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2017年12月04日14:36

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【本】原田マハ著『リーチ先生』集英社刊

皆様、お今晩な。原田マハさまの『リーチ先生』集英社刊を読了致しました。その感想です。


1954年、イギリス人陶芸家バーナード・リーチが大分の焼き物の里・小鹿田を訪れる。その世話係を命ぜられた高市は、亡父・亀乃介がかつてリーチに師事していたことを知らされる。
時は遡り1909年。横浜の洋食屋で働きながら芸術の世界に憧れを抱いていた亀乃介は、日本の美を学び、西洋と東洋の架け橋になろうと単身渡航した青年リーチと出会う。その人柄に魅せられた亀乃介は助手となり、彼の志をひたむきに支えていく。
柳宗悦や武者小路実篤ら白樺派の面々や、のちに陶芸家として偉大な足跡を残す富本憲吉、濱田庄司、河井寛次郎らと熱い友情を交わし、陶芸の才能を開花させていく。

第36回新田次郎文学賞を受賞した本作。一読しての感想は「見るべき人はちゃんと見ている」と言う事でしてしっかりとした実に良く書けている傑作だと思いました。
1909年から1979年と言う明治、大正、昭和と言う時代を駆け抜けたバーナード・リーチと、その助手となって陰となり日向になって支えてきた沖亀乃助というまっすぐな二人のキャラクターを通して浮かび上がってくるのは「陶芸」と言うものの難しさであり、奥深さであり、これがまったく火入れをして出来上がるまで油断も隙もない大変な作業であることを改めて認識致しましたし、舞台を日本からイキリスのセント・アイヴスに移してからは土を探すこと、そして窯を作ることから始めなくてはならないと言う苦労。そして亀乃助に初めて訪れた春の気配、全てが上手く廻ろうとしていた時に別離の時がやってきて……。
この小説には実在した様々な芸術家が登場するのですが、出番は少ないものの高村光太郎、そして岸田劉生の存在は圧倒的ですし、「本当の先生はヴィクトリア&アルバート美術館だった」と語る富本憲吉の存在、またリーチや亀乃助と英国に渡る濱田庄司の理知的な立ち位置は流石と言えるでしょう。又全てを見通すばかりの鋭利な柳宗悦とすべてを温かく包み込むバナード・リーチ先生の存在。この小説の題名が「リーチ先生」となっているのも納得の出来栄えでございます。
原田マハさまの作品の中で『暗幕のゲルニカ』や『たゆたえども沈まず』は未読ですが、これは代表作の一つとして後世に残るのではないでしょうか?


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