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2018年03月09日16:48

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プラド美術館展

国立西洋美術館で開催中のプラド美術館展に行きました。

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プラド美術館展公式HP↓
https://artexhibition.jp/prado2018/

近年では、三菱一号館美術館でやりましたが(私の日記を遡ると何処かにレポが出てくる)、私は、それよりは今回の方が好きでした。宗教画が多目だったからか?私ゃ、ひょっとして、日本でやったプラド美術館展に全部行ってるのかな?ゴヤ特集の時もあったよね?図録持ってる。(その時のレポも日記を遡ると出て来るかと)

今回の目玉はベラスケスが7点来ているコトなのだが、ゴヤの時も、結果、結構な数ベラスケスが来ていたような(因みに、ベラスケスはMAX7点しか借りられないらしい)。
ベラスケスはそんなに好きな画家ではないのですが、それでも観ると「絵、上手っ!」って思いますね(失礼な物言い・(^_^;))。
私の目当ては、スルバランやムリーリョ、リベーラ、コエーリョ、あと、ティツィアーノだったんですが、今回ティツィアーノは1点しか来ていなかった(^_^;)。でも、よし!

音声ガイドがミッチー(及川光博氏)なので借りてみた。国立西洋は、解説を比較的きちんと付けてくれるので、必要ないっちゃないのかも知れませんが、ミッチーの声を聴きながらスペインバロック探訪するのは、なかなかオツでした。世界観に合ってたし。

プラド美術館は、スペイン王国のコレクションが母体の美術館。1819年王立美術館として設立。ベラスケス作品の4割を所蔵。歴代スペイン王は皆絵画を愛したらしいのだが、国王フェリペ4世の庇護を受けたのがベラスケス。因みに、フェリペ4世は、ベネツィア絵画好きとしても有名(だから、ティツィアーノなんだね)。

スペインは最初のグローバルな帝国だったらしい。16C〜17C、アメリカ、アフリカ、ヨーロッパ、アジアの何百万人を統治下に置いていた。
ベラスケスはセビーリャ生まれ。イタリアへ2度旅行し、ルーベンスとも親交があったそうな。

17C。スペイン芸術(家、作品)を表す造形作品が数多制作された。画家や彫刻家は自らの行為を“自由芸術”として社会的地位を向上させんとする。職人的手仕事とは別とうたう。ようは「職人とは別だぜ!こちとら、芸術家だぜ!」ってコトな。
作品を創造する作者の“想像”を強調。“画家としての神”のメタファーとして、聖顔布=超自然的芸術家の作品って捕らえたらしい。ようは、キリストも芸術家。布に自画像を浮かび上がらせたってコトだね(描いたわけじゃないケドさ。寧ろプリントに近いかと・笑)。

入ってすぐに、ディエゴ・ベラスケス『フアン・マルテイネス・モンターニュスの肖像』がある。フェリペ4世を彫る彫刻家の姿。黒い服で、立派な髭をたくわえ貴族のような見た目。像は制作途中でぼやん…という感じに描かれる。男は堂々として「これは手仕事ではなく、芸術創作!」という意識が出ている。こういう絵を描いて、芸術家の地位向上を狙ったんだって。

ホセ・ガルシア・イダルゴ『無原罪の聖母を描く父なる神』無原罪の御宿りのマリアがいるのだが…良く見たら、このマリアはキャンバスに描かれた絵。マリアは横の雲に乗った男が描いている。マリアの絵を運ぶ天使達。右ではガブリエルが悪魔を退治。左には白百合を持ったガブリエルが祝福の言葉を述べている。画家本人のサインと、絵に描かれた絵の中のサインがあるのが面白い。これね、ようは、“マリアの絵を描く画家を崇高な存在”と捉えてるんだって。マリアを生み出す(描く)コトを、マリアがキリストを生み出すコトと重ねてるそうな。随分、でかく出たなぁ〜…と思うが、これも、芸術家の地位向上の為の宣伝なんだろうね。あと、後ろにぼんやりと描かれた天使が亡霊みたいでちょっと怖い。

