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2019年03月05日22:05

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四日間で、お見合い結婚出産別居父子家庭子育て

ベタ子は寡婦であった。
二週間ばかり連れ添った旦那は、彼女の出産に際して感染症にかかりあえなく死去。
子供たちはことごとく死産。というか、食べてしまった。

もちろん人間の話ではない。我が家のテレビの隣の水槽のベタの話。

寡婦ではあっても魚類の宿命なのか、腹が膨れては卵をばらまき落とし、果ては自らの餌にするしかない彼女を見るに見かね、別のオスとお見合いをさせたのだった。
ベタ子は彼を見て、えらを開いている。気に入ったようだ。袋を切って二人の障壁をなくしたのが、さきおとといの話。
これは美しい、大変エロチックな愛撫と恍惚を見せてくれたのがおととい。そしてそのまま産卵。射精。たまたま休みだった私は、稚魚用の餌と、雌隔離用の小さなケースを買いにジョイフル本田へ急遽走った。まさか、こんなに早くことが展開するとは。

産卵が終わったメスは隔離しないといけない。卵を食べてしまうのだ。
出会ってわずか二日で別居する二人。そしてここからが、ベタべえと名付けられたオスの正念場。せっせせっせと、水面に作った水泡に卵を運び固定するべたべえ。ときどき落ちてくる卵にも目を光らせ、監視に余念がない。
そして、今日、卵から小さな稚魚が次々に孵ったのだった。泳力がない彼らは、そのまま水槽の下まで落ちてしまう。それを食い止め、拾い上げ、必死で元の水泡まで戻してあげるべたべえ。と、そのそばからまた別のが孵って落ちていく。

まるでワンオペであたふたしている牛丼屋の店員のようだ。

べたべえの飲まず食わず、不眠不休の働きは、あと二日。稚魚が自らの泳力を獲得するまで続く。そうしたら、べたべえもまた、しばらく隔離となるのだけれど。

私はといえば、テレビの横の棚の上の小さな水槽で繰り広げられるそんな物語に、無性に心が温かくなるのを感じて、非番日の半日、そこを動けないでいたのだった。
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