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2019年09月27日00:28

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パンツを脱ぐ


 穴熊に囲った後で、その穴熊囲いの桂が跳ねてしまうことを

 「パンツを脱ぐ」

 というが、それに近い形なのかな?

 昨日、私が予想した封じ手は「7五歩」だったのだが、一連の攻撃手順の中での「7四桂打ち」が封じ手だった。この封じ手はおおよそ予想の主軸であって、読みの本筋なんだろうが、ひねり出すのに2時間を超える大長考はちょっと微妙に思える。

 封じ手そのものが大勝負、と考えて熟考に熟考を重ね、勝負のターニングポイントになる手を封じ手にしたのかもしれない。確かに、昨日のうちにこの桂馬を打ってしまい、次の手を木村九段が封じ手にしていたら、名人は夜も寝られなかったかもしれないが、個人的にはもっと早い段階で7七桂とぶつけた手がパンツを脱ぐような手で、豊島名人の研究手順だったのだろうが、やや軽率だったように思う。
 もう一つこれも昨日のことだが、せっかく後手番の木村九段が手待ちをして玉を行ったり来たりしている間に、1筋の端歩の突き捨ては入れておきたかったし、できれば2筋の突き捨てももっと早い段階で実現すべきだったのではないだろうか?
 解説に入った佐藤天彦前名人が、「調子を落としているのでは」とコメントしていたが、そういう雰囲気はある。勝ちを焦った、と言うと言いすぎかもしれないが、この一局で負けると連続してタイトル防衛に失敗。自分の形で、主導的に勝利にもっていきたかった、と思っても当然だろう。
 もう一点感じたのは、どこかで自陣に手を入れる、という手順が必要だったと思う。結果的だが、7六の拠点の歩から、7七への銀の打ち込み、さらに6九へ王手での角を打ち込まれて、大方勝負が決まってしまっていた。この7筋の歩を消していれば全然違う将棋になっていただろう。
 攻撃的なスタイルは豊島名人の持ち味なんだろうが、攻めたり守ったりのリズムがうまい棋士はやはり強い。膨大な事前研究を基にして、序盤でリードを作って先手必勝で攻撃していけば高い勝率になるのだろうけど、おそらくそのスタイルと木村九段の柔軟な受けの形の相性はよくないのだろう。相手が違えばすんなり防衛できていた可能性は高い。
 また、竜王戦の挑戦者決定三番勝負と合わせて、今回のタイトル戦を含めたいわゆる「十番勝負」の中で木村九段が「成長した」部分はあろうと思える。強力な攻撃的スタイルに対してこれまでにない柔軟な姿勢で受けて立つ、という形をとっていくことが攻撃をかわし反撃の機会を得るということなのだろう。この十番勝負は5勝5敗のタイであり、竜王戦の挑戦者は豊島名人が確保していて、将棋界の2大タイトル獲得への挑戦権は名人が持っている。木村九段と「どちらが強い」みたいな話は愚問だろう。どちらも強い。ただ将棋のスタイルが明らかに違う。

 今日の一番で、成り銀を作り、と金を作り、成圭も作る、という戦術は明らかに負けない戦法に見えるし、中段玉からその上部との連絡をもっていればどんな反撃も不可能、とも思える。先手の玉形が広く捕まりそうにない。
 そうだったはずなのだ。負けない将棋を指しているはずの名人が負けた。
 感想戦では端歩の突き捨てなどには言及されなかったが、1歩あれば全然違った将棋になっていたはず。研究に研究を重ねたうえでの序盤の駒組と戦術構想なのだろうが、実戦では相手がいるのだから、必ず研究手順にない手をひねり出してくる。研究と実戦の違い、みたいなものはきっとあろう。結果論でもない、パンツを脱いだような(敵に取られた)桂馬を5三に打たれ、常に5五歩からの中央での反撃を見せられながら、最後はこの圭が4五に跳ねたのが決め手になる。左桂を交換していなければ、そもそもこんな攻撃筋は生まれなかった。

 木村新王位は、解説が面白く、聞いていると将棋がわかったような気になる。まだ46歳。頭の中身を使う将棋というゲームでは、これからの人だろう。大いに活躍を期待したい。

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■46歳木村九段が初タイトル=史上最年長記録、豊島2冠下す−将棋・王位戦
(時事通信社 - 09月26日 19:01)
https://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=4&from=diary&id=5803471

 将棋の木村一基九段(46)が26日、東京都内で指された第60期王位戦7番勝負最終局で先手の豊島将之2冠(29)=名人、王位=に110手で勝ち、4勝3敗で王位を奪取、初の8大タイトル獲得を決めた。46歳3カ月での初タイトルは、有吉道夫九段(84)が1973年に棋聖位を獲得した37歳6カ月を大幅に更新する史上最年長記録。

 対局後、木村新王位は「うまく指せた気がした。うれしいです」と笑顔を見せた。

 豊島は5月に名人戦を制して3冠となったが、7月の棋聖位に続く失冠となった。

 木村新王位は千葉県四街道市出身。97年にプロ入りし、2002年の新人王戦で優勝。粘り強い受けの棋風で知られ、05年の竜王戦など過去6回、8大タイトルの挑戦者となったが、いずれも獲得はならなかった。

 昨年度後半から今年度にかけては名人戦順位戦でのA級復帰、竜王戦挑戦者決定3番勝負への進出など好調を維持。同決定戦で敗れた相手である豊島2冠を制し、「7度目の正直」で悲願の初タイトルを手にした。
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