引き続きメンデルスゾーンのピアノが加わる室内楽曲。しかもハ短調。
フェリックス・メンデルスゾーン(1809〜1847)作曲
ピアノ三重奏曲第２番 ハ短調 Op.66
Ｐｆ：エリック・ル・サージュ
Ｖｎ：ナタリア・ロメイコ
Ｖｃ：クラウディオ・ボルケス
本曲の演奏者ではピアニストのエリック・ル・サージュさんを目当てに聴きに行った。
エリックさんが楽譜を携えて入場。６年ぶりに生演奏を聴く。2011年赤穂国際音楽祭、会場は
同じく赤穂市文化会館ハーモニーホール。マーラーとシューマンのピアノ四重奏曲を聴いた。
シューマンは大変素晴らしく、先日ＣＤを買う動機ともなった。
６年ぶりにお顔を拝見するエリックさんは、その時よりもお年を召された印象であった。
無理もない53歳になっていらっしゃった。
本曲だけ予習が出来た。偶々四次元三重奏団のＣＤを持っていたからである。
1845年に書き上げられた。夭折であった為、晩年の作品である。その豆知識を持って聴くと
前曲の続きのように感じられる。同作曲家の同じ調の作品とは言え、不思議である。
手元のＣＤよりも速い演奏であった。勢いや若々しさを感じてしまう。しかしながらエリックさんは
淡々と譜面に向かい弾き続けていた。こちらへ聞こえてくる音色は、とても情熱的なのに。
四次元三重奏団のＣＤジャケットに依るとメンデルスゾーンは名ピアニストであったらしく、
ピアノの活躍は本曲では不可欠である。第２楽章はピアノ独奏で始まる。
これは全くベートーヴェン的な音楽である。交響曲５番と同じ調であるのみならず第３楽章
スケルツォに至っては「運命の動機」擬きが現れる。とどのつまりは終楽章。ヤキモキするように
ハ短調と変ホ長調が往来して最後の最後にエリックさんのピアノから「ミ」が会場一杯に広がり
呼応するようにヴァイオリニストのナタリアさんがＥ線を思いっ切り弾く。まるで苦悩を経て歓喜
に至るような構成である。
メンデルスゾーンは早熟な才能を持った作曲家で夭折してしまった為、モーツァルト的な
作曲家である、と言われ、この様な評論をするとベートーヴェンの影響を大きく評価し過ぎて
いるのではないか、と批判する方もいらっしゃるかと思う。しかしメンデルスゾーンがゲヴァント
ハウス管弦楽団を率いていた指揮者であった事に着目すると私は、そうとは言えないと考える。
ゲヴァントハウス管弦楽団は生前にベートーヴェンの交響曲全曲演奏を行い、1835年から
同楽団を率いたメンデルスゾーンも在任中92回も演奏している。これを鑑みると本曲が
ベートーヴェンの強い影響を受けていたと考えても差し支えないと思われる。
本公演は素晴らしい演奏で終楽章、気持ちが高ぶるのを抑えられなかった。
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