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2018年05月25日23:47

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「そういうつもりではない」ということ

 アメフトのタックル問題についてはまだまだ炎上案件であって、冷静に考えるのが難しいことは認めざるをえない。しかし、年末にもなればもう話題が5巡か6巡はしているだろうけれど、そのころに振り返ってみて、「なんであんなに騒いだんだろうなあ」と怪訝な気持ちになったりはしないと思う。

言葉足らず…日大広報部は監督ら反則プレー指示否定
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=8&from=diary&id=5122147

 やはり、舌先にからみつくような妙なえぐみや苦みをおぼえながら、思い返すことになるのではないだろうか。当事者たちのキャラクターもさることながら、発生へといたる仕組みそのものに、えもいわれぬ不穏な兆しが垣間見えてしまうのである。そして、それは誰もが一度は突き当たったり、なんとか回避したけれど間近に見せられて辟易したものにつながっている。

 ラグビー部の指導陣や大学関係者は、部員の発言について「そういうつもりではなかった」、あるいは、認識に乖離があったとしている。それはまあ、そうなのかもしれない。皮肉な見方をすれば、こんな日本中から袋叩きにされるようなことを想定して指示を出したりはしないだろうし、きわどいことをするにしても常識的に考えれば、「露見しないようにこっそりやる」のが当然である。あんなバレバレの反則タックルはないだろう。

 以上は贅言にしても、「潰せ」といったところで、現実問題として物理的にハンマーで叩き潰したり、ローラーで押し潰したりはできないのだから、解釈の幅はそれこそ無限にあるといっても過言ではない。とりついてプレッシャーをかけ、プレイを抑えこむことかもしれないし、それこそ、「潰すぐらいの強い気持ちでぶつかって行け」という意味もその中に含めていいかもしれないような気がしなくもない今日このごろである。

 だから、思いっきり寄りそえば、寄りそえなくもないのだけれど、その解釈が一般的に妥当かといえば、それはちょっと無理筋というものである。

 おそらく、問題は「潰せ」と言った時、発言者にも明確なイメージがあったわけではないことに端を発している。司令塔たるクォーターバックが機能しなくなれば、そりゃ、ゲームは有利に進められるだろう。しかし、具体的な方策はなにもない。
 曖昧な指示しか出さなかったくせに、上がってきた試作品を見て一言、「こうじゃなかったんだけどな」という上司はどこの職場にもいる。たしかにそうは言っていないかもしれないが、明確なディレクションができなかった以上、この場合ですら、責任の一端は自らも負うべきである。いわんや、スポーツにおけるラフプレイをや。

 「潰せ」と言っておきながら、具体的になにをすべきかは、おそらく自分でも内心のうちに考えることを忌避してしまったのだろう。はっきり意識してしまえば、自分の過ちは明白である。だから、そこからは目を背け、明示しないことで選手に丸投げしてしまったのだった。そして、そこにフタをしてしまえば、後になって問題になっても、「そういうつもりではない」と自分を守ることができる。

 だから、ウソはついていないとも言える。あらかじめ、自分の中に予防線をはっているのだから、ウソをつく必要もなかった。一方で、当事者たちが今後、自らの責任を実感する機会もないはずである。

 大学サイドの説明と称するものも、この線で一貫しているように見える。たしかに、いまさら故意であることを認めるわけにはいかないし、故意であるかどうかすら自分の中で突き詰めないまま投げてしまっているのだから、故意ではないと言い張れなくもない。

 しかし、そもそも、「潰せ」という発言自体が、アメフトの作戦指揮であったり、コーチングとして成立しているのかという根本的な疑義もある。それは、むしろ、指揮やコーチングの放棄ではないのか。もうそんなことを言っていられる場合ではないのだろうが。

 人間、嫌なことからは目を逸らしたいものである。ふつうはできないそういうことを、きちんとできるからその人は高い地位に就いているのだと、期待しがちではある。しかし、地位に応じた心構えに無頓着であるがゆえに安閑とそこへ居座っている人間がいるのも、ときおり目にする現実ではある。

 監督の試合後の言動や大学のその後の対応を見るにつけ、立場こみで自分の意図を汲みとってくれる人としか話せない人たちではないのかという感慨が拭えない。外部の不特定多数に対して語る言葉を持っている人たちではないようである。

 そして、そういう狭さや浅さ、分母の小ささが指導者としての押し出しの良さと誤解されて流通しているのも、たまに見かける光景である。逆にいうと、だから、この件がかならずしも特殊な集団における特殊な出来事だとは思えないまま、ずっと眺めている。ここまであらゆることがダメ方向に振り切れている事例は珍しいが、大事に至ってないだけでけっこうそこここで似たようなことが起きているし、進行しつつもあると思う。

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