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2019年01月05日16:57

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大槻ケンヂミステリ文庫 『アウトサイダー・アート』

やっと買っておいた大槻ケンヂミステリ文庫 『アウトサイダー・アート』を聴きました。
あ、大槻ケンヂミステリ文庫は、大槻氏のソロユニット(と言うのか?)ね。自分以外のメンバーが流動的に変わる音楽ユニットだそうな。
本好きな人は分かるだろうケド、ジャケットがまんま早川書房のポケットミステリシリーズ(笑)。こちらは通称ポケミスと呼ばれていた。つまりはダジャレだケド、これ、良いジャケットだね。ポケミスは私も良く読んでいた。(因みに、協力にちゃんと早川書房のクレジットがあったよ)

筋少の新譜の『ザ・シサ』もオカルトがテーマだったけれど、こちらの方が、よりオカルト色が強かったです。まぁ、タイトルもミステリって入ってるしな。幽霊、退行催眠、人体発火現象、ハイストレンジネス(奇妙過ぎる事象)、謎の生物(きぐるみ?)と戦ったり。

大槻氏は、歌詞を物語にしてしまうことが多いケド、今回物語に「実は…ちゃんちゃん」みたいなオチが付いてるのも結構あり楽しかった。大槻氏は、本当に面白い歌詞を書くね。…歌詞と書いたケド、大槻氏の書いてるのはやはり歌詞ではなく、詩であり物語であると思う。筒井康隆のショートショートみたいなのもあったり。(って、そういや、筒井氏は大槻氏の歌詞から着想を得て、小説を書いたコトがあったね)

曲はジャジーでブルージーな物が多く、竜氏の曲もヒョウリ氏の曲もどちらもお洒落。そして、このお洒落な曲に「この歌詞乗せるの?」って思う(^_^;)(ヒョウリ氏は、自分の曲に“ぽえむ”の歌詞が乗って出て来た時に驚いたらしい・笑)
語りも多いので、初期の筋少っぽくもある。

スポンティニアス・コンバッション。これ、大好き。人体発火現象の歌なんだケド。
靴だけ残して他は燃えてしまった女性達。歌詞に“灰になるまで燃えた 愛のように”とあり、途中語りで「よこしまな色恋にうつつをぬかしたから 神の裁きを受けて燃やされたんだ」と原理主義者の思いが語られたりするも、オチは、美しい靴が欲しかったピアノ弾きの女性がガスバーナーで女性達を燃やしていた…というもの。で、最後“愛じゃなかった 神様、関係ない”と唄われ締められる。この、ちゃんちゃんっていうオチ感。これを、とても美しいブルース調の曲で唄うんだ。
でもサ。この歌の主人公の女性、本当に靴が欲しかったから女性達を燃やしてたの?だって、原理主義者は安いサンダルだったんでしょ?それとも、原理主義者を燃やしたのは神様云々とか、まるで見当違いのコトを言われて怒ったから?
途中真相を語る時「(靴を買う)金がなくてさ ガスバーナーで人を燃やしていたんだ ガスバーナー買う金はあったんだな」で、どうしても笑ってしまう。確かにな!ガスバーナーそこそこ値段したろうに。

オカルトは出てこない『美老人』。でも、JKが天国に近い老紳士に恋する辺り、もう、既にオカルト!かも知れない。
最初は、JKが美形の老紳士に向けて「散々いいこと ガンガンしてきたんでしょ」とか唄って楽しげなのに、“いつもさ一人で気ままね”、“いつもさ一人で自由ね”と、唄われ、老紳士は人生楽しんでるのかな?って思うのに、最後、老紳士は施設から人が来て連れて行かれてしまう。そして、最後にJKは唄う「いつもさ 一人でいたんだね」と。
本当は寂しかったんだろうね、老紳士。結構悲しい終わり方をするんだよ。曲調はノリの良いオールディーズ風の曲なのに。
でも、最初は、老紳士に想いを馳せてたJKは、「美老人 あたしなれるかな」と、次第に自分はどういう生き方愛し方をしたら美老人になれるの?という自身への問いかけになっていく。なるほど、少女の成長譚でもあるのかと。
ね、もう、物語だよね、これ。これをこの短い歌詞の中に入れる才能に恐れ入る。♪ビビビビビ美老人〜という繰り返しも楽しい。

リード曲の『ぽえむ』は、大槻氏本人も言っていたが「心が落ち着いていきます」と言われる度に、逆に不安になって行くって言う(^_^;)。オチも『私に 心が あったなら』で、何か怖いし…。これサイコパスの唄なんじゃ?とすら思う。だって途中「私の手が血まみれなのは気にしないでほしい」って言う歌詞も出て来るし…。

『奇妙に過ぎるケース』冒頭に、とあるSF作家の体験が語られる。あるSF作家の元に、自分が創作したはずのキャラクターの男性が現れる。男は小説にあるとおり、自分は犬神の末裔で狼男だと言う。この作家は彼の言ってるコトを本当だと認める。
うん、これって、SF作家の平井和正の体験だね!SF作家の平井和正氏のところに、「『ウルフガイ・シリーズ』に出てくる犬神明は僕です。」って言う人が訪ねて来て、平井氏はそれを認め対談までしたって言うエピソードがあるの。まさか、こんなジャジーな曲に乗せて、それを語られるとは思わなかった(笑)。
で、この歌の登場人物(作家らしい)の元にも、「あなたの小説の作中人物だ」という女性が現れ、一緒にダンスを踊る。でも、種明かしをすれば、「私の小説の女にはモデルがいるのだ」と。彼女は、いくばくかのモデル料をふんだくって、作家の元から去って行く。これも、一瞬オカルト現象に見せておいて、ちゃんちゃん!って言うオチがある。オカルト懐疑派の大槻氏らしい(笑)。
奇妙に過ぎるケース(ハイストレンジネス)なんて、実際はこんなもの…と。

他にも面白い歌が沢山あった。特撮からカヴァーした『企画モノAVの女』(これだけライブ音源だった)が入ってたケド、これって、作曲も大槻氏だったんだね。この唄も好き。これもオチで「ああ…」ってなる唄。今だったら、相手の男はDVDどころか、AVは買わずにDLしかしない男かも知れないよね。

ぽえむMV↓


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