ジュゼペ・デ・リベーラ『触覚』お久しぶり!又会ったね!私が大好きなリベーラ。カラヴァジェスキの1人ね。おそらく、盲目なのだと思う。男は像の頭部を触っている。男は黒い闇に浮かび、厳かに見える。相変わらずの手の皺の描写の凄さ。リベーラ、皺フェチなんじゃねえかと思うんだぁ。

フランシスコ・デ・スルバラン『磔刑のキリストと画家』私の好きなスルバラン。これも何処かで観たコトあるような…。磔刑のキリストの前で、胸に手を当て、恭しく何かを唱える男。この男はパレットを持っているので、画家の守護聖人の聖ルカか、スルバラン本人じゃないか?とのコト。黒い背景。キリストは少し首を傾げている。静謐な絵。

アロンソ・カーノ『聖ベルナルドゥスと聖母』私、カーノの絵の前で立ち止まるコトが多々あるので、おそらく、カーノの絵が好きなんだな。
“神秘の授乳”ってのがある。聖ベルナルドゥスが「あなたの母たることをお示し下さい。」と祈りを捧げると、マリアの像は生を得て、その母乳を与えた。これがそれ。対抗宗教改革期のスペインで好まれた画題なんだそうな。カーノは彫刻家でもあったので、彫刻の力を示す為、この絵を描いたんじゃないか?とのコト(彫刻が生を得るって部分ね)。母乳がビームみたいなんだよ(笑)。その母乳が見事にベルナルドゥスの口にイン!手を広げ驚く白い衣のベルさん(そりゃ、驚くは!)。マリアの像は聖母子像なので、キリストもベルさんを見ている。かなり大きな絵だった。

17C。絵画中心の美術理論の著作が数多く出版された。“自由芸術”を示し芸術家の地位向上を図るのが目的。理論が宗教と密接に結び付くのも特徴らしい。古代からの人文主義と宗教に資する芸術のあり方が融合した。

17Cヨーロッパはギリシャ=ローマの古典文明とキリスト教精神は思想や学問の重要な根本として受け継がれた。そんなコトもあり、古代哲学者をぺアにして描いた作品が人気を博した。リベーラは、乞食哲学者と呼ばれるタイプを作るが、これは、ストア派の思想で、清貧は美徳から来てるそうな。

ベラスケス『メニッポス』トーレ・デ・ラ・パラーダ(狩猟休憩塔)の為の絵だったそうな。メニッポスは古代ギリシャの犬儒学派の哲学者。でも着てる服はスペインの庶民の服で、古代じゃない。元奴隷だったが金貸しで財を成すも、騙されて無一文になった人。皮肉な笑みを浮かべてこちらを見ている。休憩室に合ってるのか、この絵(^_^;)。
隣りに、ペーテル・パウル・ルーベンス工房作の『泣く哲学者ヘラクレイトス』があるのだが。同じくトーレ・デ〜を飾った絵。こちらは黒い衣で泣いている姿。ベラスケスの方がスッキリ感があるような。
その隣には、リベーラの『ヘラクレイトス』渋いイケメンに描かれている(笑)。何かメモを取っているらしく、ちょっと微笑んでいる。哲学者を描いた絵でも、画家によって、描き方は違うよね。私は、ぶっちぎりでリベーラのが好きですが。

そういえば、ヤン・ブリューゲル(父)が関わってる『視覚と触覚』の絵があったのだが、絵画や花は視覚って分かるが、嗅覚どれ?って思ったんだケド、手前の火にかけらてた瓶が香水瓶なのかなぁ?正解を教えて!花も良い香りするから嗅覚?

神話。カトリックが強く、古典古代の神話をテーマにするのは稀だったスペイン。裸体表現が猥雑だと思われた。でも、邸宅の“秘密の部屋”には立ち入り制限され、ティツィアー
ノ等の裸体画コレクションがあったそうな。なんだよ!偉そうなコト言っても、結果、女の裸が観てえんじゃん!(^_^;) でも、ベラスケスは神話画を残している。裸体は画家の技量が発揮出来る題材で、審美眼も養えたそうな。…本当か?後付けではないのか?(笑)神話で怪物を打ち倒す英雄=君主の力と捉えられ、「王様万歳!」な絵でもあったそうな。

