想宮は、人の愚かさと素晴らしさを、一緒に、ギュッと詰め込んで、今もそこに建っている。いい映画だ。
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