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2018年10月27日15:30

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朗読台本を作成しました!「本棚の隙間のお手紙。」

「本棚の隙間のお手紙。」





※  金銭が絡まなければ使用自由。
大幅な改変等はツイッター @annawtbpollylaまで要許可申請。

自作発言は厳禁です。 ※





想定時間は5分程度。以下本編。




拝啓

 近頃、寒くなってきましたね。こちらは何とか体調も崩さず頑張れています。あなたの方はどうでしょう。体調等、お変わりありませんでしょうか。

 なお、このお手紙は、どこにも出しませんし、どなたにもお見せ致しません。ですのであなたは、ご自分に宛てられたこのお手紙の内容を知る事はできないのです。不思議ですね。ごめんなさい。でも、書いてみたくなったんです。どうか、許してくださいな。



 さて、冒頭で“あなたの方はどうでしょう。体調等、お変わりありませんでしょうか。”と書きました。しかし、一緒に暮らしているのですから、知っていなければおかしいのかも知れませんね。だって、あなたはいつも強がってしまうものですから。お体の方もですが、特にお心の方。私には分からないのです。あなたが本当にお変わりなく大丈夫なのか、どうなのか。

 私の前でのあなたは、いつも強く、たくましく、優しくて。そして格好良いですね。ですが私は、私には吐かない弱音や恨み言を、あなたがたまにお仕事の同僚さんに吐いているのを知っています。ごめんなさい。あなたのお部屋の近くを通ると、どうしてもお電話の内容が聞こえてしまうんです。…いえ、いけないと思っていても、ついつい聴いてしまうんです。

 あなたの弱音も、あなたの恨み言も、それが私に言っているものでなくても、どうしても聴きたくなってしまうんです。どうか、許してください。



 沢山沢山、おつらいのですね。あなたの誇りが踏みにじられた事も、一度や二度ではなく。あたかもそれが日常のように。平時のように。私にとっても、それが悔しくてたまりません。

 ですが、あなたはそんな事があっても、私の前ではおくびにも出しません。私はそれを苦しく思っているのに。どうして、あなたは私には何も言ってはくれないのでしょう。どうして、あなたは私の前では、そのようなお姿を見せてはくれないのでしょう。



 何となく察しはついています。それは私を悲しませないため。私に心配をかけさせないため。そして何より、私の前では強くたくましく、優しく。格好良く居る事が、踏み躙られたあなたの誇りを取り戻すために、大切な行為なのでしょう。

 あなたは昔からそうでした。私は一言もそんな事を言っていないのに、知らない間に無理をして、格好付けてしまう方でした。あなたは、私の前で見知らぬ方からひどく失礼な目に遭った時にも、私の前で声を荒げまいと冷静に対処しようとして、それが相手を増長させて。結局、その時は私がみっともなく怒ってしまったのを今でも覚えています。

 

 私はそんな、誇り高いあなたを愛しています。

 だからこそ、私の前で見せていただけない面がある事に対し、むくれてしまう事もあります。しかしながら、今は我慢してさしあげます。お友達にその役割を託してさしあげます。何やら尊大な書き方になってしまいました。とは言え、どなたにもお見せしないものですから。許していただきます。ええ、許していただきます。



 ですが、私が愛しているのは、誇り高く格好良いあなただけではありません。どうか、それだけはどうか、勘違いなさらないでください。いえ、勘違いさせないよう、私も努力が必要でしょう。

 一口に努力と言いましても、具体的にどうすべきなのか、悩ましいですね。大きな課題です。

 さて、あまり冗長になってしまうと、大事な部分がぼやけてしまいます。ですので、私はそろそろ筆を置き、私のすべき事に取り組みたいと思います。


 くれぐれも、お体もお心も、お気をつけください。

                                      敬具
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