ティツィアーノ・ヴェチェッリオ『音楽にくつろぐヴィーナス』今回唯一のティツィアーノ。ベッドに横たわるヴィナス。左にヴィナスを振り返って見るオルガン奏者。ヴィナスの薬指には指輪。ヴィナスには犬が戯れている。犬は忠誠を表し、指輪は結婚指輪かも?ってコトで、誰かの結婚式の贈り物なんじゃないか?説があるそうな。ヴァージョン違いが何枚もあるが(以前は、クピドがいるやつを観た)、これが最初の作品らしい。カーテンの外の風景は絵なんだろうか?左に貴族のカップルらしき姿が描かれているのが意味深なんだよな(ヴァージョン違いのにも描かれてるの)。確か、これにも意味があったと思う。

ベラスケス『マルス』現実の中年の姿で描かれたマルス。全然恰好良くはない。お腹には皺があり、疲れ切ってベッドに座る姿。でも、マルスって戦いの神だから、戦いの神が休んでいる=平和をもたらしていると捉えるコトも出来るらしい。粗いタッチの光や影がビシバシ入る。でも、遠目ではちゃんと絵になってるんだよなぁ。音声ガイドでは、ミッチーが「マルスはヴィナスとの浮気が妻にバレて、困惑してるんじゃないか?」と言ってて笑った。

ルーベンス&ヤーコブ・ヨルダーンス『アンドロメダを救うペルセウス』私、ルーベンスそんなに好きじゃないんだケド、これは好きだった。1639年、カルカサル(王宮)の一室を飾る為、フェリペが注文した物。海の怪物の生贄にされた裸体のアンドロメダを、赤いマントで甲冑姿のペルセウスが救うシーン。ルーベンスの絶筆らしいのだが、完成させずに死んじゃって、死後ヨルダーンスが完成させたそうな。あ、だから印象違ってて好きなのかな?でも、ヨルダーンスが関わった部分は、そんなに多くないんだって。(私、ヨルダーンスは好きなんだ)天使がペルセウスの頭をむんずと掴み、アンドロメダの方に押してるように見える。左下には盾とメデューサの首。そう!ペルセウスって、メデューサを倒して帰って来る時に、たまたまアンドロメダを助けたんだよね。たまたまってのがジワる(笑)。後ろは海。海には羽の生えた白馬もいる(ペルセウスが乗って来たのか?)

ハプスブルグ王家が首都マドリードで居城した王宮アルカサル。1500点のコレクションを保管し展示していたが、ティツィアーノの間には、裸体画が40点近く集められていたそうな。結構裸があったんだね。

ビセンテ・カルドゥーチョに帰属『巨大な男性頭部』巨大な男の顔が描かれた絵。「何コレ?」って思ったら、何でも“王妃の間”を守る門番的役割があったんじゃないか?ってコトだった。ああ!寺の仁王像みたいなモノか!そういえば、顔は睨んでるように見え、「こっち来んじゃねえ!」って感じにも見える。この絵、スルバランが描いた説もあるそうな。

グレゴリオ・マルテイネス『鎖につながれたディオニソス』大鷲(だよね?)に腹を啄まれ恐怖に怯える裸のディオニソス。ディオニソスは鎖に繋がれている。こういう絵を観る度思うのだが、仕方ないケド、チンコの隠し方がすっげえ不自然!と思ってしまう。これも、布でチョロっと隠しているが、布、こんな風に曲がりますかね?もうちょっと、自然に隠せば良いのに。後ろには燃え盛る町。

宮廷。芸術は自らの富や権力を誇示する手段だった。像主の美徳を演出する肖像画と宮廷装飾。鎧姿の肖像画はアントニルス・モルから始まるらしいのだが、最初は豪華な甲冑姿だったのが、簡素の装いの王の姿になっていった。ブエン・レティーロ宮には、古代ローマ史の場面や風景画等、国内外の画家800点の作品があった。スペイン神話上の創造者がヘラクレスなので、ヘラクレスの絵も多かったみたい。

23歳で王族の画家になったベラスケス。ベラスケスを王つき画家にしたフェリペ4世はベラスケスに信頼を置いていて「他の人には肖像画を描かせない」と言っていたとか。でも、スペインはだんだん斜陽になっていって、フェリペ2世の時代からは質素倹約を旨としたらしいよ。「太陽が沈まぬ国、スペイン」だったのになぁ。

