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2017年12月14日00:35

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鏨の華@根津美術館

表参道の根津美術館である。
http://www.nezu-muse.or.jp/

近頃運動不足でもあるしリカンベントで行ってもよかったんだけど、寒いしなんかいまいち調子が悪いので電車で。

この展覧会は、刀の装具・拵などの金属部品の美術工芸品を主体とする。
明治時代の実業家、光村利藻(写真製版の会社を興した)のコレクションが根津美術館にあるので、これを中心にした展示となる。

刀剣博物館とかも含め、刀剣は日本の誇る技術として立派なものなのだけれど、そういう展示会に行っても閑散として一部の趣味人のみが鑑賞するような様相だったのが、ここ数年は随分人気の催しとなってる。
これまでは刀身の展示が多かったが、最近は拵(こしらえ)にも注目が集まっている。
拵は、刀身を収めるための柄や鞘を含め、それらを刀身に固定するための金具などと鍔および付属品のことでおおむね一つの刀身用にセットになってる。
無論、刀身は同じでも模様替えとして別の拵をあつらえることもある。逆は無い。
っつうのは刀のそりは狙ってつけるのだけれど、あれは焼き入れ時に勝手に反るのであってミリ単位で正確に同じものは作れない。
なので、すでにある拵に合わせて刀を打つことはできない。
無理をして似たような刀を探して入れても落ち着かないので、結局は元の拵に戻すことになり、これを元の鞘に収まるという。

そういうワケで類まれなる名刀であれば、売買含めいろいろな経緯で多くの人の手を経ているからたびたび拵を作り直している場合もある。
前の拵もそこそこ良いものではあるとは言え、他には流用できないしその刀とともに保管されたりしてると結構溜まったりするみたいだ。

鍔(つば)、小柄(こづか・小型ナイフ)、笄(こうがい・頭を掻く道具)ぐらいが、大きな付属品で、小さいものは柄頭(つかがしら・エンドキャップ)から目貫(目釘を留めるもの)、目釘(柄に刀身を留める)、鯉口(こいくち・鍔と刀身を固定)、栗型(くりがた・ランヤードリング)などがある。
全てが豪奢な工芸品である場合もあるが、工芸品は鍔のみという場合もある。

豪奢とは言え、一応は武器であるから必要な時に実用にならなかったら恥である。
故に鍔はもちろん、主なパーツは鉄製でその細工は鏨(タガネ)での加工となり、着色や装飾も限られた手法となる。金象嵌などが用いられる。熱処理や酸化被膜、漆などを用いる場合もある。
細工は元が小さいものであることもあって、ひたすら細かくその造形を鑑賞するにはモノキュラーを持ってかないとかなりきつい。美術館でも貸していたけど。
絵柄は、花鳥風月詩歌漢文仏や…不動明王とか布袋とか中国の仙人とかいろいろだ。
とは言え、庶民が根付などに用いるテーマとは微妙に違うような…

江戸後期などでは、軽くするため鞘の途中までしか刀身が入ってないような刀を差した武士がいたようだが、ここに展示されるような業物は実用的にも凄いんだと思う。
なかでも幅広の脇差二振りは長さこそ短いもののかなりな迫力を感じた。
装飾を入れるために幅広、肉厚にしたようなものとは格が違う気がする。

刀身を見るとき、刀のシルエットを見る前に前後、或は上からのぞき込んで厚みを確認しとくとデザインのバランスが分かりやすい。重さを心で想像し意匠の意味を探る。
今回、ほとんどの展示は拵と刀身がばらばらに置かれていた。できればどの刀身のために作られた拵かわかるとその意味もまた深まるのであるが…

このコレクションでは明治以降に作られた刀、拵も多く実用品というトコロを離れ工芸品すらも超えて美術品の世界に踏み込んでいる。
ならば単体で鑑賞しても何も問題ないとは言えるのかもしれないが刀は所詮、ヒト切り包丁。その本質から離れられるものでもない。

そういうワケで、そこそこ楽しめた。そう多くの出品があったわけでもないが、あれ以上あっても見るのに疲れてしまう。細かい細工が多いし。w


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