ギリシャは、ヨーロッパ文化発祥の地とされるものの、ギリシャ音階ありギリシャ文字ありで、文化的にはかなりヨーロッパとは隔絶したところがある。そのギリシャ人がつくったプログレは、どのバンドにも一筋縄ではいかない独創性がみられる。
・ 曲 バンド アルバム
�� Aegian sea（エーゲ海） /Aphrodite's Child [ 666 /1972 ]
ヒットメイカーだったアフロディテス・チャイルドの４人は、プログレッシブ・ロックとはおよそ違った次元で芸術を志向し、音楽のあらゆる要素を混合した歴史上ほかには見られない作品を創造した。永劫不滅の傑作。聖書の黙示録を描いており、「６６６」は悪魔を召還する数字。アルバム中最も優しい「エーゲ海」は、キーボードとコーラスが、夕暮れの紅色に輝きながらたゆたう海の情景を描いている。
�� Heaven and hell �供陛傾颪斑蝋��供� / Vangelis [ Heaven and hell(天国と地獄） 1974 ]
アフロディテス・チャイルドを離れたヴァンゲリス・パパタナシューが創造した次なる芸術品。ヴァンゲリスは、キーボード、ドラムスからフルートまで、なんでも一人で出来るのだが、楽譜は読めないと言われていた。ジョン・アンダーソンを起用したヴォーカル曲はあまりにも清らかだ。ここでは、女性スキャットと男女合唱が天上にまで到達するかのように感動的な３曲めを選んだ。
�� Starvation / Socrates [ Phos 1976 ]
ソクラテスは、アントニス・トルクギオルゲスがヴォーカル・ギター・ベースを担当する４人組。ツイン・ギター構成だが、ギリシャ音階で民族楽器のような響き。祝祭的な賑やかさにどこかもの悲しさを感じさせるメロディー。古代アテネの哲人の名前を冠したバンド名に恥じない独自の境地を切り開いた。この4作目では、キーボードとプロデュースをヴァンゲリスが担当していると言う。
�� Castle on the sand / La Tulpe Noire [ Faded leaves 2002 ]
２１世紀バンドのチューリップ・ノワールは、「黒いチューリップ」というフランス語をバンド名にしているが、ヴォーカルは英語。女性ヴォーカルながら低い少年風の声で、シャウトの部分も良く伸びて、存在感を発揮する。「砂の城」という曲名も、廃墟に立つ女性の黒い影も、強い哀感のあるメロディーに象徴されているかのようだ。
�� Time / Pete and Royce [ Suffering of tomorrow 1980 ]
ペテ・アンド・ロイスは、５人組で、ペテ・タイロスがギターとヴォーカルを担当するが、ロイスという人はいない。メロディーを重視したオルガン・ロックだ。１９８０年というプログレ絶滅時代でディスコビートのような軽快なリズムがもてはやされたのにもかかわらず、重たいドラムスがもっさりともたれるように響くサウンドだ。
�� Sudden winter / Verbal delirium [ From the small hours of weekness 2013 ]
現代バンドのヴァーバル・デリリウムは、８人編成。２キーボード。メロトロンを含むキーボードとヴォーカルはジャルゴン。トランペット奏者、フルート・サックス奏者を揃え、またベース奏者が２人いる。ジェネシス・タイプだが、メロディーがもっと親しみやすくて豊潤だ。間奏のピアノが繊細。
�� Waiting a long time / Axis [ Axis 1973 ]
７０年代のアクシスは、デミス・ヴィスヴィキスをリーダーとしていて、彼がピアノ、メロトロン、オルガン、ヴォーカル、パーカッションとなんでもやる。後の３人のメンバーはリズム隊で、３人ともパーカッションもやるという変則編成だ。スピード感豊かなリズムに乗せて、爽やかなコーラスが展開する。上ずったハイトーンのヴォーカルも爽快。
�� Akpitaz（太古の記憶） / Akritas[ Akritas 1973 ]
アクリタスは、ＥＬＰタイプ３人組のキーボード・トリオ。なのだが、全てがギリシャ文字で表記され、ギリシャ語で歌っているので何が何だかわからない。３３分１３曲が、１曲になっている。ギターとオルガン奏者を２人ゲストに入れ、当時チャートの３位に入る人気を博したと言う。確かにキーボードトリオと言っても速弾きギターが大活躍。ヴォーカルはハイトーンだが、シャウト部分で音程にちょっと難がある。
�� Pandra / Abaton [ Kowmon 2001 ]
２１世紀のアバトンは、男性ヴォーカルと女性ヴォーカルを含む６人組で、ツイン・キーボード。ロック・オペラのプロジェクトのようだ。何人もの男性スキャットの掛け合いに続き、コーラス。イスラム風のエスニック感覚があって、ハンドドラムスが使用されているかと思えば、ヴァイオリンも入る。
�� Star wish / P.L.J.Band [Armageddon 1981 ]
ＰＬＪバンドは、５人組で、キーボードのほかにギタリストが３人。１人は、リズム・ギター、クラシック・ギターの奏者だ。選んだ曲はヴォーカル入りでフォーク・ロック調だが、実は「６６６」の影響下と思われるインスト中心のバンドである。多彩な音を織り交ぜたサイケデリック感覚だが、かなりおとなしめのサウンド。
[次点] Doureios ippos / Giannis Corcosas. Giannis Petritsis [ Tostas tournas 1975 ]
２人のギアニス（ギアニス・コルコサス、ギアニス・ペトリトシス）が作ったロック・オペラであり、１１人の人が参加している。これもギリシャ文字なので、何が何だか分からないが、中ジャケットを見ると古代の闘いが描かれていて、馬車の戦車、甲冑に盾・剣といういでたちなので、そういったテーマなのだろう。曲は民族歌謡みたいなものが多いが、この曲では男女合唱が荘厳だ。
[番外] Lovely sunny day / Demis Roussos [ Forever and ever 1973 ]
アフロディテス・チャイルドのヴォーカリストだったデミス・ルソスは、７３年という早い時期にソロ・アルバムを出している。「雨と涙」などのヒットで資金が潤沢だったのだろう。バックが女性コーラスとストリングスという民族歌謡風の音楽なので番外にしたが、この人の奇声とも言える虹色のハイトーンを聴くと、妙にほっとする。ジャケットの写真はヒゲだらけで、いかにも奇人変人という感じ。
○その他候補にしたミュージシャン
Methexis , Stefanos Korkolis
○イスラエルの潤いの曲１０選（２０１８年３月１７日）
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1965676178&owner_id=9666295
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