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2019年07月12日07:20

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ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ

フレデリック・ワイズマン監督「ニューヨーク、ジャクソンハイツへようこそ」2015年

”緩めだけど誠実なドキュメンタリー監督”。「パリ・オペラ座のすべて」「ナショナルギャラリー」を観ただけではそこまで感想を固めなかったけれど、今回のこのニューヨーク郊外クイーンズ地区の街ドキュメンタリーを観てそう感じた。

「緩い」という程ではないので「緩め」。そう感じるのは、概して鮮烈な印象を与えるドキュメンタリーが多いからかもしれない。パンフによるとワイズマン監督は下調べは全くせずに長回しを沢山撮って、その中から良さそうなのをスタッフ達と共同で選んでいくスタイルらしい。良くも悪くも監督の思い入れとかアクが前面に出ないと感じる。でも、その緩さが私の肌感覚にはしっくり来るようで、この人の映画はもっと観ておきたいと思った。誠実と感じられるのも、変に編集の手を入れ過ぎないからだろう。

その昔クイーンズ地区に住んだこともあるのにジャクソンハイツのことは初めて知った。167カ国もの言葉が飛び交う文字通りの人種の坩堝ながら、コミュニティとしてしっかり機能していた街が、昨今は不動産投資のターゲットになり、大手資本の店舗を入れる為に今までモールに入っていた個人商店が続々追い出されていく。住民達も黙っておられず集会を開いて団結と共闘を呼びかける。この個人商店と大型店とのせめぎ合いが作品全体のモチーフになっているけれど、それ以外にもタクシー会社に就職する為の講習の様子(多文化に合わせて「ベンガル語では何・ネパール語では何」等と受講者一人一人に確認しながらきめ細かく教えているのが凄い)やパレードの様子、トリビアでは高年齢女性達の編み物の集まりでの世間話とかイスラム系?ベリーダンス教室の様子なども興味深かった。
特にベリーダンスでの腰の振り方は痙攣しているのではと思う程にウェストをプリプリさせていて凄い。十年位前だったか、コアリズムが流行って私もビデオを買って痩せようと連日励んでいた時期があったけれど、あんなのの比ではなかった。でもラテンダンスの腰の使い方はイスラム系の踊りの影響を受けているんだろうなとも思った。

サッカー戦ではテレビの前で皆で揃いのユニフォームを着てコロンビアを応援して勝つとどんちゃん騒ぎをしていたりで、167カ国と言っても母体になっているのは中南米出身者のようだったが、カトリック教会以外にユダヤ教施設やイスラム教施設をも映していて、施設ごとの性格の違いも浮き彫りになっていた。また、20数年前にフリオ・リベラというラテン系のゲイが殺されたことを忘れない誓いが”多様性に誇りを持とう”の合言葉と共にコミュニティ結束の求心力にもなっているのも興味深かった。

移民問題を始めとするアメリカが抱える問題に興味あるなら必見。
既にDVD化されているし一昨年の東京国際映画祭でも上映されたそうなのでレンタルでも観られそうと思ったけれど、来週キネ旬で上映される「ニューヨーク公立図書館」を観る前に観ておきたいと思ったのでキネ旬で観てきました。





関連日記
ナショナルギャラリー 2015年
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1940039986&owner_id=8658267
パリ・オペラ座のすべて 2012年
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