市立中学にB.B.KINGが流れた日

非番日。
午前中を畑で過ごし、風呂に入って、昼飯食べたらそのまま昼寝。
がたんと玄関、橙助が学校から帰ってきたのだ。もうそんな時間か。

「おかえり。なんか面白いことあった？学校」
「あ？え？うん」
「喧嘩があったとか」
「ない」
「告白されたとか」
「うるせえよ、、、あ、そうだ」
「なに？」
「いや、あのさあ、今日の英語、好きなものを聞いたり、答えたりする内容だったんだよ」
「おお」
「でね、what singer do you like?って、先生に聞かれたんだわ」
「シンガー、ってお前、好きな歌手なんていたっけ？」
「そう、いねえんだよ。マイルスとかサッチモとか、トランぺッターだし」
「で、どうしたの？」
「悩んじゃってさあ。でも、ほら、今日の朝、youtubeでB.B.KING、観てたじゃん、とおちゃん」
「え？もしかして、B.B.KING、って答えたの？」
「そう」
「がははははは」
「はははははは」
「先生は、なんて？」
「B.B.クイーンズ、じゃないですか？って」
「それは、ずうとるびは知ってるけど、ビートルズは知らないパターン」
「ずうとるび？」
「山田隆夫がいた、、いや、何でもない。先生って若いの？」
「四十代半ばぐらいかなあ、男の先生」
「あ、、、そう、、、」
「で、さあ、先生も知らないもんで、検索してかけてくれたんだよ」
「検索？」
「授業用の端末があって、それでyoutube検索して、でっかい画面で映してくれる」
「ええ！すげえ！今の学校！」
「検索したらさあ、古い動画がいっぱい」
「そりゃ、そうだな」
「先生も驚いたみたいで。で、初めに出てた動画をかけてくれたんだけど」
「うん」
「そのあと、ノートに、what なんとかdo you like?の答えをみんなに書かせている時間もかけっぱなし」
「おお、引き込まれたか、先生。止められなくなっちゃったんだね」
「みたい。で、結局まるまる一曲、全部聴いちゃったんだよ」
「クラスのみんなも」
「そりゃ、そうだね、教室だもん」
「わははははは」
「はははははは」

もしかして、これは歴史的瞬間だったかもしれない。
極東の小さな町の中学で起こった出来事を、あちらの世界の御本人にも報告できたら。