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2017年08月20日16:17

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[趣味]雲の涯 中学生の太平洋戦争

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勝手に週刊連載TL「俺の本棚」第87回。
今回はこれ。
宗田理さんの『雲の涯 中学生の太平洋戦争』。

裏書きはこんな感じ。


昭和20年8月7日、豊川海軍工廠はわずか26分間の爆撃によって壊滅、2500名を超える爆死者が出たが、その中に、450名以上もの若い学徒が含まれていた。彼らはどう生き、どう死んだのかーー。
当時、地元の中学生であった著者が、様々な貴重な証言、資料を集めて、必死に生きようとしていた彼らの青春の日々をたどった、感動的ノンフィクション・ノベル。
広島、長崎の原爆投下日にはさまれ、世に知られなかった大惨事を初めて明るみに出した重要な戦争記録でもある。



単行本としての初版は平成3年8月。
それに加筆して文庫化したのが、戦後50年の節目に当たる平成7年5月。
俺が初めて読んだのはこれだった。
当時は高校生で、まさか自分が数年後にこの作品の舞台である愛知県に住むことになるとは露ほども思ってなかったけど。
で、名古屋に来てからお世話になった戦争経験者にこの作品をお貸しして、大層気に入られるとは全く思ってなかったけど。
いつの間にか行方不明になってしまって、絶版本だから半ば諦めていたんだけど、ふと思いついてアマゾンで取り寄せして貰ったらあっさり安価で手に入るっていうね。
こんなことならもっと早く思い付くんだった。


本の内容としては、裏書きにある通り青春(と呼んで良いとは思わないけど)小説である以上に、無機質な数字や記述になった「惨劇の記録」という性格が強いと思う。
否、その内容に血肉を感じるのは耐え難い故に、敢えて淡々と記述しているというべきだろう。

著者の宗田理氏と言えば、ある世代以上ならピンと来る方も多い作家さん。
氏はこの作品のあとがきに於いて、こう述懐している。


昭和二十年八月七日、豊川海軍工廠はわずか二十六分間の爆撃により壊滅し、二千五百名以上(正確な人数は不明)の爆死者を出した。その中には四百五十名以上の学徒も含まれていた。
この事実は、前日の八月六日広島、八月九日長崎に原爆投下という大事件の陰に隠れて、これまで地元以外知る人は少なかった。
この事実をなんとか多くの人たちに伝えたいと思いながら、どう取り組んでいいかわからず、そのまま時間ばかりが経過していった。
昭和六十年、「ぼくらの七日間戦争」という小説を書いた。
これは、子供たちが廃工場に立てこもって大人たちと戦う夏休みの一週間の話だが、これを書いてしばらくしてから、そういえば私自身も中学生のときに工場に立てこもったことを思い出した。
ただし、それは自分の意思ではなく、国の命令により、勤労動員という名のもとに、学校を捨て、工場で兵器の生産に従事させられたのである。
自分では意識しなかったが、あのときの原体験が、「ぼくらの七日間戦争」を書かせたのだと思った瞬間、豊川工廠をどう書けばいいか思い当たった。



前回の『八月十五日に吹く風』同様、もっと大勢に読まれ、知られるべき歴史の1ページが、間違いなく描かれている。
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