ベラスケスは、画家だけではなく宮廷の仕事もしていた。最終的には宮廷の鍵を預かる役職にまで就いたらしい。かなり信頼されてたんだね。信頼してない奴に鍵なんて任せないもんな。しかも、ベラスケスは騎士団に入れた。まてよ?騎士って通常貴族しか入れないんじゃなかったっけ?って思ったら、裏工作とフェリペの一声があり、騎士団に入団出来たんだそうな。裏工作ってコトは、家系図でっち上げて、貴族の出にしたな(苦笑)。

肖像画。前述のように、最初は甲冑で凛々しく豪華だったが、後にフェリペの時は、ベラスケスが描いた『狩猟服姿のフェリペ4世』のように、黒い衣の質素な姿になった。このフェリペは王様なのにお供は犬だけ。参考作品で、国立西洋のヴァン・ダイクの絵もあったが、これも、スペイン風に黒衣で描かれていた。でも、フェリクス・カステーリョの描いた『西ゴート王テオドリック』のような甲冑キラキラの絵もあるにはあったケド。これは歴史画になるからかな?

ベラスケス『バリューカスの少年』バリューカスはバルタザール・カルロス(王太子)の遊び相手の矮人(ようは小人)の少年。道化らしい。貴族ではないので宮廷人より自由に描かけて表情も豊か。緑の衣を着ているが、これがエノーナという宮廷の障害を持ってる道化の象徴だったらしい。手にトランプを持っているのだが、これは“虚しさ”や“愚かさ”
の象徴で、彼に知的障害がある…という意味でもあるそうな。どうやら彼は脳水症だったらしい。でも、私には、彼はニヤリと皮肉気に笑っているように見え、「本当に愚かなのは誰?」って言ってるような気もした。今なら、彼は濱田祐太郎氏のような面白芸人になってたかもよ。しかし、確かに肖像画は上手いな、ベラスケス。

アントニオ・デ・ペレーダ『ジェノヴァ救援』えらいデカイ絵で、「ペレーダ、こんなデカイ絵描くんだ!」って思った。ブエン・レティーロ宮の諸王国の間を飾った戦勝画。サルタ・クルス侯爵がジェノヴァの総督に迎え入れられている姿が描かれてる。周りにはスペイン人達。後ろには逃げるフランス軍がおり、港はてんやわんやの大騒ぎ。でも、この港はジェノヴァっぽくないらしい。どうやらフランドルの版画を参考にして描いたので、こうなったらしい。前方の人々は写実的なのに、後ろは演劇の書き割りっぽい。当時、劇場もあったので、それでこんな描き方?とも。ペレーダは20代半ばで諸王国の間の装飾担当に大抜擢されたそうな。

ジュゼペ・リベーラ『女の戦い』右に剣を振りかざすオレンジの衣の美女。左に倒れつつも盾でガードする青い衣の美女。倒れた女性の喉元からは血が滴っている。周りにはそれを見ている男たち。剣を振りかざす女は留めをさそうとしてるのか?そういえば、リベーラは美女も上手いんだったな…と思い出した。私、今回、この絵が1番好きだったかも。この美女達は何か勝負をしてるのかな?

ブエン・レティーロ宮には、劇場や動物園もあった。トーレ〜の方は狩猟画が多かった。狩猟休憩塔だから?ベラスケスも装飾に大きな役割を果たしたらしい。

フアン・バウテイスタ・マルテイネス・デル・マーソ『アランフエスでの狩猟上覧』布で覆ったスペースに鹿を放っている。鹿を捕まえるゲームなのだろうと思う。馬に乗った貴族や、鹿を見ている貴婦人達。鹿を引っ張ってる人もいるし、倒してる人もいる。捕まえた人なのかな?森や建物も描かれている。これは、トーレ〜の方にあったのだろうな。

ジョヴァンニ・ランフランコの絵もあったのだが、パルマ派なので、色合いがカラフルだったな。『ローマ皇帝のために生贄を捧げる神官』の絵で、ぶっそうな絵でもあるんだケド。

17Cのスペインの画家は風景画とは疎遠だった。でも、人気はあり、イタリアやフランドルの風景画を持っていた。200点以上がブエン・レティーロ宮に飾られていたそうな。何となく、スペインは領土が広くて世界中の物が手に入ったし、「風景画も輸入すれば良くね?」って思ってたんじゃないかな?…とも思うんだケド。

