蓼科山の空は初秋の空が広がりましたが、秋晴れは束の間でした。
桜の葉はもう真っ赤に紅葉し、白樺も黄色くなってきています。
秋の気配がどことなく感じられるようになってきました。
「一つのメルヘン」(中原中也)
秋の夜は、はるかの彼方に、
小石ばかりの、河原があって、
それに陽は、さらさらと
さらさらと射してゐるのでありました。
陽といっても、まるで硅石か何かのやうで、
非常な個体の粉末のやうで、
さればこそ、さらさらと
かすかな音を立ててもゐるのでした。
さて小石の上に、今しも一つの蝶がとまり、
淡い、それでゐてくつきりとした
影を落としてゐるのでした。
やがてその蝶がみえなくなると、いつのまにか、
今迄流れてもゐなかった川床に、水は、
さらさらと、さらさらと流れてゐるのでありました....
森の人
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