朝9時30分、登山ツアー集合場所である富士宮口5合目山小屋。
前日の深夜に兵庫、大阪、京都方面からの参加者を乗せた夜行バスが到着した。
今回のツアーチームは24名で、多くも少なくもない人数なのだが、バスの席にゆとりが生じるほどではなかった。
せっまい2×2の4列シートがほぼ埋まり、しかも私は単独参加なので隣の席は赤の他人。とても気を遣う。
本来ならば夜中の移動中に寝ておくべきなのだが、皆、緊張と寝苦しさでほとんど睡眠もとれないままのようだった。
ああ、去年も見たこの景色、あの時の失敗がよみがえる。
今度の挑戦は必ず成功して、このトラウマを払しょくしたい。
独り静かに闘志を燃やしていると、ガイドさんの注意事項の説明が始まった。
高山病対策として深い呼吸を続けること、必ず上下セパレートタイプのカッパを用意すること、段差を登るときの足の運び方、ステッキの長さ調節の仕方うんぬん。
去年一度聞いてる話だが、真剣に聞き入る。A型だから。
「ちょっと恥ずかしいかもしれないですけれど、思いっきり掛け声かけてから登りましょう。
頂上まで絶対登るぞ エイ エイ オー」
私は当然真面目に大声を出す。A型だから。
5合目を出発してからほどなくして6合目の山小屋に到着する。
ここまでは登山ではない。単なる散歩道だ。
カジュアルにここまで登って、富士山の空気や景色を満喫して帰っていくのもアリだと思う。
登山のツラさを敬遠するのもよく分かるし、逆にそういうヌルイ楽しみ方も是非お勧めしたい。
でもまあ、せっかく来たんだから頂上まで行ってみたくなるよね。
でも装備とか体力とか諸々・・・ねぇ、なんて人もいるだろう。
そういう問題をお金で解決する方法もある。
「チャララ ラッチャラー ブルドーザー」
この魔法の乗り物に乗ると、6合目から9.5合目まで体力を使うことなく運んでくれる。
主に病人やけが人などの搬送が目的らしいが、TVの出演者やスタッフを頂上近くまで移動させるために使うこともあるらしい。
TVの富士山頂のロケで、キレイな身なりをしたタレントが映っていたら疑ってみたほうがいいかも。
きっとこの裏技を使っているような気がする。
標高3000メートル付近に新7合目という山小屋がある。
去年のアタックで脱落した場所だ。
去年の行程は、夕方に5合目を出発して、夜、新7合目の山小屋に到着し4〜5時間の休憩後、夜中の0時過ぎに再度頂上へ向けて出発するというものだった。
体力的にはまだまだ余裕があったのだが、せっまい布団で休憩しているときに、例の高山病に見舞われた。
今回の宿泊する山小屋はもっと上のほうにあるので、昼間のうちに前回お世話になった山小屋はパスしていく。
高山病にかからないように深呼吸を必要以上にしつこく続けながら登っているので、今回はこの時点でまだまだ調子が良い。
登頂成功に期待がかかる。
8合目に到着する頃に、新たな教訓を得た。
富士登山をする時に絶対必要な装備品として、雨合羽の他に、肌着類の着替えが非常に重要となる。
登山の途中で雨に降られたり、結構ハードな運動をしているので大量の汗をかいたりするので、Tシャツや長袖などの肌着は必ずビショビショになる。
ご来光を見るためには、標高3000メートル以上の山中で深夜の寒さをやり過ごさなければならない。
やり過ごし方として、山小屋で休憩するでも、山頂付近で我慢するにしても、肌着類がぐっしょり濡れたままでは、身体じゅうの体温が容赦なく奪われていくので、低体温症まっしぐらとなる。
この、寒さ対策として着替えがとっても重要だと強く認識した。
私はたまたま、念のために予備のインナーを1セット持っていたので、このあと到着する山小屋で着替えることができ、寒さに凍えることなく仮眠をとることができた。
もしもあのまま濡れたTシャツを着ていたらと思うと、心底ゾッとする。
そんなことを実感する別世界の光景が、この辺の高度から目の前に広がりだす。
そんなこんなで、9合目の山小屋までやってきた。
気合いが入っているので、疲れとか高山病の頭痛とかあまり感じていないけれど、なんとなーく体調が平時よりもよろしくない。
全力疾走できる体力はあるのに、実際に走ったら倒れてしまいそうな予感がする、上手く表現できないがそんな状況だ。
万年雪を見ると一瞬感動するが、同時に生命維持を最優先しなければという警戒感が増す。
登り始めてから8時間後、本日の宿となる9.5合目の山小屋に到着。
登ってくる途中は、雨が降ったり、風が吹いたり、霧が掛かったり、晴れ間から直射日光が当たって暑かったり、目まぐるしく気象状況が変化したが、雲の上に出るとスッキリとした青空が広がっていた。
富士山は古くから霊峰と呼ばれ、富士登山は一種の修業として考えれれていたらしい。
パワースポットとかレイラインとか、そういうオカルティックな話が原因かと思っていたが、実際に登ってみると、なぜそんな言われ方をしているのかよく分かった。
作法を守って真摯に向き合えばさほど危険は無いが、なめてかかると一瞬で命を落とす。
魂をそんな無防備な状態にさせられるのが、この富士登山なのだ。
昔は今ほど装備や施設が充実していなかったから、余計に富士の自然に畏怖と敬意を感じられただろう。
夕方16時に到着したので、軽く夕飯をいただいて、そのあと泥のように眠ろう。
明日は午前3時に出発だ。
〜ルシファーちいといつのトドロキカード占い〜
カードへの問い:初めての富士登山で装備はバッチリ決めるべきか
山登り用のグッズやウェアを一通り買いそろえるくらい準備すべき:ペンタクルのクイーン
とりあえず身の回りで揃えられるものは揃えて足りないものがあったら買い足すぐらいで良い:ワンドのクイーン
全部揃えてかつ山登りを趣味にしろ:カップの10(リバース)
結果:お金をどれくらいかけたかは問題ではなくてちゃんと事前の準備を考えて実施するかどうかが重要、さらにその元を取ろうと思って深追いするのは禁物
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