サルヴァトール・ローザ『海景』壊れた船。難破船だろうか?ボートで救われる人。海の中で手を上げてる人は、助けを求めてるのかな?そんな絵なのに、タイトルは『海景』。そして、そんな状況なのに薄曇りの空で綺麗。後ろを見ると、難破船を指さしてる人もいる。確か、難破船も良く使うテーマだった記憶がある。

ペテロ・デ・オレンデ『聖ヨハネ・クリュソストモス』痩せた老人が、2人の男に助けを求めるように手を差し伸べている。男達は「え?何?!」の顔。天からは光が差している。彼は、悪魔祓いの相談に来た女性を襲い殺してしまい、悔い改めて砂漠で隠遁し這うように暮していた。その姿を描いたもの。岩の荒涼とした風景も主役。

クロード・ロラン『聖セラピアの埋葬のある風景』私の好きなクロード・ロラン。これもロランっぽい遺跡の風景。古代の理想の風景を描くのがロランである。手前に埋葬される殉教者聖セラピア。後ろで見ているのは彼女に仕えたサビーナ。彼女も、この埋葬が咎められ後に殉教してしまう。人物も描かれているが小さくて、主役は理想の古代風景であるというのが分かる。

16C。静物画がヨーロッパで一つのジャンルとして確立する。飲食物に関わる静物画モティーフが人物と共に表されたボデゴンと呼ばれるスペイン独特の風俗画も生まれる。ボデゴンは、後に、人がおらず、飲食物だけ描かれた絵もボデゴンと言うようになる。

フアン・デ・エスピノーサ『ブドウのある八角形の静物』葡萄の描写が凄くリアル。水差し、桃、胡桃、雉(かな?)、洋梨、石榴、林檎等もリアルに描かれる。吊り下げされた葡萄も凄く瑞々しい。その横にどんぐりも描かれている。

パウル・デ・フォス『犬と肉の寓話』イソップ童話が元ネタ。橋を渡る犬。水面に映る自分の姿を他の犬と思い、その犬が咥えている肉も欲しくて口を開け肉を落としてしまう…という物語。多くて不確実な物より少なくても確かなものの方が良いという教訓が入っている。欲張ると碌なことないってコトよね。犬が「あ…」って表情をしている。トーレ・デ・ラ・パラーダにあった狩猟関係の絵には、教育効果がしばしば見られた。宮廷装飾に教訓物語が取り入れられたらしい。これ以外にも、イソップモティーフの絵あったな。

最後は宗教。スペインはカトリック。カトリックは絵画を聖書の言葉を分かりやすく伝え、信仰心をかきたてる道具にした。宗教主題を現実的に解釈し、分かりやすく明晰に表した絵画が必要だった。分かりやすさがとにかく大事なのはカトリック全般そうなんだろうけど、でも、スペイン絵画は、他の国の物より、更に分かりやすい印象が私にはある。

テネブリズムというのがある。明暗のコントラストを強調した写実的な光の表現が特徴の様式を言うらしい。カトリックはプロテスタントが否定した聖母子や聖人の聖性を認め、多くの聖母聖人像が制作された。

ディエゴ・ベラスケス『東方三博士の礼拝』私は、今回来ていたベラスケスの絵では、これが1番好きだった。聖母子の前に跪く男。その横に2人の男。彼らは東方より来た三博士であろう。明暗くっきりなバロック的表現。宮廷の時のタッチとは違い、粗い筆致ではなく滑らか。マリアは穏やかな表情でイエスを膝の上に乗せている。金のランプの描き方の上手さに唸る。何故に宮廷の頃とタッチが違うかと言えば、この絵はベラスケスが20歳の頃の作品。まだセビーリャにいた頃のもの。マリアのモデルはどうやらベラスケスの妻ファナで、イエスのモデルは生まれたばかりの自分の子供。跪く博士はベラスケス本人らしい。左の髭を生やした横顔の博士は、岳父のパチェーコ。(ベラスケスは師匠のパチェーコの娘と結婚するんだよね?)ある意味、家族の肖像画なんだね。だから愛情も入ってるのかな。凄く良い絵だった。私はやはり明暗ハッキリ絵の方が好きなんだな。

