ワシントン郊外。主人が亡くなり、行き場のなくなった中年の庭師チャンスは町をさまようことに。彼は屋敷の外を知らず、草花をいじり続け、テレビだけを楽しみに生きてきた男だった。やがてチャンスは政治をも左右する財界の大物ベンジャミンと知り合う。無垢な心を持つチャンスはベンジャミンや彼の妻といった人々を次々と虜にしていくが……。天真爛漫な庭師を通じ、社会を風刺したコメディ。ピーター・セラーズが名演を見せる。(映画.comより)
<午前10時の映画祭>
久しぶりに行ってきました、午前10時の映画祭。この映画は、評判を聞いてビデオ(!)に録画したはいいけれど、未見のままここまで来てしまった作品。ピーター・セラーズは「ピンクパンサー」もちゃんとは見てないけれど、イメージとしてはコメディな感じ。
しかし、この映画の彼はとてもシリアス。たぶん生まれつき知能遅れ。お金持ちのご主人様に(子供のころ)どこかで拾われたか、あるいは名もないような使用人とかの不義の子だったか。ともかく、日本でいうところの出生届や戸籍みたいなものを全く持たず、大きな屋敷の敷地内から出ることもなく過ごしてきた庭師なのです。同じ使用人仲間はいたけれど、たぶんまともな会話は成り立たない。素直な人だから、それなりにかわいがってもらっただろうけれど、今回はご主人様が亡くなってしまいました。家族はいなかったのですね、屋敷は閉鎖となり、使用人たちはみな解雇となりました。テレビだけが友達だったチャンス(ピーター・セラーズ)は、行き場に迷います。初めて見る外の世界。彼が外に出た時の戸惑いは、大音量の音楽とせわしなく動く画面描写で表されます。
しかしながら、個人的にはこの場面がとてもうるさかった。監督の意図するところはわかるんだけれど、音楽うるさすぎ。頭が割れるかと思いました。そして、道にふらっと出たところをシャーリー・マクレーン演じる貴婦人の車と接触するのです。慌てた奥様は、自宅に常駐(!)する医師に診察させるべく、彼を連れ帰ります。その道中、奥様に名を聞かれて「チャンス。庭師です」と答えた彼がむせたがゆえに、奥様は「チャンシー・ガードナー」と聞き違え、それ以来「チャンシー」と呼ばれるようになるのです。社会に順応していない彼は、いつも自然体で、ものに動じることがありません。思ったことをそのまま私利私欲なしに発言する姿に、いつしか皆が引き寄せられてゆくのです。ご主人様のお下がりの高級スーツを着ていたことも誤解の一因かもしれません。
と書くと、とても美しいお話のようですが(いや勿論そうなのですが)、あまりに皆がチャンシーの言葉を歪曲して解釈するので、滑稽でした。本人に勿論そんな意図はありません。しかし、教養高いはずの周りの人間たちが、「おお!深いことを述べている」などと、いちいち信じられない方向に解釈して、勝手に感心するのです。変ですねぇ。「そんなはず、ないだろ!」の連発でした(笑)。上流社会の人たちって、病んでるのね。というのが正直な感想です。ひねくれててすみません。でも、挙句に大統領候補にまでって、ありえなくないですか?「正体がわからない。スパイだったのではないか」「FBIやCIAが記録を抹消したんじゃないか」おもしろすぎる。まぁね、まったく生存の痕跡がない人間なんてあり得ないですものね。わからないでもないですが。
でも、植物を目にしたときのチャンスは、プロの顔になります。やっぱりそれが人生なんでしょうね。ラストシーンはちょっと寓話的。そこもチャンシーらしいのかもしれませんね。
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