ジュゼペ・デ・リベーラ『聖ペテロの解放』手錠が外れたペテロの右に天使がいる。天使は入口の方を指さし「逃げろ!」と指示をしている。ドラマティックで分かりやすい絵だよね。そして、相変わらず、皺の1本1本まで描く。やはり、リベーラは皺フェチなんじゃねえかと思う。天使は優美な姿で、その対比も面白い。これも明暗ハッキリ。

フランシスコ・デ・スルバラン『祝福する救世主』お久しぶり!なスルバランのイエス。十字架付きの球(私には地球に見えるんだケド)に手を置き、祝福のポーズをとるイエス。スルバランらしい落ち着いた雰囲気。
その横にグイド・レーニの『使徒聖大ヤコブ』があるのだが、まぁ、甘美で美少女のような中性的なヤコブ。レーニらしいね(笑)。

アロンソ・カーノ『天使に支えられる死せるキリスト』十字架から下され、ぐったりする青白いイエスを持ち上げようとする天使。暗闇に浮かぶように描かれている。足元には茨の冠と手を留めていた釘。何故か洗面器のような物があるのだが、コレは何だろう?イエスが妙〜に色っぽい姿だと思うのは私だけ?

ペーテル・パウル・ルーベンス『聖アンナのいる聖母子』中央に聖母子。右に壮年姿のヨセフ。左にアンナ。アンナは聖母子に手をまわしている。対抗宗教改革期、ヨセフを再評価する動きがあった。それを反映して、ヨセフが壮年の姿で描かれている。でも、一応慣習に則り、ヨセフは聖母子より少し後ろにいる。ルーベンスはマドリードにいる時、20歳のベラスケスと交流しており、エルエスコリアル修道院をベラスケスと見学に行っていたりするそうな。後にルーベンスは、その修道院の為にこの絵を描いたらしい。

バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『小鳥のいる聖家族』小鳥を手で掴むイエス。それを見つめる優しげなヨセフ。この絵の凄いところは、ヨセフが主役なところ。スペイン以外じゃあまり見ない構図だと思う。ヨセフが中央に描かれ、マリアは左で糸紡ぎをしている。画面の右にはヨセフの大工道具もある。しかもヨセフがかなりのイケメン(笑)。いや、普通、ヨセフってよぼよぼのおじいちゃんみたいに描かれるじゃん。この絵はムリーリョの初期作品だそうな。
この絵の横に、フランシスコ・パチェーコの『絵画芸術、その古代性と偉大』という書籍があり、この本の中で、ヨセフを老年ではなく壮年の姿で描くべき理由が説明されているそうな。ようは、イケメンヨセフを擁護したような形だね。へぇ〜。でも、そうだよな。通常の慣習をある意味破ってるんだから、「いや、こういう理由で、若く描くんですよ。」と言う必要があったのだろう。

今回、芸術理論書等、色んな本の展示もあり、それも面白かった。私が単純に本好きだからかも知れない。

お土産…。仕方ないのかもしれないが、まぁ、ベラスケス押し!ベラスケス、ベラスケス、たまにブリューゲルみたいな(^_^;)。あとは静物画とか。相変わらず私が好きな絵はグッズどころか絵葉書にすらならないのねん。なので、ミニ図録なるものが売っていたのでこれを買いました。文庫本サイズで1300円。これは買いやすくて良い!軽いし!全部の作品が載っているし。国立西洋美術館さん、グッジョブ!但し、解説はかなり省略されているので、解説をガッツリ読みたい人は、いつもの図録を買った方が良い。因みに、私、これでプラド美術館の図録3冊目である!月岡芳年と、プラド美術館と、カラヴァッジョと、ラファエル前派(ヴィクトリア絵画)と、高畠華宵の画集や図録ばかり、どんどん増えて行くような気がするのは気のせいだろうか?で、この並びで、大体私がどんな趣味か分かるって言うね…。
あとは、ポストカード3枚買い、ベラスケスピンバッチガチャガチャもやってみた。メニッポスが当たる。

5月27日までやっています。ベラスケスが好きな方、スペイン絵画が好きな方、フェリペ4世のコトが知りたい方も、行くと良いと思います。
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